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秋田家庭裁判所大館支部 昭和40年(少)246号 決定 1965年10月15日

〔解説〕本件は、児童相談所に一時保護中の少年が赤痢保菌者であることが判明したため、児童相談所長が少年について公立病院に入院措置をとつたが、これまでの経緯から逃走の虞れがあるので、同所長は、児童福祉法二七条の二、少年法六条三項によつて「児童相談所長は、公立○○病院隔離病棟に入院中の少年の居室において(中略)少年の行動の自由を奪い、またはこれを制限するような強制的措置をとることができる。」旨の強制措置を求めて家庭裁判所に事件を送致してきたのに対し、少年法一八条二項によつてこれを許容し、事件を児童相談所長に送致した事例である。

家庭裁判所が強制的措置を許容する場合には、事件を児童相談所長に送致しなければならない(同法一八条二項)。児童相談所長は、右の送致を受けた事件について児童福祉法二七条一項一号ないし四号の措置をとり、その措置をとるにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならないこととされている(児童福祉法二七条二項三二条一項)。このような一連の規定からみると、強制的措置は、児童福祉法上の措置を前提としているようである。とすると、本件において、少年は法定伝染病患者とみなされる(伝染病予防法一条、二条の二第一項)のであるが、児童相談所長が少年を公立病院に入院させた措置は、児童福祉法上の措置かどうか、この点については異論のむきもあると思われる。

少年 M・S(昭二八・六・二五生

主文

本件を秋田県中央児童相談所長に送致する。

同児童相談所長は、大館市字○○×××番地外、公立○○病院隔離病棟に入院中の少年の居室において昭和四〇年一一月六日までの間、居室のドアに施錠し、窓に樽木を釘付けして、少年の行動の自由を奪い又はこれを制限するような強制的措置をとることができる。

理由

少年は、昭和三七年六月九日窃盗、失火、放浪等の不良行動があつたので、秋田県中央児童相談所長は少年を同相談所に一時保護し、少年の性格及び家庭環境を検討したうえ、同月二一日教護院「千秋学園」に入院させる措置をとつたが、昭和四〇年六月一五日、保護者が東京都江東区○○○○×丁目○に転居、向後少年の監護に当る旨申出があつたので、措置解除し、少年は父母の許に帰つている。しかし、同年九月下旬少年は家出して大館市に来り、大館警察署に保護された上、再び秋田県中央児童相談所に一時保護されるに至つた。

九月二六日少年が赤痢保菌者であることが判明したので、同相談所長は、秋田市立○○病院に入院させたが、一〇月一二日逃走、同日発見の上病院に連れ戻したところ翌一三日更に逃走して大館市に来り、一〇月一四日大館警察署員に発見され、その通報により同相談所長は大館市公立○○病院に入院措置をとつたものである。ところで本日本少年について秋田中央児童相談所長から主文第二項同旨の申請があつたが、少年に依然赤痢保菌の疑いがあること及び逃走の虞れがあることを勘案する時、そのような強制措置をとることも止むを得ないものと認められるので、少年法第一八条第二項を適用し主文のとおり決定する。

(裁判官 谷口茂昭)

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