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紋別簡易裁判所 平成17年(ハ)86号 判決 2006年3月10日

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原告

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同訴訟代理人弁護士

大窪和久

同訴訟復代理人司法書士

矢箆原浩介

玉ノ井雄一

静岡市駿河区南町10番5号

被告

株式会社クレディア

同代表者代表取締役

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主文

1  被告は,原告に対し,40万5711円及び内金36万4370円に対する平成16年12月23日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

主文1項と同旨

第2事案の概要

1  請求原因の要旨

(1)  被告は,貸金業等を目的とする株式会社である。

(2)  原告は,別紙計算書「借入金額」及び「弁済額」各欄記載のとおり,被告との間で借入及び返済を繰り返した。

(3)  (2)の借入及び返済を利息制限法により計算し直すと過払金が発生し,被告は同金員の受領につき悪意の受益者であるから,別紙計算書記載のとおり,平成16年12月22日において過払金36万4370円及び過払利息4万1341円が生じている。

(4)  よって,原告は,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金36万4370円及び最終取引日までの商事法定利率年6分の割合による過払利息4万1341円並びに上記過払金に対する最終取引日の翌日である平成16年12月23日から支払済みまで同利率年6分の割合による利息金の支払を求める。

2  争点

(1)  引き直し計算の方法について

(2)  被告は悪意の受益者か

(3)  悪意の受益者であった場合の利息の利率は年5分か,年6分か

第3争点に対する判断

1  争点(1)について

被告は,貸付金に係る利息計算につき年365日の日割特約がある旨主張するが,同特約は閏年に係る部分については利息制限法に抵触するおそれもある上,同特約を認めるに足りる証拠はない。また,被告は,取引継続中において,遅延損害金が発生する期間があるとの主張をしているものと解されるが,これを認めるに足りる証拠はない。

2  争点(2)について

被告は,返済金の受領時において利息制限法による引き直し計算は行っていないから過払金が発生しているとの認識がなかった上,貸金業法43条のみなし弁済が成立するとの認識であったから悪意の受益者ではないと主張する。しかし,被告は貸金業者であるから当然に利息制限法を超過した利率であることの認識があり,みなし弁済について何ら具体的な主張立証をしないのであるから過払が生じた時点で当然に悪意の受益者であると認めるのが相当である。

3  争点(3)について

被告は,不当利得返還請求権は法律の規定によって発生する債権であり,商行為によって生じた債権又はこれに準じた債権でないこと,また,不当利得金によって受益者に運用利益が生じていたとしても受益者が返還すべき範囲は損失者(原告は非商人である。)の損失の限度にとどまるべきであることから,同請求権に係る利息の利率は民事法定利率年5分の割合によるべきであると主張する。しかし,被告は貸金業を営む商人であり,不当利得金は営業に運用され,その際,利息制限法による制限利率を超える利率で貸付を行っていることは争いがないから,被告には少なくとも商事法定利率年6分の割合を下回らない運用利益が生じていたものと推認される。そうすると,不当利得返還請求権は民法の規定によって発生する債権ではあるけれども,当事者間の実質的な公平を図ることを目的とする不当利得制度の趣旨から,損失者の損失の有無にかかわらず,不当利得金により得た収益を悪意の受益者に確保させることは相当でないから,不当利得返還請求に係る利息は商事法定利率と同率の年6分の割合によるのが相当であると解する。

なお,被告は,融資を繰り返し受けて利便を享受していた原告が不当利得金に係る利息を請求する行為は権利濫用であり,現在の貸し手と借り手の社会的力関係に鑑みれば同利息を認めることは公平の見地から許されないと主張するが,独自の見解であり採用できない。

4  以上によれば,原告の請求は理由がある。

(裁判官 池田英彰)

<以下省略>

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