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紋別簡易裁判所 平成19年(ハ)238号 判決 2008年3月18日

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原告

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訴訟代理人弁護士

大窪和久

訴訟復代理人弁護士

大島未緒

東京都中央区日本橋3丁目8番14号

被告

新洋信販株式会社

代表者代表取締役

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主文

1  被告は,原告に対し,金26万1084円及び内金23万9194円に対する平成18年10月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  この判決は,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

主文と同旨

第2事案の概要

1  事案の概要

本件は,原告が,貸金業等を目的とする株式会社である訴外株式会社センチュリー(以下,「センチュリー」という。)との間で,平成11年10月4日から継続的に金員の借入と弁済を繰り返し,その後,平成17年10月24日に同貸付債権がセンチュリーから被告に譲渡され,さらにその後も被告との間で取引が継続された結果,過払金23万9194円があるとして,原告が被告に対して,不当利得返還請求権に基づき同金員及びその過払利息金2万1890円,ならびに過払金23万9194円に対する最終取引日の翌日である平成18年10月17日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求めた事案である。

2  前提事実

当事者間に争いのない事実,証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実は次のとおりである。

(1)  被告は,無担保・小口の貸付等を主要な業務内容とする貸金業者である。

(2)  原告は,センチュリーとの間で,平成11年10月4日から平成17年10月17日まで,別紙計算書の番号1ないし79各記載の「年月日」,「借入金額」及び「弁済額」のとおり(以下,「譲受前取引」という。),リボルビング方式による継続的金銭消費貸借契約(以下,「基本契約」という。)に基づいて取引した。

(3)  被告は,平成17年10月24日,センチュリーから,センチュリーが原告に対して有する上記基本契約に基づく債権を譲り受け,その後,原告との間で,別紙計算書の番号80ないし84各記載のとおり(以下,「譲受後取引」という。),取引を継続した。

第3争点及び争点に対する当事者の主張

1  争点

被告は,原告に対し,譲受前取引で発生した過払金の返還義務があるか。

2  争点に対する当事者の主張

(1)  原告の主張

次の理由により,被告は,原告に対し,譲受前取引で発生した過払金の返還義務を負う。

ア 被告は,平成17年10月24日にセンチュリーから,センチュリーが原告に対して有する基本契約に基づく債権を譲渡した後も,引き続きセンチュリーと同様の取立を継続してきたので,契約上の地位の移転を受けていたと考えるのが合理的である。

イ 貸付債権と過払金返還債務は表裏一体の関係にあるといえるから,契約上の地位の移転に伴って貸付債権が移転すれば過払金返還債務も当然移転する。

(2)  被告の主張

被告がセンチュリーから本件債権譲渡により譲受けたのは,あくまでも債権であり,原告に対する不当利得返還債務までも引き受けたものではない。よって,被告がセンチュリーから債権譲渡を受けた時点ではすでに過払金が発生しており,貸付金は0となるから,被告が原告に対して負う過払金は,譲受後取引の分の合計3万2500円である。

第3争点に対する判断

本件のような基本契約に基づく取引では,貸金業法43条1項のいわゆるみなし弁済の適否によっては,過払金返還債務を負うことになるから,貸付債権と過払金返還債務はいわば表裏一体の関係にあり,貸付債権の譲渡人と譲受人との間で過払金返還債務については承継しない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り,貸付債権の譲渡に伴い,譲受前取引で発生した過払金返還債務は譲受人に承継されると解するのが相当である。

これを本件についてみると,証拠及び弁論の全趣旨からすれば,被告とセンチュリーとの間で上記のような過払金返還債務については承継しない旨の合意がされた事実を認めることはできないので,被告は譲受前取引で発生した過払金返還債務を承継すると解するのが相当である。

第4結論

以上によれば,原告の請求は理由があるので,主文のとおり判決する。

(裁判官 小瀬垣正一)

<以下省略>

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