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豊島簡易裁判所 昭和58年(ろ)29号 判決 1983年6月03日

主文

被告人を罰金九、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間(端数は一日に換算する)被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和五七年一一月二〇日午前九時二五分ころ、山梨県公安委員会が道路標識によつて追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所と指定した山梨県北巨摩郡白州町鳥原二九一三―二八付近道路において、普通乗用自動車(練馬五八つ八〇六)を運転して前車を追い越すにあたり、約一〇〇メートルの間道路右側部分にはみ出して通行したものである。

(証拠の標目)(省略)

(被告人の主張に対する判断)

被告人ははみ出し禁止の規制区域で右側通行追越した事実は認めるが、該区域は現在はみ出し禁止区域に指定する必要が全くない区域で、行政当局も目下その解除を検討中の処であり、従つて可罰的違法性がないから本件は無罪である旨主張する。

しかしながら前掲証拠によれば、該区域は当時も現在も山梨県公安委員会が道路標識によつて追越しのための右側部分はみ出し通行禁止の場所として指定している区域であることが明らかであり、たとえその必要性の有無が検討されたことがあつたにせよ現実にはなお必要としてはみ出し禁止区域と指定されている以上、被告人の判示所為が可罰的違法性を欠くに至るものとは判断しえない。

(執行猶予の情状)

被告人は当時農家の草屋根をトタン瓦等に改修する屋根改修工事の会社に勤務し、その営業として本件自動車を運転して甲府方面から長野方面に向け、本件違反のはみ出し禁止区域に差かかつたものであるが、右区域に差かかる前、先行車の大型ダンプカーが積荷を満載して、平地では四〇キロメートル、坂道では三〇キロメートル、時には二〇キロメートル毎時でいわばのろのろ運転をし、それが一五分位もつづき、しかもダンプカーの出す黒煙がひどく、被告人は以前結核を患つて二〇年許り療養をしていたことがあるため、その黒煙が非常に体にこたえ、しかも多数の農家を訪れる予定であり急いでいたこともあつて、止むを得ず右ダンプカーを追いぬくため見通しのよい本件違反場所において、本件違反行為に出たことが、被告人の当公判廷における供述、被告人撮影の写真等によつてこれを認めることができるが、右諸般の事情を考慮して執行猶予を付することとした。

(法令の適用)

判示所為につき

道路交通法第一七条第四項、第一一九条第一項第二号の二(罰金刑選択)、同法施行令第一条の二第一項

労役場留置   刑法第一八条

執行猶予    同法第二五条一項

訴訟費用    刑訴法第一八一条一項本文

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