近江八幡簡易裁判所 事件番号不詳 判決
主文
被告人を罰金四千円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五百円を一日の割合に換算した期間、労役場に留置する。
訴訟費用は被告人に負担させない。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は自動車運転の業務に従事するものであるが、昭和四六年二月二一日午前一一時五分頃、普通乗用自動車を運転し近江八幡市多賀町地先道路上を時速約六〇粁で南進中、前方を同方向に進行していた幼児を含めた通行人等の右側を追越していこうとしたが、此の様な場合、右通行人等特に幼児は何時車両進路前方に出て来るか判らないため事故発生を未然に防止するにつき警音機を吹鳴し速度を調節すると共に通行人の動静を充分注視し安全を確認した上、追越をすべき業務上の注意義務あるに拘らず、これを怠り、僅か四〇粁に減速したにすぎず動静確認をしない儘追越をした過失により通行人杉浦寿広(当三年)が道路の右側より出て来たのを其の後方約一〇米に接近した後、之を認め、慌て急ブレーキをかけたが及ばず、自車前部を同人に衝突させ同人に対し加療約一週間を要する顔面擦過創等の傷害を負わせたものである。(証拠の標目)省略
(法令の適用)
前示認定の事実は刑法第二一一条前段に該当するので同条所定刑中罰金刑を選択し罰金等臨時措置法第二条第三条を適用し、その金額の範囲内で被告人を罰金四千円に処することにし、刑法第一八条を適用し右罰金を完納することができないときは金五百円を一日の割合に換算した期間労役場に留置することにした。
訴訟費用の負担については刑事訴訟法第一八一条第一項本文及び但書により処理すべきところ、本件被告人は貧困とは認められないけれども本件の起訴から判決に至るまでの経過即ち当初略式命令発付を求める起訴であつたが、略式命令と雖も被告人の自白のみにて有罪の命令は発し難く補強証拠を必要とするものと解せられ、起訴当初補強証拠を欠き有罪の略式命令は発することが出来なかつた、無罪の宣告をする裁判は公判手続により審理した結果でなければならないと思料し、略式不相当として公判手続に付したところ、公判手続に於て新しく補強証拠の提出が為された結果、有罪の宣告を為すに至つたもので起訴当時、補強証拠を提出してあつたならば略式命令が発せられたものであり、訴訟費用は正式裁判手続に付された結果発生したもので、結局のところ検察側の過失不注意により生じたものと認められるので同条第二項第三項の趣旨を類推し、被告人には負担させない。
仍て主文の通り判決する。
(辻野利一郎)