那覇地方裁判所 平成10年(行ウ)2号 判決 2000年9月20日
原告
A株式会社
代表者代表取締役
甲
訴訟代理人弁護士
宮良長辰
同
宮良晧
被告
北那覇税務署長 山城文雄
指定代理人
西郷雅彦
同
和多範明
同
世嘉良清
同
小岩井利恵
同
鍋内幸一
同
富村久志
同
古謝泰宏
同
外間克己
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告が、原告の平成四年八月一二日から同年一〇月三一日までの事業年度(以下「平成四年一〇月期」という。)及び同年一一月一日から平成五年一〇月三一日までの事業年度(以下「平成五年一〇月期」という。)の法人税についてした、平成七年一二月二二日付け更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分並びに平成五年一一月一日から平成六年一〇月三一日までの事業年度(以下「平成六年一〇月期」という。)の法人税についてした、平成七年一二月二二日付け更正処分のうち、確定申告による所得金額五一〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
二 被告が、原告の平成四年一〇月期及び平成五年一〇月期の法人税特別税についてした、平成七年一二月二二日付け法人特別税更正処分をいずれも取り消す。
第二事案の概要
一 争いのない事実
(1) 原告は、平成四年八月一二日に設立登記された会社であり、設立当初から甲が代表取締役を務めている。
原告は、法人設立中である同年七月二五日、別紙物件目録一及び二記載の土地並びに同目録三記載建物(以下「本件土地」及び「本件建物」といい、両者を併せて「本件土地建物」という。)について、有限会社Bと代金合計一億三六〇〇万円として甲名義で売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結してこれらを取得し、同年八月二四日付けでいずれも同年五月二〇日売買を原因として原告名義に所有権移転登記手続をした。原告は、同年九月、本件土地を有限会社Cに対し、駐車場として月額一〇〇万円(平成六年一月から五〇万円)で賃貸することとし、平成四年一〇月ころ、本件建物を取り壊した。
(2) 原告は、本件土地建物の取得に要した費用について、取壊し時における本件建物の帳簿価額七〇〇〇万円、斡旋手数料一三〇万円、不動産登記費用六一万〇四五〇円、交際費一二五万円の合計七三一六万〇四五〇円が開業費に当たるとして、平成四年一〇月期において繰延資産に計上し、平成五年一〇月期に一九七七万九一八六円、平成六年一〇月期に一五七九万〇一七二円を開業費に係る繰延資産の償却費として、それぞれ損金に算入して、法人税について、法定申告期限までに別表(一)のとおり、確定申告をした。
これに対し、被告は、原告が開業費に当たるとして繰延資産に計上した額のうち、交際費を除く七一九一万〇四五〇円は法人の所得金額の計算上損金に算入することはできず、本件土地の取得価額に算入すべきであるとして、平成七年一二月二二日付けで、別表(一)及び(二)のとおり、前記各事業年度の法人税更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分及び法人特別税更正処分(以下「本件更正処分等」という。)を行った。
(3) 原告は、本件更正処分等を不服として、平成八年一月三〇日、審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成九年一二月二五日付けで審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をし、平成一〇年一月一九日、裁決書謄本が原告に送達された。
二 原告の主張
原告は、本件建物を貸店舗とする目的で取得し、改修工事のため、見積りを進めていたところ、本件建物が相当老朽化し、人命に関わる危険性があることが判明したことから取壊しのやむなきに至ったもので、当初から本件土地だけを利用する目的で本件土地建物を取得したものではない。
したがって、原告の本件土地建物の取得目的及びその経過等に関する被告の誤った事実認定に基づいた本件更正処分等は違法である。よって、原告は被告に対し、本件更正処分等の取消しを求める。
三 被告の主張
原告は、もっぱら本件土地の利用を目的として、本件建物の取壊しを前提に本件土地を取得したものであり、原告が開業費に当たるとした本件建物の帳簿価額等は、本件土地の取得のために要した費用であり、損金に計上すべきものではない。したがって、本件更正処分等は適法である。
四 争点
本件の争点は、原告が本件土地建物購入時に本件建物を利用する目的があったと認められるか否かである。
第三当裁判所の判断
一 取得時における本件建物の状況
本件建物は、昭和四一年に新築され、昭和四七年に増築された鉄筋コンクリートブロック造陸屋根3階建の建物であり、原告が取得したころは築後二六年を経過していた(甲五)。同建物は、塩害等の腐食により一階二階の天井の鉄筋がさびて膨張しており、コンクリートの劣化が進行し、手で触ってぼろぼろに落ちる状態で、新しい天井も吊るすことができず、壁もブロックも崩れて、階段の鉄筋も落ちており、道路側のひさしは下の鉄筋が見えて上に乗っているだけの状態で、二階と三階のひさしは、平成四年八月ころ落下しており、建物を改修して利用することは不可能であった(甲一〇、一四、乙証人、原告代表者)。
本件建物への電気配給は、平成三年七月二五日から既に停止され、電気メーターも撤去された状態にあって、その後本件建物が取り壊されるまで電気の供給が行われることはなかった(甲三三、原告代表者)。そして、同建物は、平成四年一〇月ころ、有限会社Cが費用を負担して、取り壊された。
本件建物の取壊し工事を担当していた有限会社Dの代表取締役丙は、国税不服審判所に対し、本件売買契約締結前である平成四年五月ころ、有限会社Bの代表取締役丁から、本件建物の取壊し工事の見積書を提出するように依頼されており、その見分の際、外見上本件建物の随所にはコンクリートの腐食による剥落がみられ、鉄筋が剥き出しになっていて一見して古いと分かる建物であったと申述している(甲三三)。
原告は、取得後に本件建物が相当老朽化している事実が判明したと主張している。そして、甲も有限会社Cの専属の大工である乙も、前記のとおり、本件建物が改修不能なほど老朽化していた事実は認めるものの、外見上はそれほど老朽化していたとは分からなかったと供述し、平成元年当時の本件建物の写真を提出している(甲三九)。丙も、外見上古いことは分かったが、貸店舗とできないほどひどいとは思わなかったとの申述書を本件訴訟になってから提出している(甲一八)。
しかし、丙自身、同申述書において、平成四年の四月か五月ころの時点で、本件建物が外見上、コンクリートの剥落が見られ、鉄筋が剥き出しになっている場所があったことを自認しており、しかも、本件建物は、同年八月に外のひさしが突然落下するほど老朽化していた建物である以上、原告が取得した時点においても、外見だけからでも、その老朽化した状況は相当程度把握できたものと考えられ、甲、乙らの前記供述は信用できない。
二 契約締結における原告の姿勢
そもそも、原告あるいはその代表者である甲が真に本件建物を貸店舗として利用する目的を有していたとすれば、本件建物を購入する際に、築後二六年を経過した本件建物の客観的状態を調査し、その老朽化の程度を把握した上で改修工事の費用等を考慮して売買代金等を決定し、本件売買契約を行うことが経営上当然の行為であると考えられるにもかかわらず、原告は、本件建物の取得前に本件建物の内部についての調査を一切行わず、その修繕費用の見積り等の算出の依頼もしていない。本件建物の内部の状態は、前示のとおりであり、天井のみならず、壁も手で触れれば崩れるほどであった以上、事前に内部に立ち入れば老朽化の程度は容易に把握できたことが明らかといえる。
しかし、甲は、本件建物の状況をほとんど調査しないまま、売買代金を定め、購入を決めたというのであって、建物だけでも七〇〇〇万円、総額一億三六〇〇万円の取引をするには、あまりにも合理性を欠く対応であり、また、結果として、七〇〇〇万円で購入した本件建物が全く無価値であったにもかかわらず、甲は売主である有限会社Bに対して、瑕疵担保責任の追求や損害賠償請求等の法的手段を講じていないことはもとより、何らのクレームもつけておらず、このことからしても、貸店舗とする目的で本件建物を購入したとすることは極めて不自然であるといわざるを得ない。
三 有限会社Cにおける駐車場の必要性
(1) 原告代表者である甲は、昭和五一年の法人設立当初から、有限会社Cの取締役を務め、昭和五三年にいったん解任されたものの、昭和五六年に再び取締役に就任し、平成四年二月一九日から、戊に替わって有限会社Cの代表取締役に就任している(乙一八)。有限会社Cは、平成四年六月一五日現在、出資金総額一〇〇〇万円のうち、甲の出資金額が七〇〇万円で全体の七〇パーセントを占め、これに甲の妻の出資金二〇〇万円及び同人の母の出資金一〇〇万円を加えると一〇〇パーセントの同族会社となっている。原告においては、出資金総額八〇〇〇万円のうち、甲が二〇〇〇万円、甲の妻が二〇〇〇万円、有限会社Cが三〇〇〇万円を出資している(甲三三、争いのない事実)。
(2) 有限会社Cは、もともと駐車場として玄関前に車両を一〇台程度駐車することが可能な土地を有していたところ、甲が、平成三年三月九日付けで、本件土地に隣接する那覇市辻所在、一三六・四二平方メートルの土地(以下「隣接土地」という。)を七〇〇〇万円で取得した。同土地の売買契約締結に当たっては、同土地上の建物の撤去は売主の負担で行う旨の特約が付されており、遅くとも同月末には隣接土地上にあった建物は取り壊され(乙一六の一・二、一九、原告代表者)、有限会社Cは、同土地を駐車場用地として甲から月額二五万円で賃借し利用していた(原告代表者)。
さらに、有限会社Cは、原告が本件土地を取得すると、本件建物の取壊し費用三五二万円を全額負担した上、本件建物が取り壊される以前の平成四年九月から月額一〇〇万円(平成六年一月分から月額五〇万円)を支払って賃借を開始し、隣接土地と一体となった駐車場として利用している(甲一七、一九、二〇、原告代表者)。
(3) 原告は、有限会社Cが駐車場を確保する必要性はなかったと主張し、甲はその旨供述する。
しかし、有限会社Cが、従前から甲個人より駐車場を賃借していた上、本件建物の取壊し費用を負担してまで本件土地を賃借し、隣接土地と併せて毎月一二五万円もの賃料を支払って駐車場を確保していたのは前示のとおりであり、その必要性がなかったとは到底認められない。
しかも、有限会社Cは、収容人員が一五〇〇名で、大宴会場は四五〇名まで収容でき、個室が四〇室もある大規模な宴会場であって、大宴会場だけではなく家族単位での食事会の客なども対象としており(乙六)、また、調理場以外にも踊り子等も含め約一五〇名もの従業員を雇用し、これらの従業員が、本件土地を駐車場にするまでは隣近所に駐車していたこと、一〇年ぐらい前から車通勤する従業員が増加しており、駐車場についての要望が出ていたこと、実際、隣接土地と本件土地を一体として利用した駐車場には、押し込み押し込みして大体三〇台近くが駐車され、通常、顧客が宴会などで来る時間帯までには従業員の車で既に満車状態になっているのが日常となっていること(甲二四、乙証人、原告代表者)が認められ、従前の原告代表者である戊自身も、国税不服審判所に対し、「有限会社Cは、規模が大きい割に駐車場が狭く、利用者から駐車場の苦情が多く困っていたことから駐車場用地が必要であった。)と申述している(甲三三)。
以上の事実を総合すると、有限会社Cにおいて、駐車場を確保する必要性が高いことは明らかといわなければならない。そして、前記のとおり、原告と有限会社Cとが人的構成及び資金面において密接な関連性を有していたこと、特に甲が有限会社Cの経営に長く参画していたことを考慮すれば、原告及び甲も、その必要性を十分認識していたものと認められ、前記の主張を採用する余地はない。
四 本件土地建物の価額
本件売買契約書には、土地売買価額が六六〇〇万円、建物売買価額が七〇〇〇万円と記載されており(甲三)、本件土地(計二六二・四七平方メートル)の一平方メートル当たりの単価は二五万一四五七円となる。他方、平成三年に甲が取得した隣接土地一三六・四二平方メートルの売買契約金額は七〇〇〇万円であり(乙一九)、一平方メートル当たりの単価は五一万三一二一円となる。ところが、現況によると本件土地は、二方が道路に面した角地であるのに対し、隣接土地は、甲の取得時には三方を建物に囲われ、間口・面積ともに本件土地より小さく駐車場としては不便であると認められ(甲三三)、現に、有限会社Cは、隣接土地について月額二五万円の賃料を支払っていたのに対し、約二倍の面積を有する本件土地について、当初月額一〇〇万円の賃料を支払っていた。これらの事情は、本件土地と隣接土地の前記売買単価の相違とは矛盾するものといわなければならない。
また、那覇市役所の土地・家屋・償却資産名寄帳(兼)課税台帳上の平成三年一月一日から平成四年一二月三一日までの間の一平方メートル当たりの土地の評価額は、本件土地が六万九八九五円、隣接土地が六万二九六三円であって、ほぼ等価といえる(甲三三)ところ、仮に、本件売買契約代金の全額を本件土地の売買価額とみると、本件土地の一平方メートル当たりの単価は五一万八一五四円と、隣接土地の単価とほぼ同額となり、両土地の課税上の評価額が近似する点とも一致することとなる。
この点、原告は、本件土地には建物が建っており、更地の二分の一以下の価格設定をすることが一般的であると主張する。しかし、全額を償却の対象として申告した建物価格に敷地利用権価格が含まれていないことは当然であり、しかも、前記のとおり、本件建物が老朽化著しく無価値であったことを考えると、本件土地を更地価格の二分の一以下として評価すべき合理性があるとは到底認められず、原告の主張を採用することはできない。
五 原告の主張について
(1) 原告は、本件建物を貸店舗とする目的で、平成四年八月ころ、原告が乙に本件建物の改良工事を依頼したこと、同じころ、E(代表者己)に改装工事に伴う電気工事の依頼をして、見積書を同月一〇日に提出してもらい、簡単な配線工事もしてもらったこと、本件土地建物購入直後には、庚と本件建物二階全部を月額三〇万円で口頭の賃貸借契約を締結していたことを主張する。
しかし、E電気の見積書(甲一二の一、二)は、平成四年八月一〇日付けであるにもかかわらず、同月一二日に設立されたはずの原告宛となっており、また、本件建物は、三階建てであるのに、見積書では二階部分までしか見積りをしておらず、さらに、見積書に記載されているF株式会社が販売する空調機SPW―TC一四〇Lは、昭和六二年一二月に製造が終了し、平成二年以降在庫がほとんどなかった製品であり(乙一一)、同じく見積書に記載されているG株式会社が販売する照明器具HTD一八一七XEP、HTD八〇一一XEP、HTD八〇一三XEPは、いずれも平成五年二月から製造が開始された製品で、当時はまだ存在していなかったものである(乙一二)。己自身も、上記各製造会社からの回答書(乙一一、一二)が提出された後に、同見積書が当時作成したものでないことを認めるに至っている(甲五二)。したがって、見積書の内容自体、著しく信用性を欠くものである。
また、己は、原告主張のとおりの内容を証明書及び申述書として提出しているが(甲一一、五二)、具体的な改装工事の内容が全く決まっていないにもかかわらず、電気工事の見積り及び簡単な配線工事までもが先走って行われているということは極めて不自然であり、行った配線工事に対して代金が支払われた様子もなく、前記見積書が後日作成されたものであること及び己が有限会社Cの出入り業者であることからしても、同人の申述内容はたやすく信用することができない。
庚は、原告と本件建物二階の賃貸借契約を口頭で締結し賃料も合意していた旨の証明書を作成している(甲一三)。しかし、高級スナックを営業目的としていたにもかかわらず、電気の供給が停止され利用されていない建物の内部も見ず、どのように改装されるかも全く分からない状態で、賃料も決めて契約書も作成しないまま契約を締結するというのはあまりもに杜撰であり、庚が有限会社Cの近くの飲食店経営者であり、甲と以前からの知合いであったことにかんがみても、同人の証明書は到底信用できない。
乙は、改装工事の見積りを甲から頼まれたと証言しているが、乙が、有限会社Cの専属大工であって、字の読み書きができず、これまで見積書を作成したことがないこと、同じ内容を記載した乙作成の証明書(甲一〇)も、同人の娘が書いて署名捺印したものであること(乙証人)などからみても、原告から見積りの依頼があったとの同人の供述は信用できない。
(2) また、売主有限会社B代表者丁及び仲介者辛が作成した証明書(甲二)、売買代金受渡しに立ち会ったH銀行上ノ蔵支店長壬が作成した申述書(甲七)、同じく代金受渡しに立ち会った司法書士葵が作成した申述書(甲八)には、いずれも本件土地建物を購入する際、甲が貸店舗目的である旨発言していたとの記載がある。しかし、これらはいずれも甲の発言の仄聞したことを記載したものに止まり、その発言内容の真実性を裏付けるに足りる証拠とはなり得ないものと認められる。
六 本件更正処分等の適法性
(1) 法人税法施行令五四条一項一号は、購入した資産の取得価額の範囲は、当該資産の購入の代価と当該資産を事業の用に供するために直接要した費用の合計額となると規定する。同項は、固定資産のうちの減価償却資産の取得価額の範囲についての規定であるが、これは企業会計原則第三の五を具体化したものと解されるから、土地等の非減価償却資産についても類推適用されるべきである。そして、土地とともに建物を取得した場合に、建物の取得目的が当初からその敷地を利用することにあったのであれば、建物を取り壊した時の帳簿価額等(建物の取壊し費用も含む。)は損金に算入することはできず、土地の取得価額に算入すべきである。法人税法基本通達七―三―六が、「その取得後おおむね一年以内に該当建物等の取壊しに着手するなど、当初からその建物を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、(上記帳簿価額等は)当該土地の取得価額に算入する。」としているのも、同旨に出たものであると解される。そして、このような建物の取得目的は、納税者の内心の意思に係るものではあるが、納税者のこのような主観的意図を立証することの困難性、租税の公平負担という見地からみて、客観的諸事実に合致する明白なものでなければならない。
そして、前記認定のとおり、購入当時の本件建物の極めて老朽化した状況、原告が平成四年七月二五日に本件土地建物を購入し、そのわずか3か月後の同年一〇月末ころまでには、有限会社Cが費用を負担して本件建物を取り壊していること、それにもかかわらず原告が本件建物の売主に何らクレームをつけていないこと、原告と有限会社Cは極めて密接な関係にあったこと、多数の収容人員及び従業員を有する有限会社Cが、駐車場を必要としており、そのため甲が隣接土地を購入して建物を取り壊し、有限会社Cに駐車場として賃貸していたこと、この隣接土地と本件土地を一体として有限会社Cが駐車場として利用し、本件建物が存続していた同年九月分から既に賃料を支払っていること、隣接土地と本件土地の購入価格の単位の著しい相違等を総合すると、原告は、当初から本件土地を有限会社Cの駐車場として利用する目的で本件土地建物を取得したと認めるに十分であるといわなければならない。他方で、原告がその主張の裏付けとして提出する各証拠は、主として原告又は甲が主観的に貸店舗目的で本件建物を購入したというのみであって、客観的に甲等の意思を理由付ける証拠とはなし得ないものである。また、本件建物が原告にいったん所有権移転登記をされている事実をもってしても、上記の客観的な各認定事実を覆すに足りるものでないことは明らかである。
したがって、原告は、本件建物を取り壊した時の帳簿価額等を繰り延べして各事業年度の損金に算入することはできず、土地の取得価額に算入すべきである。
(2) 以上の事実をもとにすると、原告の支払うべき法人税等は下記のとおりとなる。
記
平成四年一〇月期
加算項目 <1>土地計上漏れ 七一九一万〇四五〇円
<2>交際費等の損金不算入 一二一万五三五一円
<3>駐車場賃貸収入計上漏れ 二〇〇万〇〇〇〇円
減算項目 開業費否認 七一九一万〇四五〇円
所得金額(申告額〇円) 三二一万五三五一円
法人税額(法人税法六六条) 一〇一万五六二五円
更正処分(国税通則法一一九条一項) 一〇一万五六〇〇円
過少申告加算税(国税通則法六五条) 一二万六五〇〇円
課税標準法人税額(法人特別税法九条三項) 一万五〇〇〇円
法人特別税額(法人特別税法一〇条) 三〇〇円
平成五年一〇月期
加算項目 開業費償却の損金不算入 一九四四万一二四五円
減算項目 <1>駐車場収入過大計上額 二〇〇万〇〇〇〇円
<2>未納事業税認容額 一九万二九〇〇円
所得金額(申告額〇円) 一七二四万八三四五円
法人税額(法人税法六六条) 五七〇万八〇〇〇円
更正処分 五七〇万八〇〇〇円
過少申告加算税 八三万〇〇〇〇円
課税標準法人税額(法人特別税法九条二項) 一七〇万八〇〇〇円
法人特別税額(法人特別税法一〇条) 四万二七〇〇円
平成六年一〇月期
加算項目 開業費償却の損金不算入 一五五二万〇三九五円
減算項目 未納事業税認容額 一七五万四七〇〇円
所得金額(申告額五一〇円) 一三七六万六二〇五円
法人税額(法人税法六六条) 四四〇万二二五〇円
所得税額の控除額(法人税法六八条) 三八三円
更正処分(国税通則法一一九条一項) 四四〇万一八〇〇円
過少申告加算税 六三万五〇〇〇円
七 結論
以上のとおり、本件更正処分等はいずれも適法であると認められ、原告の本訴請求には理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清水節 裁判官 齊藤啓昭 裁判官 瀬戸さやか)
別紙
物件目録
1 所在 那覇市辻
地番
地目 宅地
地積 一一六・七九平方メートル
2 所在 那覇市辻
地番
地目 宅地
地積 一四五・六八平方メートル
3 所在 那覇市辻
家屋番号
構造 鉄筋コンクリートブロック造陸屋根三階建
種類 一階 公衆浴場
二階 店舗
三階 居宅
床面積 一階 二〇七・三三平方メートル
二階 二〇一・〇一平方メートル
三階 二〇一・〇一平方メートル
別表(一)
更正処分及び過少申告加算税
<省略>
別表(二)
法人特別税更正処分
<省略>