那覇地方裁判所 平成12年(ワ)925号 判決 2001年10月31日
主文
1 被告A及び同Bは、原告らそれぞれに対し、連帯して金4115万2534円(合計金8230万5068円)及びこれに対する平成12年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告らの被告A及び同Bに対するその余の請求並びに被告C、同D及び同Eに対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、原告らに生じた費用の5分の3並びに被告C、同D及び同Eに生じた費用を原告らの負担とし、原告らに生じた費用の5分の1及び被告Aに生じた費用を同被告の負担とし、原告らに生じた費用の5分の1及び被告Bに生じた費用を同被告の負担とする。
4 この判決は第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告らは、原告らそれぞれに対し、連帯して金5065万2534円及びこれに対する平成12年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
1 請求原因
(1) 原告Fと同Gは夫婦であり、亡H(昭和60年3月12日生)の両親である。
被告Cと同Dは夫婦であり、被告A(昭和59年9月12日生)の両親である。
被告B(昭和58年4月24日生)は、被告Eと訴外Iの子であるが、両名は平成6年3月11日に離婚し、親権者は被告Eとされた。
(2) 被告A(当時15歳)及び被告B(当時17歳)は、共謀の上、平成12年6月9日午前0時30分ころから同日午前3時ころまでの間、那覇市ab丁目c番dR所有の墓地(以下「本件墓地」という。)において、H(当時15歳)に対し、こもごも同人の頭部、顔面、腹部を手拳で数十回突き、跳び蹴りをした上、同人を引き倒してその頭部を踏みつけ、脇腹を数十回にわたり足蹴りにするなどの暴行を加え、さらに、これ以上の暴行を加えればHが死亡するおそれがあることを知りつつ、そのときはそれでもかまわないとの意思をもって、被告Aにおいて角材でHの腰部を殴りつけ、ブロック塊を同人の胸部に投げ下ろし、頭部に投げつける等の暴行を加え、被告BにおいてHに対し、引き続き暴行を加え、よって、同日午前11時1分ころ、那覇市ef丁目g番h号J病院において、同人を全身打撲による外傷性ショックにより死亡するに至らせた(以下「本件事件」という。)。
したがって、被告A及び被告Bは原告らに対し、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
(3) 被告C及び同弘美は、被告Aの親権者であり、被告Eは、被告Bの親権者であるので、それぞれ被告A又は被告Bを保護及び監督すべき立場にあるから、年少のころから非行を繰り返していた同被告らについて、一般の親以上に生活態度を厳重に監視し、大事を引き起こさないように指導を強化しなければならない義務があるのに、これを怠り、同被告らを放任していたため、前項のとおり重大な結果を惹起させたものである。
したがって、被告C、同弘美及び被告Eは、原告らに対し、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。
(4) 被告らの不法行為により原告らが被った損害は、次のとおりである。
① Hの逸失利益 4470万5068円
Hは、死亡当時15歳であり、18歳から67歳に至るまで就労が可能であったから、平成10年賃金センサス男子全年齢平均569万6800円を基準とし、生活費控除50%、ライプニッツ係数15.6948{(67年-15年=52年に対応するライプニッツ係数18.4180)-(18年-15年=3年に対応するライプニッツ係数2.7232)=15.6948}で計算すると、Hの逸失利益は、次のとおり4470万5068円となる。
569万6800円×(1-0.5)×15.6948=4470万5068円
② Hの慰謝料 3000万円
Hは、被告A及び被告Bの前記行為によって、将来を突然絶たれ、その無念さを慰謝する金額は3000万円を下らない。
③ 原告らの固有の慰謝料 各1200万円(合計2400万円)
将来ある息子Hを突然失った原告らの悲痛は計り知れず、その無念さを慰謝する金額は各1200万円を下らない。
④ 葬儀費用 60万円
⑤ 弁護士費用 200万円
原告らは、Hの損害①及び②の賠償請求権をそれぞれ2分の1ずつ相続した。これに原告らの固有の損害である③ないし⑤の2分の1ずつを加えると、損害額は、原告らそれぞれ5065万2534円になる。
(5) よって、原告らは、それぞれ、被告らに対し、不法行為による損害賠償として金5065万2534円及びこれに対する不法行為の日である平成12年6月9日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 請求原因に対する認否及び被告らの主張
(1) 被告A及び被告Bに、未必の殺意があったとの点は否認し、その余は概ね認める。
(2) 被告C、同弘美及び同惠子の監督責任は争う。
(3) 損害については争う。
第3当裁判所の判断
1 本件事件の経緯
甲第4ないし第9号証、乙イ第1号証、原告F、同美江子及び被告D本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次のとおりの事実が認められる。
(1) Hと被告Aは、同じ小学校に通い、ともに、K中学校に進学し、互いの家を行き来する友達付合いをしていたが、おとなしい性格であったHは、日頃から被告Aの使い走りをさせられていた。
Hは、中学1年生のころ、放課後、公園で用足しをしているときに被告Aにトイレの上方から熱湯をかけられて左腕に火傷を負い、ケロイド状となって火傷跡が残るほどの暴行を受けた(以下「熱湯事件」という。)。また、中学3年生であった平成11年9月には、糸満市の公園において、被告A及び他校の生徒に殴る蹴るの暴行を加えられ、顔面が腫れ上がり、全身に打撲等の傷を負い、50㎝角のプラスチックの5㎜板(立て看板を壊したもの)で頭を殴られ、頭部3か所に切創を負い、頭をかばった右手の薬指及び小指を骨折し、全治3か月の傷害を負った(以下「糸満暴行事件」という。)。
(2) 被告Aは、中学1年生のころから、夜間徘徊、オートバイ盗、喫煙を繰り返し、中学3年生のころから飲酒も始め、補導された経験を有する。そして、中学3年生の平成11年12月に糸満暴行事件と普通乗用自動車の窃盗罪で、中学卒業後の平成12年4月7日に普通乗用自動車の窃盗罪で、それぞれ家庭裁判所の審判を受け、保護観察処分に付されている。しかし、非行が止むことはなく、本件事件当時は、2度目の保護観察中であったにもかかわらず、何人かの仲間と連れ立って、深夜徘徊、喫煙、飲酒等の非行を繰り返していた。
被告Bも、年少のころから非行を繰り返し、本件事件当時も何人かの仲間と連れ立って、深夜徘徊、喫煙、飲酒等の非行を繰り返していた。
(3) 平成12年6月8日夕方、Hは、那覇市役所K支所の裏通りで、Lや知合いの高校生らと遊んでいたところ、同日午後7時すぎころ、被告A、被告B、M、Nが車で参集して、K支所の裏でビールを飲み始めた。同日午後9時ころまでに、高校生らとM及びNが帰り、H、L及びOが被告A及び被告Bのグループに加わり、5人となった。
その後、被告AがHに缶ビールを買いに行かせたが、Hは、被告Aの指定とは異なる銘柄の缶ビールを買ってきたため、被告Aが指定した銘柄に買い換えてくるように言い、被告B及びOも、これに便乗してHに煙草を買うように命じた。しかし、渡された金が不足していたため、Hは、缶ビールを指定された銘柄に換えず、煙草だけを購入してきた。指示を無視されたと感じた被告Aは、Hに対し、腹を立てて叱ったが、ふざけたように謝るHの態度に、一層腹を立て、Hの頭を何回か平手で殴った。また、被告Bも、Hの弁解が、同被告らが煙草を買わせたためにビールを買う金が不足したと口答えしたように聞こえたことから、怒り出し、Hの顔などを殴り始め、結局、被告らは、それぞれHをその場で十数分殴りつけた。
(4) 同日午後10時ころ、被告Aは、人目のつかない墓地で更にHを痛めつけようと考え、「こいつもっと殴る。墓で殴る。」と言い、本件墓地までの約1.7㎞の道程を、嫌がるHの腕を引っ張って連行し、その途中でも、タイヤのホイールキャップでHを殴るなどした。
本件事件の現場となった本件墓地には、Oも合流し、被告AがHに対し、「どうせチクるんだろう。」と言いながら暴行を本格的に加えていたところ、午後10時30分を過ぎて、被告B及びLも合流した。
後から来た被告Bが暴行に加わり、被告Aが被告Bに対して、「この位ならこいつチクりますよ。」と煽りながら、無抵抗で許しを乞うHに対し、それぞれ同人の頭部、顔面、腹部を手拳で数十回突き、跳び蹴りをした上、同人を引き倒してその頭部を踏みつけ、脇腹を数十回にわたり足蹴りにするなどの暴行を執拗に続けた。被告Aは、その場にあった角材を用いてHの腰部を殴り、角材が折れると付近にあったブロック塊を倒れているHの胸部、背部に投げ下ろし、ブロック塊が割れるとその破片を墓の隅にうずくまっているHに向けて十数回投げつけ、その一部は頭部に命中した。さらに、被告Aは、角材が固定されたブロック(角材の長さ55㎝、ブロックの重さ約15㎏)を暴行に用いようとしたが、LとOに止められた。
途中、OがライターでHの様子を見て、同人が顔から血を流してぐったりしていることを確認したが、その後も被告らは、Hに対し暴行を加え続け、また、Hを柵のある高所まで連れて行き、柵から5メートルほど下に突き落とそうとしたが、Hが抵抗したため断念した。
その後、被告Aと被告Bは、交代でコンビニに行き、着衣や手がHの出血で汚れていることを確認しながらも、犯行現場に戻り、防御不能となっているHに対し、片方が殴り疲れたら交代して休んで再び殴るという暴行を加え続けたが、被告BがHに跳び蹴りをして足を痛めたことから暴行を止め、被告Aも疲れたことから暴行を止めた。
(5) 同日午前3時ころに至り、被告Aは、Hに他言しないことを念押しして、倒れたまま立ち上がらない同人を放置して帰宅することとした。
しかし、被告Aは、帰宅途中にHのことが気になり、同人を放置した場所に戻り、自分の服を脱いで全裸になっていたHに着せ、血塗れた顔を洗い、飲み物を飲ませ、肩を貸したり背負うなどして連れ帰ろうとしたが、同被告だけでは無理であったので、近所の先輩宅を訪ね助けを求めたが、家人に断られて諦め、Hを本件墓地に放置したまま帰宅した。
同日午前11時1分ころ、那覇市与ef丁目g番h号J病院において、Hは全身打撲による外傷性ショックにより死亡した。
2 被告A及び被告Bの責任
被告A及び被告Bは、前記認定のとおり、無抵抗のHに対し、2人がかりで殴る蹴るの暴行を加え、その結果、死亡するに至らせたものであり、未成年者ではあるものの、当時はそれぞれ15歳と17歳であって中学を卒業しており、各自の暴行の責任を弁識するに足りる能力を有することは明らかであるから、故意による不法行為が成立し、原告らに対し、損害賠償責任を負うものといえる。
3 被告C及び同弘美の責任
(1) 未成年者が責任能力を有する場合であっても、親権者等の監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認め得るときは、監督義務者につき民法709条に基づく不法行為が成立する(最二判昭和49年3月22日民集28巻2号347頁)。しかし、当該未成年者の不法行為と監督義務者の義務違反に相当因果関係が認められるというためには、法定監督義務者としての民法714条に基づく責任の場合とは異なり、より具体的に、監督義務者において、当該未成年者が当該不法行為を行うことを予見し、それを阻止するための措置を執る注意義務があったにもかかわらず、当該注意義務を怠ったことが必要であると解するのが相当である。
(2) 原告F、同G及び被告D本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次のとおりの事実が認められる。
① 熱湯事件の後、担任教諭から呼ばれて、原告Gと被告Cが学校に赴き、Hや被告Aらとともに校長室で話合いをしたが、被告Cは、酒を飲んできており、謝罪の言葉もなく、ただ被告Aを叱るだけであった。その後も、被告C及び同弘美から原告らに対する謝罪はなく、治療費の負担の申し出などもなかった。
② 糸満暴行事件の後、被告Dは、原告ら宅を謝罪のために訪れたが断られ、事件から1週間後、学校の会議室において話合いの席がもたれた。被告Dからは、謝罪の言葉が述べられたが、被告Aをどのように指導、監督するかという話はなく、原告Fは、学校側にも被告Aの監督を依頼したが、学校側では責任がとれないと突き放すような態度であった。被告Dからは、治療費支払の申し出もなく、原告Fも、治療費はいらないから、今後は一切Hと関係を持たないで欲しいと言い渡し、被告Aの監督を重々依頼した。
③ 熱湯事件後、原告Fは、Hに対し、被告Aとの友達付合いを止めるよう話をした。しかし、Hは、電話やポケベルで呼出しが来ると、親の目を盗んで外出することを繰り返したため、原告Fは、ポケベルを取り上げ、電話も取るなと言い、できるだけ外出もさせないようにしたが、Hは被告Aとの付合いを継続した。糸満暴行事件後、学校における話合いの際、Hは被告Aに対し、「もう、おまえとは遊ばんから。」と伝え、学校にも行きたくないと言ったため、原告らは、Hを九州の私立高校へ入学させることや転居することも考えたが、Hが地元から離れたくないと言うため、結局、話は進展しなかった。
④ 被告Aは、中学校に入学してから本件事件に至るまで、夜間徘徊、飲酒、喫煙、窃盗、暴行事件等様々な問題を起こし、補導歴もあり、保護観察処分も2回受けている。被告Dは、被告Aに対し、学校に行きたくなければ行かなくていいから、とにかく他人に迷惑はかけるなと頻繁に注意をしており、被告Aも母親の話はそれなりに聞いていた。しかし、当時、被告Cには仕事がなく、一日中家に居て、しばしば飲酒をして被告Aを怒鳴りつけるため、被告Aと被告Cの仲は良好とはいえず、大阪から帰ってきた長男Pと被告Aの関係も険悪なものであったことから、被告Aは、家の中にも落ち着ける居場所がなく、母親である被告Dがいる日中は家にいて閉じこもりきりであるが、同被告が夜、アルバイトのため家を空けると、深夜徘徊するという状態であった。被告Dは、被告Aの非行行為を保護司にも相談したが、改善がみられなかった。
被告Aは、初回の保護観察処分の後、ほとんど家におり、糸満暴行事件を起こした他校の生徒とも会わなくなり、関係を絶っていた。当時、被告Aが中学を卒業したら、宮崎にいる兄(次男Q)を頼って、就職するという話が決まっており、被告Aも前向きな姿勢であったため、被告Dも若干安心していた。しかし、再び、近くに住む姉の同級生らと普通乗用自動車の窃盗事件を起こし、再度保護観察処分に付された。
⑤ 糸満暴行事件の後、被告Dは、被告Aに対し、Hと友達付合いをするなら優しく接するようにと注意をし、また、被告AとHは会わない方がよいと思い、H本人にもそう告げたが、Hが頻繁にC宅に出入りをしており、被告Dが無理矢理連れてこられているのかと尋ねてもHがこれを否定し、被告Aの留守中も、Hが吉原宅で同被告の帰りを待つこともあったことなどから、Hが遊びに来ること自体を親として拒絶することはできないと思い、2人の交際を放置せざるを得なかった。
(3) 前記認定によれば、被告AがHに対して中学時代に2度も暴行傷害事件を起こしている上、被告Aは、2度にわたる保護観察処分を受けたにもかかわらず、深夜徘徊、飲酒、喫煙等の非行行為を改めることはなかったのであるから、そのような被告Aが、Hと交友を続けることに問題があることは、被告C及び同弘美も、原告らと同様に感じていたといえる。
しかし、被告C及び同弘美は、被告Aの度重なる非行行為や保護観察処分の結果を受けて、同正を再三注意し、中学卒業後の就職先を県外に求め、被告Dは、できるだけ家に居るために、アルバイトを深夜にするなど、保護監督の努力を行っていたと認められる。また、Hとの交際についても、被告Aに無理矢理連れてこられているのかと気に掛け、双方に注意をするなどしており、それにもかかわらずH自身が被告Aとの交友を続けたいと述べていたのであって、2人の交友の問題をより深刻に感じていたと思われる原告らでさえも、2人の交友関係を絶つことができなかったという事情がある。これらの点にかんがみれば、被告C及び被告Dは、その置かれた状況の下で一般的に期待し得る保護監督は行っていたというべきである。
本件事件は、これらの保護監督にもかかわらず不幸にして発生してしまったものであるが、糸満暴行事件からは9か月が経過し、この間被告Aの深夜徘徊等の非行行為は続いていたものの、暴行事件は起こしていないこと、Hは普段から被告Aと交友したいと述べて同人宅に出入りしていたこと、本件事件は、Hがビールの代わりにたばこを買ってきたという偶然の事情を契機としており、過去の2度の暴行事件と比べても格段に程度が重いことなどの事情からすると、被告C及び被告Dにおいて、本件事件の発生を事前に予見することは困難であり、また、これを防止するために、前記のような保護監督行為以上に強力な措置を執るべき特段の注意義務があったとはいえない。
したがって、被告Aの前記不法行為に関し、被告C及び被告Dの損害賠償責任は認められない。
4 被告Eの責任
被告Eは被告Bの親権者であり、被告Bが、深夜徘徊、飲酒、喫煙等の非行を繰り返していたこと、被告Eが被告Bの父親であるIと平成6年3月11日に協議離婚したことは認められるが、被告BがHに対し、本件事件で行った暴行を加えるおそれがあると、被告Eが具体的に予見することができたと認めるに足りる証拠はなく、また、同被告が被告Bに対する一般的な保護監督義務を怠ったと認めるに足りる証拠もない。
したがって、被告Bの前記不法行為に関し、被告Eの損害賠償責任は認められない。
5 損害
原告らが被った損害は、次のとおりと認められる。
(1) Hの損害
原告らは、次のとおりのHの損害の賠償請求権をそれぞれ2分の1ずつ相続した。
① Hの逸失利益 4470万5068円
Hは、死亡当時15歳であり、18歳から67歳に至るまで就労が可能であったから、平成10年賃金センサス男子全年齢平均569万6800円を基準とし、生活費控除50%、ライプニッツ係数15.6948{(67年-15年=52年に対応するライプニッツ係数18.4180)-(18年-15年=3年に対応するライプニッツ係数2.7232)=15.6948}で計算すると、Hの逸失利益は、次のとおり4470万5068円となる。
569万6800円×(1-0.5)×15.6948=4470万5068円
② Hの慰謝料 2500万円
Hは、何の落ち度もなかったにもかかわらず、被告A及び被告Bの前記行為によって、一方的に将来を絶たれ、その暴行を受けたときの苦痛及び無念さは、察するに余りあり、これを慰謝する金額は2500万円を認めるのが相当である。
(2) 原告らの固有の損害
① 原告らの固有の慰謝料 各500万円(合計1000万円)
将来ある息子Hを不当な暴力行為によって突然失った原告らの悲痛は甚大であり、これを慰謝する金額は各500万円を認めるのが相当である。
② 葬儀費用 60万円
③ 弁護士費用 200万円
原告が訴訟を提起せざるを得なかった事情、訴訟進行及び請求認容額等にかんがみ、弁護士費用のうち、200万円を被告A及び被告Bに負担させるのを相当と認める。
したがって、原告らに認められる損害額は、合計8230万5068円(1人あたり4115万2534円)となる。
6 結論
以上のとおり、原告らの被告A及び被告Bに対する請求はこれを一部認容し、その余は棄却し、被告C、被告D及び被告Eに対する請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清水節 裁判官 高松宏之 裁判官 瀬戸さやか)