那覇地方裁判所 平成14年(ワ)447号 判決 2003年1月16日
主文
1 被告は原告に対し55万6704円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを2分し、その1を原告の、その余を被告の各負担とする。
4 この判決の第1項は、仮に執行することができる。
事実および理由
第1 原告の請求
被告は原告に対し、101万0469円及びこれに対する平成14年6月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 本件は、被告からクレジットカードによる継続的借入をしていた原告が返済について過払いがある旨主張し、不当利得金101万0469円及びこれに対する不当利得が生じた日の後である平成14年6月6日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めている事案である。
2 原告が被告から昭和58年5月27日から平成14年4月27日までの間、別紙修正計算書の借入額欄記載のとおりの借入をし、同支払額欄記載のとおりの支払(返済)をしたことは当事者間に争いがない。
3 本件の争点及び争点に関する当事者双方の主張は、次のとおりである。
(1) 弁済金の充当方法
(被告)
被告は原告に対し、カードを利用して、個々に金員を借り入れたほか、リボルビング方式による借入もしていた。被告と原告との間の契約では、個々の貸金については、利用した月の翌月以降毎月27日限り、所定の金額と回数で支払うものとされ、リボルビング方式の場合、毎月末日現在の利用元本残高に応じて区分した一定額(利用元本残高20万円までは1万円、20万円を超え30万円までは1万5000円、30万円を超え40万円までは2万円、40万円を超え50万円までは2万5000円)を支払うものとされていた。
そして、個々の貸金について利息制限法所定の制限利率に引き直して充当計算をし(別紙C1ないしC35参照)、リボルビング払いについては全体として一個の債権として利息制限法所定の制限利率に引き直して充当計算をする(別紙利息制限法所定の利率による計算書参照)と、結局、原告の過払額は別紙過払額一覧表記載のとおり40万1354円である。
(原告)
原告と被告間の取引は、基本契約に基づく反復的貸借であるから利息制限法所定の制限利率を超える支払の充当計算をする場合は、これを連続計算して順次充当計算すべきである。
(2) 消滅時効
(被告)
個々の貸金については、すべて過払いは平成2年3月2日以前に発生しているから、当該の各不当利得返還請求権は、その発生の日から10年(発生の応答日)を経過した日には時効消滅しているから、遅くとも平成12年3月3日以前に時効により消滅した。
被告はこの消滅時効を援用する。
(原告)
原告は、平成14年10月7日の本件第3回口頭弁論期日において、被告主張の時効消滅した過払金(原告の不当利得返還請求権)と被告の貸金債権を対当額において相殺する旨の意思表示をした。
したがって、この場合、相殺適状時に弁済があったこととなるから、順次充当計算をするのと同一の結果となる。
第3 当裁判所の判断
1 まず、争点1であるが、原告と被告間の取引は、基本契約において、一定額の利用限度額において反復的に小口の貸借がされることが予定されていて、その都度貸借に応じるか否かを被告が審査することなく、カードとキャッシュローンブックと指定金融機関の窓口に呈示することによって貸借が成立するという取引である(乙1)。このような取引の場合、貸主としては個々の借受毎に個々の貸金が成立したとして債権管理をしているとしても(約定の支払回数において分割手数料と称する利息の利率が異なるものと思われる。)、債務者としては、全体を一個の元本とみなして支払いをすることが通常であると思われる。たしかに、債務者にとっても、約定支払回数に応じて利息の支払額が異なることも考えられるから、個々の貸金に応じて弁済方法を考慮することに全く意味がないともいえないけれども、ほぼ約定支払回数も共通しているのであり(本件では6回か12回である。)、もとより弁済充当の指定もなく(被告の計算は指定弁済充当を前提とするものではない。)、個々の貸金毎に領収証等が発行されていたとも思われないのであるから、債務者の主要な関心が借受金の残高の総額にあることは疑いない。しかも、原告と被告間では、期限前に債務を返済した場合には、期限未経過分の利息は原告の請求によって払い戻す旨の規定もあり(乙1の15条)、原告が個々の貸金について期限の利益を主張する意思がないことも明示されているのである。そうすると、このような取引について、なお、個々の貸金について、それぞれ民法の弁済充当の規定にしたがった充当がされたとみることは、当事者の通常の意思に反するとみるべきである。したがって、被告主張の個々の貸金についても、利息制限法所定の制限利率を超える弁済の充当計算については、全体を一個の貸金とみなして差し支えないと考える。
そうすると、原告の主張は理由があり、原告主張の充当計算を採用すべきである。
なお、このように考えても、本件の各貸金についての制限利率はすべて18パーセントであって、原告はすべての債務についての過払いを主張し、被告も過払いがあること自体は争わないのであるから、毎月27日以後に借り入れた分については、翌月の弁済日には充当計算されないことと(この点は元本充当額が大きくなるので、むしろ被告に不利である。)、後記、消滅時効の問題があるだけで、結論としては大きく異ならないところである。
2 争点2について
上記のところからして、被告主張の消滅時効は、その前提において既に理由がないが、念のため、争点2(相殺)についても検討するに、時効消滅した債権であってもこれを自働債権として相殺することができることはいうまでもない(民法508条)。
そして、原告がこの相殺の意思表示をしたことは、記録上明らかであるから、被告主張の個々の貸金債権が過払いを生じた時点で、原告はこの過払い分が他の貸金債権の元本に充当されたことを主張できることになるのであり、結果として順次充当計算をするのと同様の結果となることは原告主張のとおりである。
被告は、各貸金について過払分が他の貸金の元本に充当されないことを前提として、過払金の計算をするが、上記のところから、これに理由がないことは明らかである。
3 結論
以上の次第で、その計算関係を含めて、原告の請求は理由があるので、原告の請求を認容することとして、主文のとおり判決する。
(裁判官 綿引穣)
(別紙)修正計算書
業者名 株式会社オークス 債務者 Y
総合計 3,510,000 4,145,415 利息制限法所定の制限金利で計算
*元金充当額のマイナス金額は、未払いの利息・損害金をあらわす。
(1年を365日とする)
<省略>
(別紙)11
<省略>
(別紙)12
<省略>
(別紙)13
<省略>
(別紙)14~45(C-4~C-35)
<省略>