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那覇地方裁判所 平成19年(む)22号 決定 2007年2月22日

主文

本件各証拠開示請求をいずれも棄却する。

理由

1  請求の趣旨及び理由

本件請求の趣旨及び理由は,弁護人作成の「証拠開示命令請求書」記載のとおりであるからこれを引用するが,要するに,検察官が取調べを請求しているAの警察官調書(甲10)及び検察官調書(甲11),Bの検察官調書(甲21)並びに実況見分調書(甲12,22。以下,甲10ないし12,21,22を併せて本件検察官請求証拠という。)の信用性を判断するため,刑事訴訟法316条の15第1項6号(以下「本件条項」という。)により,①本件犯行状況又は犯行前後の状況を目撃した目撃者の供述録取書等の全て(既に開示されているものを除く。)及び②本件犯行直後1週間以内に捜査官が本件現場付近で聞き込みをした捜査の結果に係る捜査報告書(既に開示されているものを除く。)が開示されるべきであるが,検察官が開示に応じていないので,その開示を求めるというものである。

2  当裁判所の判断

(1)  そこで,まず,①の点について検討するに,同請求により弁護人が開示を求める証拠としては,平成18年10月25日付けCの警察官調書及び同月28日付けDの警察官調書があると解されるが,検察官は,平成19年2月22日,上記各警察官調書を任意に開示したので,弁護人の請求のうち,この点に関する部分は,請求の利益を失ったと認められる。

(2)  次に,②の点について検討するに,捜査の過程で聞き込みをした内容を記載した捜査報告書(いわゆる地取り捜査報告書)は,実質的には被聴取者の供述を録取した書面であると解され,実質的な供述者である被聴取者の確認を経ておらず,その署名,押印も欠くから,本件条項にいう「供述録取書等」には該当しないというべきである。また,弁護人は,本件請求に係る捜査報告書として,「黒っぽい服を羽織った60歳代のおじいさん」の特定に関する捜査報告書も例に挙げているところ,このような捜査報告書は,同人の特定に関する捜査状況についての捜査官の供述書にすぎず,検察官が本件検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするものではないから,本件条項所定の類型に該当するとは認められない。

3  よって,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 吉井広幸 裁判官 福島直之 裁判官 徳井真)

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