那覇地方裁判所沖縄支部 平成19年(ワ)103号 判決 2007年9月04日
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原告
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同訴訟代理人弁護士
金高望
東京都品川区東品川2丁目3番14号
被告
CFJ株式会社
同代表者代表取締役
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主文
1 被告は,原告に対し,89万2917円及びうち74万3334円に対する平成19年5月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文同旨
第2事案の概要
本件は,原告が,貸金業者である被告との間で借入れと返済を繰り返してきたところ,利息制限法所定の利息の制限額を超えて利息として支払った部分(以下「制限超過部分」という。)を元本に充当すると過払金が発生しており,かつ,被告はその過払金の受領が法律上の原因を欠くものであることを知っていたとして,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,過払金74万3334円及びこれに対する過払金発生日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による法定利息(うち,平成19年5月17日までの確定利息は14万9583円)の支払を求めた事案である。
1 争いのない事実等
(1) 被告は,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である(弁論の全趣旨)。
(2) 被告は,原告との間で,継続的な金銭消費貸借基本契約を締結し,この契約に基づき,平成8年1月24日から平成15年5月8日までの間,原告に対し,別紙計算書の「年月日」欄記載の各年月日に,「借入金額」欄記載の金員を貸し付け(以下,これらの各貸付けを「本件各貸付け」と総称する。),原告は,被告に対し,同計算書の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金員を支払った(以下,これらの各支払を「本件各弁済」と総称し,以上の取引全体を「本件取引1」という。)。
本件各貸付けの約定利率は,利息制限法1条1項所定の制限利率(以下,単に「制限利率」という。)を超過している。(以上,当事者間に争いがないか,被告が争うことを明らかにしないため自白したものとみなす。)
(3) 本件各弁済の弁済金について,制限超過部分を元本に充当し,過払金には発生時から年5分の利息が発生するとして計算すると,別紙計算書の「残元金」欄に記載のとおり,最終の弁済をした平成15年5月8日時点において,過払金74万3334円が発生していた(弁論の全趣旨)。
(4) 被告は,平成16年7月30日から平成18年11月26日までの間,原告に対し,別紙計算書の「年月日」欄記載の各年月日に,「借入金額」欄記載の金員を貸し付け,原告は,被告に対し,同計算書の「年月日」欄記載の各年月日に,「弁済額」欄記載の各金員を支払った(当事者間に争いがない。以下,これらの取引全体を「本件取引2」という。)。
2 争点
(1) 被告が「悪意の受益者」(民法704条)にあたるか。
(原告の主張)
被告は,貸金業の登録業者であり,原告が被告に支払った利息が利息制限法所定の利息の制限額を超過していることを認識していたから,悪意の受益者にあたる。
(被告の主張)
民法704条の「悪意」とは,貸金業法43条1項所定の適用がないことを知っていたと解すべきところ,被告は,原告から利息超過部分の支払を受けた当時,同項の適用がないことを知らなかったから,悪意の受益者にあたらない。
(2) 本訴請求債権は,本件取引2に係る貸付残金債権及び利息債権と,その対当額により相殺されたか。
(被告の主張―相殺)
被告は,平成19年4月24日の口頭弁論期日において,本件取引2に係る貸付残金債権及び利息債権をもって,本件取引1に係る原告の本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。
(原告の主張―免除)
被告は,原告代理人に対し,平成19年1月19日,本件取引2に係る貸付残金債務及び利息債務を免除するとの意思表示をした。したがって,被告の相殺の主張は成り立たない。
第3当裁判所の判断
1 争点1(悪意の受益者かどうか)について
貸金業者が借主に対して制限利率を超過した約定利率で貸付けを行った場合,貸金業者は,貸金業法43条1項が適用される場合に限り,制限超過部分を有効な利息の債務の弁済として受領することができるにとどまり,同規定の適用がない場合には,制限超過部分は,貸付金の残元本があればこれに充当され,残元本が完済になった後の過払金は不当利得として借主に返還すべきものであることを十分に認識しているというべきである。そうすると,貸金業者が,制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。
本件において,貸金業者である被告は,制限利率を超過する約定利率で原告に対して本件各貸付けを行い,制限超過部分を含む本件各弁済の弁済金を受領したが,貸金業法43条1項の適用があることについて主張立証しないから,その適用を認めることはできない。そして,被告が,同規定の適用がないことを知らなかった旨主張するものの,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があることについて何ら主張立証していないことも明らかである。
そうすると,被告は,悪意の受益者であると推定され,その推定も覆らないというべきであるから,本件各弁済により生じた過払金に法定利息を付してこれを返還すべき義務を負うと認められる。
2 争点2(相殺の成否)について
被告は,いずれも適式な呼出しを受けたのに,原告が請求の趣旨の変更をするとともに上記免除の主張をした第3回口頭弁論期日に欠席し,その後の口頭弁論期日にも一度も出頭することはなかったから,原告の主張した免除の事実を争うことを明らかにしないものと認め,これを自白したものとみなす。そうすると,被告の相殺の主張が成り立たないことは明らかである。
3 以上によれば,原告の請求は理由があるから認容する。
(裁判官 森健二)
<以下省略>