那覇家庭裁判所 平成16年(少ロ)2号 決定 2004年7月14日
少年 M・H (平成元.4.18生)
上記少年に対する暴力行為等処罰に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反保護事件について、平成16年7月2日那覇地方裁判所裁判官がした勾留に代わる観護措置が、事件が同月9日那覇家庭裁判所に送致されたことによる同家庭裁判所のみなし観護措置に対し、同月14日付添人弁護士○○から適法な異議の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件異議の申立てを棄却する。
理由
1 申立ての趣旨及び理由
本件申立ての趣旨及び理由は、申立人作成の異議申立書のとおりであるからこれを引用するが、要するに、少年は非行事実を否認しており非行事実はないこと、複数の教師が現場を目撃しているところ、罪証隠滅手段としては、少年が否認する以外にありえないこと、少年は中学3年生であり、生活の本拠を捨てて逃亡することは不可能であること、少年の家庭における保護環境は十分整っており心身鑑別のために観護措置をとる必要がないことから、みなし観護措置は不当であり、その取消しを求める、というものである。
2 当裁判所の判断
そこで検討するに、本件は、少年が、中学校において、担任教師に対し、喫煙指導を受けたこと等に憤慨し、草刈鎌を示し、さらには振りかざす等しながら「触るな。ヤーも死にたいか。」「小学6年生でも人が殺せるんだから、俺も余裕やんに。」などと申し向け、同人の生命、身体に危害を加えかねない気勢を示し、もって凶器を示して脅迫し、また、業務その他正当な理由による場合でないのに、刃体の長さが約13センチメートルの草刈鎌1丁を携帯したというものである。これら非行事実の認定については、少年が脅迫の意図や態様を否認している状況にあることからすると、担任教師その他の目撃者の取調べ等が必要となることが考えられるところ、捜査段階での少年の供述内容、少年のこれまでの教師への態度や指導への対応状況、中学校での友人関係等の生活歴に照らすと、これら目撃者等の関係者に対して働きかけをなし、罪証を隠滅するおそれがあるといわざるをえない。また、本件の重大性、少年の生活状況や保護者の監護状況に照らすと、少年の所在が不明になるおそれもあり、さらに、少年鑑別所に送致した上での資質鑑別の必要性があるというべきである。
したがって、みなし観護措置は正当であり、本件異議の申立ては理由がない。
よって、少年法17条の2第4項、33条1項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福島政幸 裁判官 小西洋 野澤晃一)