那覇家庭裁判所沖縄支部 昭和56年(家)634号 審判 1981年11月05日
本籍 沖縄県糸満市 住所 同県宜野湾市
申立人 吉間トヨ
国籍及び住所 米国(カリフォルニア州)
相手方 カール・パーマー・コーン
国籍 米国(カリフォルニア州) 住所 沖縄県宜野湾市
事件本人 クミ・マリア・コーン
主文
申立人を相手方と申立人との間の子であるクミ・マリア・コーン(事件本人)の親権者に指定する。
理由
申立の趣旨
主文と同旨
申立の理由
一 申立人は、昭和四八年四月一六日アメリカ合衆国ネバタ州において相手方と結婚し、昭和四九年一一月二四日沖縄県内において事件本人を出産した。
二 申立人は、事件本人を出産した後間もなくして、事件本人を連れて再びアメリカ合衆国に行き、相手方とともに生活するようになつたが、相手方が職を失つて生活に困るようになつたため、やむなく昭和五〇年一二月ころ相手方の許を離れ、事件本人を連れて沖縄県に戻り、その後ずつと事件本人と一緒に生活し今日に至つている。
三 ところで、相手方は申立人に何の知らせもないままアメリカ合衆国カルフォルニア州上位裁判所に離婚の訴を提起し、昭和五二年一二月三〇日同裁判所において申立人と相手方の離婚を宣言するとの終局判決がなされたが、同判決は婚姻解消の宣言にとどまり未成年の子の監護教育権者については何らふれていない。
四 相手方は既に再婚しており、申立人らが帰沖した昭和五〇年一二月ころ以来今日に至るまで全く音沙汰なしで申立人が相手方宛に差し出した手紙も受取り拒絶で返戻されている。
五 申立人は昭和五〇年一二月以来今日に至るまでずつとひとりで事件本人を監護教育してきており、今後も母親として引き続き事件本人の監護教育に当りたいと思つているので申立人を事件本人の親権者に指定してもらいたい、また、事件本人を日本国に帰化させるためにもそれが必要である。
当裁判所の判断
一 申立人主張の各事実は、本件申立書に添付された関係各証拠及び申立人本人審問の結果によつてすべてこれを認めることができる。
二 親子間の法律関係は、法例二〇条により先ず父の本国法によるべく、若し父あらざるときは母の本国法によるべきところ、申立人本人審問の結果によつて父の本国法と認められるアメリカ合衆国カルフォルニア州法についてみると、同州民法は「監護教育を定める権限は裁判所のみがこれを有し、監護教育をなす者の指定は離婚手続においてなすことを要するが、離婚訴訟における被告が訴訟開始に先だつて子とともにカルフォルニア州を去り、かつ、送達が公示によつてのみ行われた場合は、裁判所の権限は婚姻そのものの解消にのみ限られ、子の監護教育者の決定をする権限を有せず、また、カルフォルニア州裁判所は、その土地管轄内にいない子の監護教育を定めることができない。」と規定し、同州裁判所の判例は、おおむね未成年の子の監護教育者を決定する裁判権がその子の住所地を管轄する裁判所にあることを認め、特段の事情のない限り、父の住所をもつて当該未成年の子の住所とするが、離婚した母が未成年の子と一緒に住んでいる場合は母の住所を当該未成年の子の住所とすべきものとしている。
そこで、本件事件本人の住所について検討するに、上記認定のとおり、申立人は昭和五〇年一二月ごろ相手方と別居するようになり、今日に至るまで本件事件本人とともに沖縄県内で生活し、その間昭和五二年一二月三〇日相手方と離婚しているのであるから、本件事件本人の住所は日本国内にあることは明らかである。
三 上記のカルフォルニア州法及び同州裁判所の判例の趣旨に従い同州の監護教育権を包含すると解せられる親権についての審判を求める本件については法例二九条に則り本件事件本人の住所地法である日本の法令によつて処断すべきものと解すべきところ、民法八一九条、同法附則一四条一項、家事審判法九条乙類七号の規定を類推し、申立人は親権者としての必要条件に何ら欠けるところはないから申立人を本件事件本人の親権者に指定するのは妥当であり、かかる趣旨の審判を求める本件申立は理由があるからこれを認容することとする。
よつて主文のとおり審判する。
(家事審判官 根間毅)