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金沢地方裁判所 昭和25年(ワ)475号・昭25年(ワ)422号 判決

原告 第一信託銀行株式会社

参加人 米沢電気株式会社

被告 日本国有鉄道

一、主  文

被告は原告に対し金三十八万二千円及び之に対する昭和二十五年十一月三十日以降右完済迄の間年五分の割合による金員を支払うこと。

原告の其の余の請求は之を棄却する。

参加人の請求は之を棄却する。

訴訟費用(参加費用を含む)は之を三分し其の一を被告の負担とし其の余を参加人の負担とする。

本判決は仮に執行することが出来る。

二、事  実

(原告の請求趣旨及び請求原因)

原告訴訟代理人は「被告は原告に対し金三十八万二千円及び之に対する昭和二十五年十月六日以降右完済迄の間年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は被告の負担とする」との判決並びに仮執行の宣言を求め、其の請求原因として次の如く述べた。

(一)  訴外岩城工業株式会社は被告日本国有鉄道の名古屋鉄道局長との間に昭和二十五年二月二十七日金沢駅配電線路工事(二四カ第一三二号)を工事代金三十八万二千円にて請負い同会社は右工事を完成し之が引渡を為したものである。

(二)  然して訴外岩城工業株式会社は右工事代金債権を昭和二十五年八月七日原告に譲渡し、同会社は同日付内容証明郵便を以て被告日本国有鉄道の金沢鉄道管理局長に対して右債権譲渡の通知を為し右通知は同年八月十日右局長に到着した。

(三)  然るに被告は原告に対して右債権につき言を左右にして支払わないので本訴に及んだ。

(原告の請求に対する被告の答弁)

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、請求原因事実に対する答弁として第一項は認める。第二項は昭和二十五年八月七日付の内容証明郵便の到着せるは認める。第三項は否認する。尚訴外岩城工業株式会社に対し原告主張の如き債務の存在することは認めるも、この債権者が原告であるか参加人であるかは不知と述べた。

(参加人の請求趣旨及び請求原因)

「本件債権額の内、金三十六万円は参加人の債権であることを確認する、被告は参加人に対し金三十六万円及び之に対し昭和二十五年十二月一日以降完済に至る迄年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は原告の負担とする」との判決並びに仮執行の宣言を求め、其の請求原因として次の如く述べた。

(一)  訴外岩城工業株式会社は利潤の頭をはねる為形式上自己の名で昭和二十五年二月二十七日被告日本国有鉄道の名古屋鉄道局長との間に金沢駅配電線路工事(二四カ第一三二号)を工事代金三十八万二千円で請負契約をした。

(二)  然して右訴外会社は同年三月十五日参加人との間に参加人が一切の経費資材及び被告等に対する一切の責任手続を負担し、訴外会社の右請負工事の施行を為すことを契約し参加人に於て右工事を完成したときは金三十六万円、中途で放棄したときは出来高により費用を支払うこと、その費用の支払に充当する為被告から支払われる訴外会社の請負代金の受領方を参加人に一任し代位することを認めるとの約定で参加人は被告の監督指示承諾の下に参加人に於てその費用、資材、労務施行の危険を負い工事を実施し事務処理諸手続届出交渉等一切を了して工事を竣功し同年八月十一日右工事に付被告の検査を受けて右工事の引渡しをしたのである。

(三)  依つて参加人は前項の如く直接工事をした者であるから被告に対し金三十六万円の請求権がある。

(四)  又後記第(五)項記載の理由により右訴外会社の原告に対する債権譲渡は被告及び第三者に対抗出来ないから原告は被告に本件債権の請求権が無い。依つて参加人は民法第四百二十三条により訴外会社の前記第一項の債権金三十八万二千円の中、金三十六万円に付当然代位すべきものであるから訴外会社に代位し被告に対し其の支払を求めるものである。

(五)  原告は昭和二十五年八月七日訴外岩城工業株式会社から本件債権の譲渡を受けたというが訴外会社と被告との譲渡禁止の約定に反しており、被告及び参加人等には対抗し得ないものであるから原告は被告に対し本件債権の請求権が無い。即ち昭和二十五年二月二十七日付訴外会社と被告との金沢駅配電線路変更工事(二四カ第一三二号)請負契約書第十条には「訴外会社は被告の承諾がなかつたら本契約の履行を第三者に委任し又は本契約より生ずる債権を譲渡することは出来ない」と定めて居るのであるが原告は被告の承諾のないことを知り乍ら右の如く本件債権の譲渡を受けたのである。

(六)  参加人は前記第(二)項の通り工事を実施し同第(三)項の通り被告に対し直接請求権を有するものであるが又右第(五)項の通り訴外会社と原告との債権譲渡は対抗出来ないから右第(四)項の通り訴外会社を代位して本件債権の内金三十六万円を請求するものであるが、更に又訴外会社は昭和二十五年八月十日被告に対し訴外会社から原告に対し譲渡したと言う本件債権の譲渡通知書は訴外会社の専務取締役が重役会の決議にもよらず別な印鑑で勝手にしたものであるから訴外会社は錯誤によるものだからとして之が取消の通知を国鉄に対して為し訴外会社は同月十二日訴外伊藤勘一に本件債権を譲渡し同訴外人は即日参加人に之を譲渡し何れも内容証明郵便で夫々債権譲渡通知が順次為されたのであるから参加人は此の点からも本件債権につき請求権がある。

抗弁として

(七)  原告の請求原因第二項の債権譲渡証(甲第一号証)及び債権譲渡通知書(甲第二号証)は原告が作成権限のない者に訴外岩城工業社長の判を持つて来させ同人と共謀の上、他人名義の文書即ち原告は監査役たる長谷川嘉隆と共謀の上社長岩城正(当時行方不明であつた)名義の右文書を作成したものであるから右文書は偽造文書である。故に右に基く債権譲渡通知は無効であるから此の点からも原告は本件債権の請求権がない。

(八)  参加人は訴外岩城工業株式会社との契約に基き契約書第十条所定の被告の承諾の下に本件工事を施行しその債権の譲渡を受けたものであるから参加人は此の点よりするも本件債権の請求権がある。

と述べた。

(被告の参加人の請求に対する答弁)

被告訴訟代理人は「参加人の請求は棄却する」との判決を求め請求原因に対する答弁として原因(一)項は「利潤の頭をはねるため」とある部分を除き他は認める。同第(二)項は不知、同第(三)項ないし第(五)項中「昭和二十五年二月二十七日付訴外岩城工業と被告との金沢駅配電線路変更工事(二四カ第一三二号)請負契約書第十条に『乙(岩城工業)は甲(被告)の承諾がなかつたら本契約の履行を第三者に委任し又は本契約より生ずる債権を譲渡することはできない』と定めてある」ことは認める、其の余の事実は不知、同第(六)項中訴外岩城工業が原告に債権を譲渡した旨の被告宛の通知書に使用した印鑑は本件契約書に使用した印鑑と相違している事実、訴外岩城工業が右債権譲渡通知の取消しを被告に通知し新たに訴外伊藤勘一に本件債権を譲渡した旨被告宛通知のあつた事実及び更に訴外伊藤勘一が参加人にその債権を譲渡した旨被告宛通知のあつた事実は認める、其の余の事実は不知と述べた。

(被告の主張)

(一)  本件債権の履行期限については昭和二十五年三月三十一日付補正契約書第九条第一項で「請負金額は工事が全部完成し甲(被告)の検査終了後乙(岩城工業)による適法な支払請求書を金沢鉄道管理局において受領した日から四十日以内に支払うものとする」ことになつており、金沢鉄道管理局が原告から適法な支払請求書を受領したのは昭和二十五年十月十九日であるから若し仮に原告が本契約上の債権を正当に譲受けたとしても右期間を経過しない限りは履行遅滞とはなり得ない。又参加人が本契約上の債権を正当に譲受けたとしても金沢鉄道管理局は適法な支払請求書を受領していないから未だ履行期限は到来していない。

(二)  本件債権は訴外岩城工業と被告との間に締結せられた本件契約に基き生じたもので、同契約書第十条によれば「乙(岩城工業)は甲(被告)の承諾がなかつたら本契約により生ずる債権を譲渡することはできない」ことになつており、被告は債権譲渡につき何等の承諾をした事実はないに拘らず昭和二十五年八月七日被告は訴外岩城工業が原告に本件債権を譲渡した旨の通知を受け、その後同月十日に至り被告は訴外岩城工業からその通知取消の通知と新たに訴外伊藤勘一に債権譲渡する旨の通知とを受け、更に訴外伊藤勘一がその債権を参加人に譲渡した旨の通知を受けたので被告はその間の実情を調査し正当権利者を確認することに努めたが遂に徒労に帰したので被告は昭和二十五年十二月六日民法第四九四条の規定により本件債務の履行地の金沢地方法務局に本件請負代金三十八万二千円を供託しその債務を免れたものである。

(原告の参加人の請求に対する答弁)

原告訴訟代理人は「参加人の請求を棄却する」との判決を求め請求原因に対する答弁として、原因第(一)項については「利潤の頭をはねるため」とある部分を否認し他は認める。同第(二)項、同第(五)項は不知、同第(三)、(四)、(六)項は否認する。尚工事の完成は昭和二十五年六月三十日、同工事の検査は同年七月十日である。

(原告の被告及び参加人の主張に対する陳述)

(一)  訴外岩城工業株式会社が原告に対し昭和二十五年八月七日被告に対する金沢駅配電線路工事の請負代金三十八万二千円の債権を譲渡し同日付内容証明郵便にて右債権譲渡通知をなし同年八月十日被告に到着した。然るに参加人は右債権譲渡通知は錯誤による取消通知があつたから対抗出来ないと抗争するが、原告に対する右譲渡及びその通知は右訴外会社の代表取締役岩城正より同会社の業務について社長の代行を委任されていた訴外長谷川嘉隆が其の保管していた右岩城正の印鑑を使用してなしたものであり、又右債権はさきに訴外岩城工業株式会社が原告に対する債務の担保として被告より右代金債権受領を原告名古屋支店長小津新一に委任しその受領後は原告に対する債務の弁済に充当せられることを承諾しおるものでその趣旨に沿つて債権譲渡並びに通知を為したものであるから右債権譲渡並びに通知は代表取締役岩城正自身が為したと同一の効果があるものなる旨承認し、当法廷に於て追認しており又右債権譲渡通知の取消は訴外岩城正自身がなしたものでなく訴外伊藤勘一が自己の債権の保全の為め右会社の訴外岩城正、同長谷川嘉隆に相談せず同会社の債権者の一員である訴外小林孝一と相謀り勝手に為したもので、右債権譲渡通知取消は無効であることは明らかである。従つて原告に対する債権譲渡並びに通知は有効にして被告に対抗し得る。

(二)  被告及び参加人は本件債権は訴外伊藤勘一に対して譲渡せられ其の後参加人に譲渡された旨主張するも訴外伊藤勘一に対する債権譲渡通知(被告宛の通知書)は訴外岩城正、同長谷川嘉隆の知らざるところで、同会社の債権者である訴外小林孝一と訴外伊藤勘一と相謀りなしたもので、且右通知書(丙第四号証)は単に債権譲渡通知書であり債権譲渡を証する書面もなく同書記載の昭和二十五年二月二十七日及びその頃に訴外伊藤勘一に本件債権を譲渡した事実もないことは明らかで右通知書による債権譲渡通知は虚偽のもので無効である。

(三)  次に被告及び参加人は本件債権は被告と訴外会社との間に成立した工事請負契約書には債権譲渡は被告の承諾を要する定めがあるが原告に対する債権譲渡には被告の承諾がないから被告に対抗出来ない旨主張するが原告は訴外岩城工業株式会社より以前から名古屋電気通信局等の工事請負代金に付受領委任の委任状の交付を受け、これを担保に同会社に金融し回収も順調に進んでいた関係上従前と同一の形式にて代金受領の委任状の交付を受け之を担保に金融したものでその後工事完成も近いので本件債権の譲渡を受けたもので右受領の委任状の交付を受けた際も又本件債権譲渡を受けた際も特に工事請負契約書を見せられたことなく、従つて右債権譲渡の制限の約定あることも知悉しないところで民法第四百六十六条第二項の善意の第三者にして右債権譲渡制限の約定は原告に対抗出来ないものである。

(四)  然して被告及び参加人は訴外岩城工業株式会社は参加人に対し本件債権の受領の委任をなしている旨主張し、又債権者として訴外右会社に代位して金三十六万円を請求する旨主張するが右受領委任を証する書面を被告に対して提出せる手続もなく又工事請負契約書(乙第一号証の一)第十条の承諾もないので被告に対し対抗出来ず、又本件債権は既に原告に対して譲渡せられているので訴外右会社は被告に対する債権を有しないので参加人主張の代位請求も出来ない。

証拠関係<省略>

三、理  由

訴外岩城工業株式会社が昭和二十五年二月二十七日被告日本国有鉄道の名古屋鉄道局長との間に金沢駅配電線路工事(二四カ第一三二号)を工事代金三十八万二千円で請負契約をしたることは原被告及び参加人間に争いがない。然して証人米沢外秋、同森多半左衛門、同岩城正、同池田良一の各証言及び参加人代表者訊問の結果によれば本件工事を参加人会社が訴外岩城工業株式会社より下請負をなし其の工事代金は三十六万円とし、参加人が一切の経費、資材及び被告に対する一切の手続を負担することに定め、参加人は被告の承認指示の下に本件工事を実施し、其の他の諸手続も了して工事を竣功し昭和二十五年八月十一日右工事につき被告の検査を受けて同工事の被告に対する引渡を完了したものであることが認められる。右認定を左右する証拠は他にない。而して原告は昭和二十五年八月七日訴外岩城工業株式会社より本件工事代金三十八万二千円を譲受け、同会社は同日付内容証明郵便を以て被告日本国有鉄道の金沢鉄道管理局長に対して右債権譲渡の通知を為し同通知は同局長に到着したと主張するにつき按ずるに、証人長谷川嘉隆、同小津新一の証言により真正に成立したものと認める甲第一乃至第二号証(本各証は当時訴外会社の専務取締役長谷川嘉隆が岩城社長名義で作成したのであるが其の頃社長は行方不明であつた)及び証人長谷川嘉隆、同小津新一の証言によれば、右原告主張の事実は認められるところであるけれども参加人は其の成立を認め居り原告は不知と答えて居るが証人市村厳の証言により真正に成立したと認める乙第一号証の一(第十条の記載)によれば「乙(岩城工業)は甲(名古屋鉄道局長)の承諾がなかつたら本契約より生ずる債権を譲渡することはできない」と定めてあるが原告の立証を以てしては甲第一号証作成当時の昭和二十五年八月七日に右債権譲渡につき被告の承諾があつた事実は何等認められない。従つて原告は債権の譲渡を被告に対抗出来ないか怎うかを考えて見ると参加人との間に成立に争いあるも(被告は認める)証人岩城正の証言により真正に成立したと認める甲第三号証及び証人桜井保太郎、同小津新一、同岩城正の証言によれば、原告は訴外岩城工業株式会社に金融を与えるにあたり本件工事代金債権を其の担保とすることになり訴外会社は原告が直接工事代金を被告から取立てること、原告は取立てた弁済金を自己の貸金の弁済に充当することを約し、其の方法として右訴外会社より原告に対し代金債権の受領の委任状を作成し該委任状(甲第三号証)は被告に提示して被告より委任の事実を了知したる旨の認証を受けたもので斯る方法は委任受領と称し債務者(本件に於ては被告)が信用ある場合には有力な債権の担保の方法として当時一般に用いられて居り、原告は以前より訴外右会社から名古屋電気通信局等の工事請負代金につき受領委任の委任状の交付を受け之を担保にして同会社に金融し其の回収も順調に進んでいた事実が認められる処であるが、この委任受領は債権者と債務者(原告と岩城工業)との間の契約として全く債権質と同様な法律効果を生ずるもので只だ第三債務者(被告)に対しては債権の取立委任をした旨を通知する形式を採る点に多少の差異があるに過ぎず其の本質は債権質に極めて類似した取立権のある一種の無名契約若しくは債権質に準ずる性質を有する債権担保の目的のためにする契約と解するを至当とするところである。斯くの如き債務の担保又は弁済の目的を以てする債務取立の委任契約或は金銭受領の委任が受領金銭を以て受任者に対する債務の弁済に充つる趣旨を以てなされたるときは委任者(岩城工業会社)の一方のみにて解除出来ない性質をも有することは勿論である。然して右委任受領を証する甲第三号証には昭和二十五年二月二十八日付を以て「名古屋鉄道局経理部長小原大」の「前記委任状を受理したる事を証明する」旨の証明がなされているがこの証明の性質につき考究するに、証人市村厳の証言によれば終戦後銀行が受領委任の形で請負工事代金を請求するようになつたがこれは終戦後金融面が逼迫したので各官庁が協議の上銀行が委任受領の手続を組入れて委任受領の形式で銀行が融資をすることを法律的に認め、以て中小企業の金融を援助することを申合せた事実が認められるが、甲第三号証に与えた「小原大」の右証明は被告たる日本国有鉄道側に於て右の申合に基き銀行の中小企業に対する金融を援助するために慣行的に債務担保のためにする委任受領に承認を与えたものなること然も被告日本国有鉄道の名古屋鉄道局に於ては、右承認に当つては極めて協力的であつたことが認められる。之を要するに原告と訴外岩城工業会社との間には本件工事代金債権を以て右両者間の貸金債権の担保とし債権質と同様の法律効果を発生せしめる契約あり、被告も右担保の趣旨を了解し原告の工事代金受領方請求あれば之に支払うべきことを承諾した趣旨を表示したのが「委任状を受理したことを証明する」との真の文意と解せられるのであつて原告は債権質を設定した場合は自己自身債権の取立てを為し得るは勿論給付訴訟の当事者ともなり得るのであつて本件の担保契約を殆んど債権質に類似する無名契約と解しても亦給付訴訟を当事者として提起しても単純な委任契約の受任者(非弁護士)が訴を提起する場合と異なり許さるべきものと解すべきであるが、原告は前叙の様に岩城工業会社より債権を譲受ける契約をしたもので右の様な委任受領(担保契約)と債権の譲渡とは債務者である被告にとつては其の利益に何等重大な影響がないし原告は既に委任受領に付数回被告(信用ある第三債務者としての)の承認を得て居るところから工事代金債権に付譲渡禁止の特約の有無に付特別の注意を払わず全く知らなかつたとしても自然のことと考えられるのであり、被告は特別の承諾を得ざる譲渡として之を否認することは出来ないと謂わねばならない。然れば参加人が訴外岩城工業との間に本件工事の下請契約を締結したのは証人米沢外秋の証言により真正に成立したものと認める丙第一号証及び右証人の証言によれば昭和二十五年三月十五日なることが認められるが、参加人は本件工事の下請契約を実施するに当り被告側の承認を得ている事実は証人池田良一、同会田信吉の各証言及び参加人代表者米沢精三の訊問の結果により真正に成立したと認める丙第九号証により認められるが、この承認は乙第一号証の一の第十条における「乙(岩城工業)は甲(被告)の承諾がなかつたら本契約の履行を第三者に委任することができない」旨の所謂第三者の工事履行の禁止に対するもの即ち単に参加人が下請業者として実際に工事を実施する点についての承認と目すべきで、同条後段の「乙は甲の承諾がなかつたら本契約より生ずる債権を譲渡することはできない」旨の所謂債権譲渡に対する点をも包含する承認と言うことは到底出来ない。故に参加人は実際に本件工事を施行したけれども直接被告に対し本件工事代金債権の請求権を有せず、更に又訴外岩城工業に代位して被告に本件工事代金債権を請求し得ないことは本件下請負契約当時、既に訴外岩城工業が本件工事代金を債務担保のためにする委任受領の形にて原告に担保に入れ、且つ之を訴外岩城工業が一方的に解約し得ないことの前示認定よりすれば明白である。更に参加人は訴外伊藤勘一が本件工事代金を訴外岩城工業より譲受け、次いで参加人に譲渡したりと主張するが其の譲渡にあたつては何れも被告の承諾を得たる事実が認められないから被告及び第三者たる原告に何等対抗し得ないものと謂わねばならない。被告は債権者を確知出来ず供託したと抗弁するが前段説示の様に被告は工事代金債権の担保差入れを了解し原告に代金支払を承諾する趣旨の認証をし、次いで債権譲渡の通知(岩城工業より原告への譲渡)を受領し居り他面岩城工業より参加人への譲渡に付承諾を与えていない以上右認証の趣旨を守り自ら代金を何れに支払うべきかは明らかな訳であつて過失なく債権者を確知出来ない場合と謂うことは出来ない。従つて供託のときより債務を免れることは出来ないから債務の履行期以後遅延利息の支払をなすべき義務あり、被告は本件債権の履行期限について抗弁するにつき按ずるに参加人は其の成立を認めて被告が不知と答えて居るけれども、証人岩城正の証言により真正に成立したものと認める乙第一号証の二の第九条第一項によれば「請負金額は工事が全部完成し甲(被告)の検査終了後乙(岩城工業)による適法な支払請求書を金沢鉄道管理局において受領した日から四十日以内に支払うものとする」旨の規定があることが認められると共に、原告が其の成立を認めて居る乙第二号証により支払請求書が金沢鉄道管理局に提出されたのは昭和二十五年十月十九日であることが認められる故に被告は右期間を経過しない限りは履行遅滞とはならないことは明白である。他に右認定を左右するに足る証拠はない。

以上の事実を基礎とすれば被告は原告に対し金三十八万二千円及び之に対し昭和二十五年十一月三十日以降年五分の割合による金員を附加して支払う義務あるものというべきである。故に其の限度に於て原告の請求を正当として認容し、其の余の請求並びに参加人の請求は失当として之を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条、第九十四条、仮執行の宣言につき同第百九十六条を適用し主文の通り判決した。

(裁判官 北野孝一)

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