大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

金沢地方裁判所 昭和25年(ワ)99号 判決

原告 株式会社田村組

被告 奥村被服株式会社 外四名

一、主  文

被告奥村被服株式会社と被告奥村知介との間に為された別紙<省略>第一号目録建物の所有権譲渡行為は之れを取消す。

被告奥村知介は第一号目録物件に関する金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五六号所有権保存登記の抹消登記手続を為さなければならない。

被告奥村被服株式会社と被告奥村知介との間に為された別紙第二号目録の土地の所有権移転行為は之れを取消す。

被告奥村知介は右物件に関する金沢地方法務局昭和二十五年二月十三日受付第一一五〇号所有権移転登記の抹消登記手続をしなければならない。

被告復興金融金庫は第一号目録の物件に付為された金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五七号抵当権設定登記(第一番)の抹消登記手続を為さなければならない。

被告日本勧業銀行は第一号目録物件に付為された金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五八号根抵当権設定登記(第二番)の抹消登記手続を為さなければならない。

被告兼松株式会社は第一号目録及び第二号目録の各物件に付為された金沢地方法務局昭和二十五年二月二十三日受付第一九一二号抵当権設定登記(第三番)の抹消登記手続をしなければならない。

原告の被告奥村被服株式会社に対する請求及び被告復興金融金庫に対する請求趣旨第五、第七、第八の各請求、被告日本勧業銀行に対する請求趣旨第九、第十一、第十二の各請求、被告兼松株式会社に対する請求趣旨第十三の請求は何れも之れを棄却する。

訴訟費用は原告と被告奥村被服株式会社との間に生じた分は原告の負担とし、原告と被告奥村知介との間に生じた分は右被告の負担とし、原告と被告復興金融金庫との間に生じた分は之れを二分し夫々其の一宛を負担すべく、原告と被告日本勧業銀行との間に生じた分は之れを二分し夫々其の一宛を負担すべく、原告と被告兼松株式会社との間に生じた分は之れを三分し其の一を原告の負担とし、其の二を右被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は請求趣旨として、

(一)  被告奥村被服株式会社と被告知介との間に為した別紙第一号目録記載の物件に関する所有権譲渡行為は之れを取消す。

(二)  被告知介は別紙第一号目録記載の物件に関する金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五六号所有権保存登記の抹消登記手続をしなければならない。

(三)  前記被告会社と被告知介との間に為した別紙第二号目録記載の物件に関する昭和二十五年二月十三日付売買契約は之れを取消す。

(四)  被告知介は前項の物件に関する金沢地方法務局昭和二十五年二月十三日受付第一一五〇号の売買に因る所有権移転登記の抹消登記手続をしなければならない。

(五)  被告復興金融金庫と被告奥村被服株式会社との間に別紙第一号目録記載の物件に付昭和二十四年四月十一日付にて為した抵当権設定契約(被担保債権の金額二百万円弁済期同年六月及七月各十日金十五万円宛同年八月より昭和二十五年五月迄毎月十日各十七万円宛分割弁済利息年一割六厘とし一般金融状勢に依り弁済方法を変更し得べく分割弁済金の支払を遅滞するときは日歩四銭の損害金を附する特約あり)を取消す。

(六)  被告復興金融金庫は前項の契約に基き同項の物件に付為した金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五七号の第一番抵当権設定登記の抹消登記手続を為さなければならない。

(七)  被告復興金融金庫と被告奥村被服株式会社との間に別紙第二号目録記載の物件に付昭和二十五年二月十一日付で為した抵当権設定契約(被担保債権は第五項掲記のものと同一)は之れを取消す。

(八)  被告復興金融金庫は前項の物件に付前項の契約に基き為した金沢地方法務局昭和二十五年二月十三日受付第一一四八号の第一番抵当権設定登記の抹消登記手続をしなければならない。

(九)  被告日本勧業銀行と被告奥村被服株式会社との間に別紙第一号目録記載物件に付昭和二十五年二月八日付で為した根抵当権設定契約(被担保債権は昭和二十四年八月三日付で為された手形割引契約債権の限度金五百万円利息百円に付一日金三銭二厘以内遅延利息日歩六銭)は之れを取消す。

(一〇)  被告日本勧業銀行は前項の契約に因り前項の物件に付為された金沢地方法務局昭和二十五年二月八日受付第九五八号の第二番根抵当権設定登記の抹消登記手続をしなければならない。

(一一)  被告日本勧業銀行と被告奥村被服株式会社との間に別紙第二号記載の物件に付昭和二十五年二月十一日付で為した根抵当権設定契約(被担保債権は第九項掲記のものと同一)は之れを取消す。

(一二)  被告日本勧業銀行は前項の契約に基き前項の物件に付為した金沢地方法務局昭和二十五年二月十三日受付第一一四九号の第二番根抵当権設定登記の抹消登記手続を為さなければならない。

(一三)  被告兼松株式会社と被告奥村被服株式会社との間に別紙第一及第二号目録記載の物件に付昭和二十五年二月十七日付で為した抵当権設定契約(被担保債権は同日付消費貸借契約に依る金額八百三十四万九千八百二十六円二十銭弁済期定めず無利息なる債権)は之れを取消す。

(一四)  被告兼松株式会社は前項の契約に因り前項の物件に付為した金沢地方法務局昭和二十五年二月二十三日受付第一九一二号の第三番抵当権設定登記の抹消登記手続を為さなければならない。

(一五)  訴訟費用は被告等の負担とする。

との判決を求め、

(請求の原因)として、

(一)  原告は土木建築の請負を営業とする会社であるが、昭和二十四年三月二十五日被告奥村被服株式会社との間に其の所有の別紙第二号目録記載の土地の上に、別紙第一号目録記載の建物を建築する請負契約を締結し、本工事は代金二百七十万円とし附帯の増工事は代金四十万四千三百二十円とし、竣工引渡期日迄に代金を完済すべく約定し、同年四月五日着工し本工事は同年八月三日増工事は同年八月二十日及九月五日に竣工し夫々引渡を完了した。然るに右被告会社は同年七月十一日迄に合計金百七十万円を支払つたが、引渡日に於て残代金の支払を為さず、再三督促の結果昭和二十五年三月七日漸く金四十万円の支払を為し、同日現在に於て原告は請負代金の残額と利息とを合計し金百五万二千九百四十七円五十三銭の債権を有し、原告は右債権の請求訴訟を提起し、昭和二十六年三月二十日勝訴の判決を受け右債権は既に確定した。而して右被告会社は原告の他にも尚合計一千万円以上の負債あり、昭和二十四年秋頃以来各債権者より債務支払の督促を受けて居たものである。

(二)  右の様な状態に於て被告奥村被服株式会社は別紙第一号目録記載の建物が前示請負契約に基き建築され自己の所有であり、原告は之れに先取特権を有し其の登記を為すべき約束もあつたので、先ず自己の所有権保存登記を為すべきに拘らず、会社の取締役である被告奥村知介の所有名義となす為昭和二十五年二月八日頃に至り急遽同被告に所有権譲渡の契約を為し、請求趣旨第二掲記の様な登記を為し又別紙第二号目録記載の土地も右被告会社の所有であり其の旨の所有権の登記もあつたのであるが、昭和二十五年二月十三日頃被告知介に売買する旨の契約を為し、之れを原因として請求趣旨第四掲記の様な登記を為した。

(三)  被告奥村被服株式会社は被告復興金融金庫との間に請求趣旨第五第七項掲記の債権ありとして、之れを被担保債権として夫々同項記載の様な抵当権設定契約を締結した上請求趣旨第六第八項記載の様な抵当権設定登記を為した。

(四)  被告奥村被服株式会社は被告日本勧業銀行との間に請求趣旨第九第十一項記載の債権ありとして、之れを被担保債権として夫々同項記載の様な根抵当権設定契約を為し、之に基き請求趣旨第十第十二項記載の様な登記を為した。

(五)  次に被告奥村被服株式会社は被告兼松株式会社との間に於て、請求趣旨第十三項掲記の債務ありとし之れを被担保債権として同項掲記の様な抵当権設定契約を締結して之れを原因として請求趣旨第十四項記載の様な抵当権設定登記を為した。

(六)  然し乍ら被告復興金融金庫の前示(三)掲記(請求趣旨第五、七)の抵当権設定契約は昭和二十四年四月十一日付不動産抵当権金銭消費貸借証書(丙第二号証)中に包含せられるものであるが、同契約書の日付の当時は原告は建物の工事に着手した直後で未だ建物は存在して居らないから、契約書に建物が現存せる様に記載せられおるのは後に書入れたものと見る外なく、尠くも当時としては抵当権設定の予約を想像しうるに過ぎない、又被告勧業銀行の前示(四)掲記(請求趣旨第九、十一)抵当権設定契約も昭和二十四年八月三日頃の手形割引契約証書(乙第二号証)にも別紙第一、二号目録記載の土地建物は記載せられて居ない。従つて被告復興金融金庫、被告日本勧業銀行の抵当権設定登記の原因である具体的の抵当権設定の法律行為は証書の日付如何に拘らず孰れも登記申請の日に接着した直前に為されたものと謂うべきである。

(七)  而して被告復興金融金庫、被告日本勧業銀行、被告兼松株式会社は別紙第一、二号目録記載の物件の外被告奥村被服株式会社の代表取締役奥村浩造及常務取締役である被告奥村知介の個人所有の名義の土地及建物をも債務の共同担保に差入れしめ何れも抵当権設定登記を為して居るのみでなく、右被告会社所有と看做すべき機械器具類も、昭和二十五年二月六日付の公正証書及同年一月二十四日付工場抵当法に依る登記申請に依り、被告日本勧業銀行に所有権の移転又は抵当権設定登記を為し、遂に被告奥村被服株式会社の財産として他の債権者の債務の弁済に供すべきものは何物も存しない状態になつて居る。右被告会社の責任者である奥村浩造及奥村知介は昭和二十四年秋以来債権者の請求を受けるや、被告日本勧業銀行金沢支店の当時の支店長である志田了介と協議し、又右志田了介は被告奥村被服株式会社の振出手形の不渡の状態は昭和二十四年十月頃より知り財産状態の悪化を知りたるものであるが、同人は被告復興金融金庫の業務代行をして居た関係から互いに相い謀り遂に右被告金庫に第一番の抵当権、被告銀行に第二番の抵当権、被告兼松会社に第三番の抵当権を設定したもので右は原告其の他の債権者を詐害する意思のあつたことは極めて明白である。被告奥村被服株式会社と被告知介間の行為の詐害行為であることは多言を要しないところである。

仍て原告は茲に詐害行為として請求趣旨第一、三、五、七、九、十一、十三項の各記載の行為を取消し之れに基く登記の抹消を求める為めに本訴に及んだと述べた。<立証省略>

被告等は何れも原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として各被告は夫々次の通り述べた。

(被告奥村被服株式会社の答弁)

原告が土木建築の請負を営業とする会社であり、被告会社との間に別紙第一号目録記載の建物の建築請負契約をしたこと、右請負代金の内に合計金百七十万円を支払い他に四十万円を支払つたこと、及原告主張の物件に付其の主張の様な各登記を為されて居ることは孰れも之れを認めるが其の余の主張事実は全部争う。被告会社は相当の資金を有し毫も債権者を詐害する行為をしたことは無いと述べた。

(被告奥村知介の答弁)

原告会社が土木建築請負業を営む会社であり、昭和二十四年三月二十五日被告奥村被服株式会社との間に原告主張の建物の建築請負契約を為したことは認めるが、其の請負代金の支払期に関する原告の主張は争う。又原告は建物に付先取特権を有するものではない。別紙第二号目録記載の土地は被告知介に於て他より買入れたもので被告奥村被服株式会社の所有物ではないが、建物の建築許可を得る便宜上一時右被告会社の所有名義としたに過ぎないものである。其の後真実の所有者である被告知介の名義に復帰しても何等詐害行為となるものではない。尚右被告会社には他に十分の資産あり原告主張の行為は何等債権者を詐害するものでなく、仮りに然らずとするも債権者の取消権は必要な限度に於てのみ行使すべきものであるが、原告主張に依るも其の債権は金百五万二千余円に過ぎず、然るに見積価格三百五十万円に上る取消を求むるは必要な限度を超ゆるものである。尚原告主張の各物件に付其の主張の様な登記の為されて居ることは総べて之れを認める。然し被告復興金融金庫に対しては昭和二十四年四月十一日付の金銭消費貸借証書に依り担保差入の約あり、右は昭和二十三年秋頃より約定せられ居りたるもの、又被告日本勧業銀行とは昭和十八年夏頃より昭和二十三年十二月末迄に既に多額の負債あり、被告兼松株式会社にも昭和二十四年九月迄に取引上の残代金八百三十四万九千余円あり、其の弁済の猶予を得る為に担保を差入れた様な事情にあるが何れも被告奥村被服株式会社には十分の資力あり詐害行為とならず、又被告知介は其の個人の財産を被告奥村会社に提供して居り第一号目録の建物の如きも同被告の個人名義で建築許可を申請すべきを只便宜上被告会社の名義としたに過ぎぬものであると述べた。

(被告株式会社日本勧業銀行の答弁)

原告主張の請求原因(一)の事実は不知である、仮りに原告が被告奥村被服株式会社との間に請負契約あり、請負代金債権に付先取特権を有するとするも登記がないから被告銀行に対抗することは出来ない。請求原因(二)(三)(五)に付同所に掲記する様な登記の存することは認めるが其の余の事実は全部之れを争う。請求原因(七)に付同記載の様に本件以外の物件に付抵当権を設定し又は担保の為信託的譲渡をした点は認めるが其の余の点は争う。請求原因(四)に付きては同所記載の様な被担保債権あり抵当権設定せられ登記の存することは之れを認める。然し右債権は既に昭和十八年頃より貸越した債権であり第二号目録の抵当権設定登記は被告知介に所有権移転登記の為される以前に為されたものである。又別紙第一号目録記載の建物は被告知介名義で建築許可を申請し、同人が請負契約を為すべきを許可申請手続の便宜上被告奥村被服株式会社名義で建築許可申請請負契約をした実情である。

惟うに債権者の取消権は訴を提起した債権者一人の利益の為に訴求し得べきものでなく総債権者の利益の為に訴求すべきものである、然るに本訴は原告一人の為に請求して居るのは失当である。又債権者の取消権は債権者を詐害する意思を以て為した法律行為を目的とすべきものであつて、其の意思の有無は行為の当時を標準として決すべく登記の当時は標準とすべきでない。然るに被告銀行より被告奥村被服株式会社が金融を受けたのは第二次の国警服の注文を受ける為の営業資金を得る為で毫も当事者双方に債権者を詐害する意思なきのみならず、右金融に本件の担保を差入れることは昭和二十四年四月初めに既に約束されて居るもので、登記の手続が完備せぬ為に登記は遅れたが、右は単に被告奥村被服株式会社が其の契約上の義務を履践したもので自己の財産に対する正当の処分権を行使したに過ぎず、詐害行為と謂うことは出来ない。右被告会社が国警服の注文を予定通り受けたならば営業は順調に進み毫も債務の弁済に支障なかつたものである。尚仮りに右主張理由なしとするも原告の請求は其の主張の債権額の限度を超過する過大な請求で失当であると述べた。

(被告復興金融金庫の答弁)

請求原因(一)の事実は不知である。請求原因(二)乃至(五)項記載の各登記の存する事実は認める、被告金庫が別紙第二号目録記載の土地に抵当権の設定登記をしたのは右土地の所有名義が被告知介に移される以前のことである。請求原因(七)項記載の本件以外の物件を担保としたとの事実のみは認める。

被告復興金融金庫に抵当権を設定した行為は客観的に詐害行為でもなく主観的に詐害の意思もないものである。被告奥村被服株式会社は被告金庫に対し工場建築機械器具の整備資金として金借の申入れあり、昭和二十四年四月十一日金二百万円を貸付け土地建物を担保に差入れることを確約したもので(金融機関は担保契約なくして貸付ける様なことは取引の実情に照しないことである)抵当権設定登記の手続も同年八月頃から着手したが、申請手続の書類に不備あり、其の調整の為遅延したもので登記自体は単に当初の契約を履践したものに過ぎない。又被告金庫としては登記のときも被告奥村被服株式会社が原告其の他に負債のあることは知らなかつた。被告金庫の代理をして居た被告日本勧業銀行は被告奥村被服株式会社の売掛代金の弁済を同会社に代り受領して居たのであるが、右会社が負債の支払不能で経営が危険状態にあることを知つて居たならば当然受領金を自己の債権の弁済に充当する筈であるが、斯様なことを少しも為さなかつたのは詐害の意思のなかつたことの証拠である。当時被告奥村被服株式会社は多額の負債を秘して被告日本勧業銀行に登記の後も融資を申出て居た実情である。右被告銀行の金沢支店長であつた志田了介が、被告奥村被服株式会社に多額の負債のあることを知つたのは昭和二十五年二月二十一日被告兼松株式会社に援助の懇請に行く直前であつて当時に於ても第三次の国警服の注文を見込通りに受け且被告兼松株式会社の援助が実現すれば多大の収益あり、負債を完済し得ることを信じて居たもので被告奥村被服株式会社も被告金庫の代理人である被告銀行も共に原告其の他の債権者を害するとは全く予想もしなかつた。被告奥村被服株式会社が振出した手形が不渡となつたのも本件の登記以後のことである。原告の主張に依れば被告奥村被服株式会社に対する請負代金の約三分の二の弁済を受け居るのであるが被告金庫は未だ自己の債権の弁済を一銭も受け居らず、衡平の原則より見るも被告金庫の抵当権設定行為を取消すのは失当である。尚原告の主張に依れば原告の債権は金百五万二千余円に過ぎない、債権者取消権の行使は必要の限度に停むべきで本訴の様な請求は必要限度を超過して失当であると述べた。

(被告兼松株式会社の答弁)

請求原因(一)の事実は不知である、仮りに原告主張の事実があつたとしても先取特権には登記がないから被告に対抗出来ない。請求原因(二)乃至(五)記載の各登記の存する事実及(七)記載の本件以外の物件に対する共同担保の事実は之れを認める。然し被告兼松株式会社には毫も原告其の他債権者を害する意思がなかつたものである。被告兼松株式会社は被告奥村被服株式会社に対し昭和二十四年三月以降九月迄の間に梳毛サージ、紡毛サージ等を売渡し其の代金は合計千十九万九千四十一円九十銭に達したが、右被告は内金百八十四万九千二百十五円七十銭を支払つたのみで、残代金八百三十四万九千八百二十六円二十銭の支払をしないので、数次に亘り督促交渉の結果昭和二十五年二月十七日右被告会社の取締役である、奥村浩造及被告知介は連帯して右債務金額の重畳的引受をなし、右債務を担保する為同年二月二十三日原告主張の抵当権の設定及登記を為したものである。当時被告奥村被服株式会社には債権者として被告復興金融金庫及被告日本勧業銀行のあつたことは知つて居たが、原告其の他に負債のあることは全然知らなかつたものである。別紙第一、二号目録記載の物件には第一、二番の抵当権として夫々原告主張の様な抵当権を設定し其の登記も為され居り、而も右不動産の価格は原告の見積に依れば金三百五十万円に過ぎず第一、二番の抵当債務の元利金の弁済に充当されれば、被告兼松株式会社の第三番抵当権の弁済に充当すべき何等の余剰も生じない。従つて被告兼松株式会社の抵当権設定行為は何等原告等債権者を詐害する余地がない。而かも被告兼松株式会社は其の有する債権額に対し、僅かに一割八分の一部弁済を受けたに過ぎないのに対し、原告の主張に依れば原告は金二百七十万円の工事代金に金百七十万円の内入あり、金四十万円余の増工事代金に対し昭和二十五年三月金四十万円の内入あり、実に八割六分の一部弁済を受けて居るものである。斯る状態の下に於て前記の余剰価値の少ない不動産に抵当権の設定を受けても毫も原告を詐害したと謂うべきでない。被告兼松株式会社は更らに金五百万円の現金弁済を受けて始めて原告と同率の入金率となるのである。尚原告主張の請負代金は「支払を遅れても良い」との諒解があつたものである。然るに被告会社の売却した商品は確実な方面からの注文に応ずる材料で代金は確実に支払うとの申込みを信じて多量の商品を売渡したもので、右事情を綜合すれば被告兼松の抵当権設定の行為は詐害行為と謂うべきでないと述べた。<立証省略>

三、理  由

先ず別紙第一号目録記載の建物について考えるに該建物は昭和二十四年三月頃原告と被告奥村被服株式会社との間に代金二百七十万円(増工事代金四十万余円)で請負契約を結び該契約に基き原告に於て建築し昭和二十四年八月乃至九月頃右被告会社に引渡したもので(右事実は原告本人の供述、甲第二号証請負契約書で認められる)被告奥村会社の所有に属したもので被告奥村知介本人訊問の結果に依つても右の認定を覆えすことは出来ない。然るに右建物に付被告知介の所有名義に原告主張の様な所有権保存登記の為されて居ることは当事者間に争いのないところであり、被告奥村会社も亦自己の所有物に付斯かる登記の存するに対し何等異存を述べないところを見ると被告奥村会社と被告知介との間に会社所有の建物を被告知介の所有に移すことに付諒解合意(即ち原告の主張の所有権譲渡契約)が成立したものと認むる他なく被告奥村会社代表者浩造本人、被告奥村知介本人及び被告日本勧業銀行代表者志田了介本人(第一回)の各供述に徴すると右譲渡については何等対価の支払われたものでなく、会社は重役個人の商店と同様に密接に利益が共通し、被告知介等の重役は会社の金融の都合に依つて自己個人の財産を会社に提供する代り、会社の財産を自己の所有に移すことも安易に考え実行して居たもので本件建物も被告復興金融金庫、被告日本勧業銀行等に抵当権を設定する便宜上から無償で譲渡契約を為したものと認められる。而してその譲渡契約の為された時期即ち所有権移転の時期は詐害行為の成否に付重要であるが丙第二号証の作成日付(昭和二十四年四月十一日)の当時は未だ建物の建築請負契約締結の頃の建物は未だ実在せず乙第五号証の三(証人本田正の証言で其の成立を認む)に依れば未だ昭和二十五年一月頃は被告奥村会社の所有物として取扱われて居るので丙第二号証は全面的に日付を遡及して作つた偽作文書とは認めないが少くも建物の表示は後日挿入補正したもので、従つて前記志田了介の供述の通り登記に当り急ぎ被告知介名義とする為譲渡契約の為されたもので、請求趣旨第二の登記の直前即ち昭和二十五年二月頃締結せられたものと認めるのが相当である。

次に第二号目録掲記の土地に付考えるに前示の各証拠(特に被告代表者奥村浩造本人の供述)に甲第一号証を綜合すれば本来被告奥村会社の所有に属して居たのであるが、前叙の通りの被告会社と重役との関係から被告知介の所有名義と為さんとの考えから、被告奥村会社より被告知介に無償譲渡せられたもので其の時期は請求趣旨第四の登記の直前即ち昭和二十五年二月頃と認むるのが相当で被告奥村知介本人の「代金を支払つた有償の売買である」との趣旨の供述は措信出来ない。

さて右二個の譲渡行為は会社と重役の関係や考え方の如何に拘わらず、会社に対してだけ債権を持つて居る所謂会社債権者としては重役個人の財産には執行出来なくなるから、譲渡行為の当時に於ける会社の資産状態如何に依つては会社債権者を詐害するに至ること極めて明白であるから、先ず被告奥村会社の資産状態を調査すると、

当時被告奥村会社は原告に対して約百万余円の請負代金残債務あり数度の督促を受け居り、訴外大東織物株式会社、三信株式会社等には多額の負債あり更らに多額の税金の滞納あるのみならず被告金庫、被告銀行、被告兼松会社にも原告主張の通りの多額の負債あり、被告奥村会社は到底之れを弁済する資力なく、而かも会社財産で執行の目的物となり得る様なものは総べて右被告等三名の担保に差入れ殆んど破産に近き状態にあつたことは原被告挙示の全証拠を綜合すれば明かなところであるから、前示譲渡行為(被告奥村会社より被告知介への)は原告其の他会社債権者を詐害する行為で被告奥村会社は勿論被告知介(受益者)も亦会社重役として会社の資産状態を熟知し、従つて詐害の事実を知つて居たこと明白で其の取消を求める原告の請求趣旨第一、第三は之れを認容すべきものである。

詐害行為に続いて転得者がある場合に於ても其の転得者が所有権の移転を受けたのでなく、抵当権の設定を受けたに止まるときには転得者が善意であるときでも抵当権の効力を存続せしめ、其の登記を保存した侭(抵当債務を弁済して剰余なきことが絶対的終局的に証明されざる限り)所有権を受益者より返還さすべきであるから、転得者の善意悪意を問わず詐害行為の取消を許すべきである。本件に於ては後段に於て詳説する様に転得者は総べて悪意と認むべきであるから、受益者たる被告知介より別紙第一、二号目録不動産を返還し原告等債権者をして不動産に対する執行を為すことを容易ならしめる為の登記を抹消する方法に依るも利益を害せられる登記名義人はないから請求趣旨第二、四項の請求も亦之れを認容すべきものである。

次に請求趣旨第七、八項、第十一、十二項の第二号目録不動産に付被告金庫、被告銀行の為した抵当権設定行為を考察する。

証人小倉外次郎(第一、二回)志田了介(第一回は本人訊問、第二回は証人訊問)被告奥村会社代表者奥村浩造本人、被告奥村知介本人の各証言及び供述並乙第一号乃至四号証、同第五号証の一乃至四、丙第一号乃至第七号証(右各書証は前記証言及び供述に証人本田正の証言を綜合して成立を認め得る)を調べると次の事実が認定出来る。

即ち被告金融金庫は被告奥村会社、被告知介との交渉は総べて其の代理店たる被告日本勧業銀行を代理人として為したもので、従つて其の善意悪意等も右被告銀行の善意悪意に依り決すべきであること、及び被告奥村会社は其の営業設備資金として被告金庫より金二百万円の融資を受けるに付其の工場等を担保に差入れる話は昭和二十四年二月頃以前(丙第一号証)よりあり、他面被告奥村会社は昭和二十四年八月三日頃被告勧業銀行よりも営業資金として金八百万円の融資を受け、之れに対し被告奥村会社所有の財産は勿論重役である被告知介所有の土地建物等も担保に差入れることを契約し居ること(乙第一、二号証)を認め得ると共に右乙第一号証に依れば会社及び重役の不動産は被告金庫の担保に差入れ、其の次順位に被告銀行の担保とする旨の記載あり、此れに依れば本件土地建物は遅くも昭和二十四年八月三日以前に於て被告金庫に担保差入れる契約のあつたことは明白である。而して此の当時は被告奥村会社は営業の拡張期である本件建物も工場として漸く新築し終らんとする頃であり被告金庫、被告銀行から融資も営業の拡張資金に充てるもので注文と生産は順調に進み居り被告奥村会社は勿論被告金庫、被告銀行(受益者)も亦経理の悪化など考えずして融資に応じたのであるが、確実な金融機関として担保の提供を求めたものに過ぎず、従つて本件第二号目録記載の土地に対する抵当権設定契約は昭和二十四年八月三日頃既に成立して居たが右は何等詐害行為と謂うことは出来ない。被告金庫、被告銀行は被告奥村会社の資産経営を信頼して抵当権設定登記の実行を急がずに居たのであるが、其の後昭和二十四年末より経営は次第に悪化して来ると共に抵当権の設定登記の実行を急ぐ様になつたが、手続は意外に遅れ遂に昭和二十五年二月頃に至り被告奥村会社の資産状態は前叙の通り極悪の状態になつて始めて請求趣旨第八、第十二の通り登記をする様になつたが乙第四号証、丙第三号証は右登記の為作成した書類で、其の日付の昭和二十五年二月に始めて抵当権設定行為が為されたのではなく、設定行為は前叙の通り昭和二十四年八月三日迄に有効に成立して居り、登記は只だ右契約上の義務の履行として為されたに止まるものである。破産の場合と異なり、債務者の財産権上の行為について支配的権能を有しない単なる金銭債権者である原告は第二号目録土地に対する抵当権設定行為を取消すことが出来ないし、其の登記の抹消を請求し得ないことは此れ以上詳細に法律論を述説する必要はないであろう。請求趣旨第七、八項、第十一、十二項の請求は何れも之れを棄却すべきものである。

次に請求趣旨第五、六項及び第九、十項(第一号目録建物に関する)に付審理を進める。

第一号目録建物に付被告金庫及び被告銀行の抵当権設定登記は、被告知介の所有権保存登記日と同日に為されては居るが、先ず保存登記が為されて建物が被告知介の所有名義となつた上で新所有者たる被告知介が担保提供者抵当権設定者となり、登記申請が為されたこと各登記に付きての原告主張の法務局受理番号(甲第一号証、乙第三号証等参照)を見れば明白で、従つて先ず被告奥村会社より被告知介に対する本件建物の前示無償譲渡行為の為された直後、抵当権の登記を為す直前に於て右登記の原因たる抵当権設定の契約が新所有者たる被告知介と被告金庫及び被告銀行との間に締結せられたと認めるべきで、前示建物の無償譲渡行為は詐害行為の実体であり、被告知介は受益者たる地位にあり、被告金庫及び被告銀行は転得者であり、抵当権設定契約は転得行為とも称すべきもので詐害行為の実体をなすものではない。(元来転得行為なるものは仮令無償贈与の様なものでも、其れ自体として見れば債務者の行為でもなく、其の財産に直接には影響ない行為である)若し転得者が悪意であれば転得行為は当然(債権者に対する関係に於て)効力を失うべきもので取消す必要はないのである。

然るに昭和二十四年二月頃の被告奥村会社の資産状態は悪く本件建物の無償譲渡行為は原告等債権者を詐害するものとして取消すべきこと前段説示の通りで転得者たる被告金庫、被告銀行が転得の頃右事実を知らず善意であつたとのことは被告の全立証に依るも到底証明するに由なく却つて原告本人の供述、被告代表者志田了介本人(第一回)の供述に依れば登記手続を急ぐため無償にて譲渡することを知つて居た悪意の転得者であることを窺知するに十分であるから、本件詐害行為の取消の効果として転得者の抵当権設定行為は失効し、其の登記は抹消すべきもので請求趣旨第六、第十は之れを認容すべきものである。然し請求原因第五及び第九記載の被告奥村会社を当事者とする様な法律行為は存在せず、仮りに之れを被告知介の誤記と解しても斯かる行為は取消すことを得ず、又取消を必要とせず当然に失効するものであること前示の通りであるから請求趣旨第五、第九の請求は之れを棄却すべきものである。

茲に注意すべきは第二号目録の土地の抵当権設定登記と第一号目録の建物の抵当権設定登記とは同一の債権を担保する為殆んど同様の事情に基き設定され、同日に登記されたものであるに拘わらず只だ登記手続の多少の前後と差異に基き一を有効とし一を無効とすることは法律の形式論理を楽しむとの感を起し易い。

成る程被告奥村会社は会社所有なると被告知介等重役所有なるとを問わず一切の土地建物に付抵当権を設定すべき旨昭和二十四年八月頃に確約して居り、従つて本件建物は縦令被告知介の所有に移さなくとも被告奥村会社としては抵当権を設定すべき義務あり所有者の誰なるを問わず被告銀行、同金庫の債権の優先弁済の用に供すべき運命にあり、尠くも本件建物の価格中抵当債務の弁済に供すべき限度では被告知介に譲渡した行為は会社一般債権者を詐害すると謂うべきでないし、右譲渡は登記の手続に過ぎないとの観を呈するが右の議論は誤つて居る。原告は本件建物に付請負代金債権を有し、之れを担保する為に先取特権を本件建物の上に有し居り被告金庫の代理人であり、被告銀行の代表者たる地位にあつた志田了介は昭和二十四年十二月末迄の頃には右事実を知つて居り(先取特権成立の点も金融業に経験深き志田は知つて居た筈なり)且原告は被告奥村会社の代金支払の不履行や資産状態の悪化に恐れ担保権を確保する必要を感じ始めて居ることを察知して、自己の有する抵当権は登記しなければ無力であるから(反面登記すれば原告の先取特権を無力化することが出来る)其の登記を急速に実現する必要から先ず建物所有権を被告知介に移し其の保存登記を実現したのであつて、此の保存登記に依り原告の先取特権は既に無力化すると共に被告奥村会社に対する一般債権者も亦本件建物に執行すること不可能になつたのであつて、其の後被告知介との間に抵当権設定契約を締結したり、登記をしたりしたのは被告奥村会社の債権者にとつては毫も関係なく被告知介の債権者に対する優先権確保行為に過ぎない。換言すれば未登記の抵当権者たる銀行が未登記の先取特権者である原告とが相対立して居たとき被告奥村会社は何等法律上の義務がないに拘わらず、本件建物を被告知介に無償譲渡し其の登記を完了して原告の先取特権を失効せしめた点に詐害行為の実体があり、志田了介は譲渡の当時之れを知つて居て登記を急いだのであつて茲に悪意があるのである。第二号目録土地の抵当権と類似の事情にあるに拘わらず取扱を別にするを要する理由は上記の通りである。

次に請求趣旨第十三、第十四に付審究する。

別紙第一、二目録の建物及び土地を被告奥村会社より被告知介に譲渡した行為が債権者を詐害する行為であること前段説明の通りで、右土地及び建物に付原告主張の抵当権設定登記の存することは被告兼松会社の自認するところで抵当権設定の契約は登記の直前に為されたものと認むべきである。被告兼松会社は転得者として右事実を知らなかつたとの証明をしない限り(転得行為自体が債権者を害するか否かは問題でないこと前段説明の通り)右登記を抹消しなければならない立場にあるが、被告の全立証に依るも右事実を証明するに由なく、却つて証人市川義雄、同高豊次、同順安勘蔵の各証言に依れば被告兼松は被告奥村会社の経理状態の悪化を知り居り自己の債権を担保すべき被告奥村会社の資産を調査した筈であることが認められ、本件土地建物が本来会社の財産であるべきことを推測した筈であると察知出来るから、寧ろ悪意の転得者の証明あるに近く到底善意であることの立証責任を尽したと謂うことが出来ないから、被告兼松会社に対し詐害行為取消の効果を及ぼし抵当権は消滅するものと謂うべきで請求趣旨第十四は之れを認容すべきであるが、同第十三は棄却すべきであること既に説明した請求趣旨第五、第九を棄却した理由と同様であるから再記しない。

次に被告兼松会社は原告が其の債権に付一部弁済を受けた比率と、右被告が其の債権に付一部弁済を受けた比率を対照比較して主張して居るが、右は抵当権設定行為が其れ自体として債権者を害しないことの理由と解しないで(抵当権の設定は被告知介の財産価値を減少するのみ)抵当権設定行為を実質的に考察して詐害行為取消の効果を及ぼすや否やを決すべしとの立法論として解するならば一つの意見として尊重すべきものであるが、現行民法は債務者の行為(被告奥村会社の土地建物譲渡行為)が客観的に債務者の財産を減少せしめる詐害行為である以上斯かる詐害行為を基本として其の上に悪意を以て(正確には善意の証明を為すことが出来ないで)組立てられる転得者の行為は総て失効せしめる趣旨であるから、本件に於て採用することが出来なかつたのである。

最後に請求趣旨第五、第九、第十三の請求を棄却するに拘わらず請求趣旨第六、第十一、第十四の請求を認容するのは原告の主張しない事項に付判決することにならないことを説明しなければならない。

原告代理人は抵当権登記の抹消すべき理由として当該抵当権設定契約を逐一取消すことを要すとの見解(被告知介名義の不動産に名義人に非らざる被告会社が抵当権設定契約をして居るから取消すと謂うのであるとは解せられぬ)から数次の請求趣旨の訂正変更後に於ても依然として債務者(奥村被服会社)の行為を取消す他に受益者たる被告知介(被告奥村会社と摘示はしているが会社は物件の処分権者でなくなつて居る)と転得者との行為を債権者(原告)を詐害するものと主張し其の取消を求めて居る。然し右は原告の法律上の見解で裁判所は之れに拘束されず又採用もしないこと上来の説明を通読すれば明白である。

民事訴訟に於て当事者は権利の保護を求める事項を端的に請求趣旨に表示し、其の理由たる事実関係を単純に純粋に事実として主張すれば其れで十分で其の事実から如何にして請求趣旨に表示の判決請求権があるかの理由となる法条を摘示したり、法律論を述べることは特殊の例外の場合を除き原則としては必要ではない。裁判所は当事者の述べた単純な純粋な事実を或いは選択し或いは切断分離して組立てた上職権を以て一切の法条を調査適用して原告の請求を認容すべき法律上の理由を審査すべきである。事実は純粋であればある程切断分離しても事実たることに変りがないのであつて、只だ観念的要素を混入した不純な事実に付其の趣旨意味に変更なき様に注意すれば良いのである。

詐害行為取消の訴である本訴に於て原告は転得者の抵当権登記を抹消すべしとの請求を請求趣旨第六、第十、第十四に於て明示して居るのである。然して原告代理人の法律上の見解に拘束せられることなく単純純粋な事実上の主張のみに拘束せられ乍らその内に証拠に依り真実と認定出来る事実を選択して組立てるならば、民法第四百二十四条を適用するに必要なる事実は全部認定し得られないことはない。そして右事実に基く法律上の結論として原告は登記の抹消請求権を有することになるから登記抹消の請求を認容しても主張しない事項に付判決したことにはならないのである。

尚被告奥村被服株式会社は縦令同社当事者である法律行為を取消す場合でも被告とする必要のないものであるから同被告に対する請求は棄却すべきである。

大要上来説明の通りであるから主要ならざる争点に付いての説明を省略して主文の通り判決した次第である。

(裁判官 北野孝一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!