金沢地方裁判所 昭和26年(行)8号 判決
原告 大家五郎右ヱ門
被告 石川県
一、主 文
本件訴は之を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事実及び理由
原告は「被告は石川県内浦南部海区南定第五〇号より第五四号迄の漁業権免許申請者の中、えびす漁業生産組合及び鵜川水産漁業組合と称するものが夫々為したる漁業権免許申請を直ちに棄却しなければならない」との判決を求め、その請求原因は「石川県内浦南部海区南定第五〇号より第五四号までの免許申請者中、石川県鳳至郡鵜川町えびす漁業生産組合、同鵜川水産漁業生産組合は水産業協同組合法に違反し同法第百三十一条によつて処罰さるべきものである。然るに石川県はかゝる違法なる申請書を受理し内浦南部海区漁業調整委員は之に免許を与うるの議決をなさんとしている。
原告の再三右は違法なりと主張するも聞入れせず、更に之を正当化せんとして目下組合の設立の認可申請中との事である。
然し漁業法第十一条に基く申請期間は昭和二十六年六月二十日限りと石川県は公示している故に昭和二十六年六月二十日以降に組合設立の認可を経たとしても申請期間経過後に設立した組合であるから免許の申請は出来ないのである。又設立前に漁業生産組合の文字をその名称に用いたる申請書を受理するは違法である。
よつて再三申請書の棄却を請願したるも応ぜざるにより本訴を提起するものである」というにあり、結局被告に対して右漁業権免許申請を受理しないで棄却することを命ずる裁判を求めんとするものであることは請求自体並びに原告本人の審訊の結果によつて明白である。然しながら漁業権に関する免許の許否を決することは行政官庁の権限に属する事項で司法裁判所の権限に属しない。而して其の許否を決するには申請者の謂うところを良く聴き申請の内容を詳細に調べなければならない。原告の謂う所の「申請書の受理」とは即ち申請者の主張を聴く行為に過ぎないのであつて被告は今申請の許否に付考慮中の段階にあるもので従つて原告と被告との間には公法上の法律関係に付争いあり又は利害関係ありと云う段階とは謂うことが出来ない。斯様な段階に於て右申請に付特定の行為を被告に為す様に命ずることは特別の規定のない限り司法裁判所の権限に属しない処で本訴は口頭弁論を開き被告の「認諾するや否や」又は請求原因事実を争うや否やの答弁を求むる要なく不適法として却下するの他ない。原告は被告が申請に対し許否の処分を得た上で其の違法適法に付行政官庁と意見を異にする場合に至つて裁判所に該処分の取消を請求すべきものである。
以上説示の如く本件訴は不適法であり然もその欠缺は到底補正し得る性質のものでないから、口頭弁論を経る迄もなく却下すべきであり、民事訴訟法第二〇二条、第八九条に則り主文の如く判決する。
(裁判官 北野孝一 村上久治 斎藤寿)