金沢家庭裁判所七尾支部 平成元年(家)299号 1991年1月11日
主文
1 被相続人上村元吉の遺産である別紙目録(編略)記載の物件(1)ないし(20)の各土地を次のとおり分割する。
(1) 別紙目録記載の物件(1)ないし(20)の各土地は、申立人上村一夫の取得とする。
(2) 相手方川上圭介、同上村弘及び同林田久子は、いずれも取得分がない。
2 相手方上村弘は、申立人に対し、別紙目録記載の物件(7)の土地についてなされている○○地方法務局○○出張所昭和49年6月13日受付第××××号条件附所有権移転仮登記の抹消登記手続をせよ。
3 手続費用のうち鑑定料800,000円は各自等分の負担とし、その余は各自の負担とする。
相手方3名は、申立人に対し、鑑定料の償還として、各自200,000円ずつを支払え。
理由
1 本件記録によれば、被相続人上村元吉は昭和51年3月15日死亡し、その相続人は申立人上村一夫(4男)、相手方川上圭介(5男)、同上村弘(6男)、同林田久子(3女)の4人であること、遺産としては別紙目録記載の物件(1)ないし(20)の土地及び被相続人の交通事故死亡による損害賠償金があること、特別受益として、被相続人は相手方上村弘が昭和33年11月ころ別紙目録記載物件(21)の土地を他から購入するに際しその購入資金全額を同人に生前贈与したものであるところ、申立人らはその生前贈与の持戻しを請求していることが認められる。この生前贈与は相手方上村弘の生計の資本として贈与されたものであるから、その土地の価額は相続財産に加算される。他には相続人らに特別受益又は寄与分と認めるに足りるものはない。
2 不動産鑑定士の鑑定評価によれば、別紙目録記載の各土地の平成2年10月31日現在の評価額は同目録記載のとおりであり、正当な評価額であると認められる。
本件記録によれば、被相続人死亡による損害賠償金については、昭和51年7月27日に8,842,260円にて示談が成立し、そのうち保険金として7,742,260円が支払われ、次のとおり分配ないし使用されたことが認められる。加害者負担分1,100,000円については、支払の事実関係不明ないし時効消滅のため、相続財産には計上されない。
現金(保険金)の分配ないし使途
川上圭介・・・ 1,000,000円
林田久子・・・ 1,000,000円
上村弘・・・ 1,900,770円
仏壇購入費・・ 2,800,000円
葬儀費用・・・ 1,041,490円
計 7,742,260円
仏壇購入費及び葬儀費用は相続財産に算入せず、上記3名の受領分3,900,770円のみを算入する。なお、香典は葬儀費用及び法要費に全部費消済みである。
3 そこで、各人の相続分を算定する。
土地59,887,700円+現金3,900,770円 = 63,788,470円
63,788,470円÷4人 = 15,947,117円
各人の相続分は15,947,117円となるが、相手方上村弘は、既に別紙目録記載物件(21)の土地18,450,000円に相当する金額及び現金1,900,770円を取得済みであり、相続分を超えているので、もはや取得分はない。
そして、本件記録によれば、相手方川上圭介及び同林田久子は各自の相続分(既に分配済の分を除く。)を全部申立人に無償で譲渡したことが認められるので、既に分配済の現金を除き、残余財産は全部申立人に分配すべきこととなる。
なお、本件記録によれば、別紙目録記載物件(7)の土地には相手方上村弘のため主文掲記の仮登記がなされているが、この登記は被相続人が生前に財産を浪費されるのを防止するため形式的になしたものに過ぎず、実体を伴わない登記であることが認められるので、相手方上村弘は上記登記の抹消登記手続をすべきである。
4 以上のとおりであるから、現在する相続財産である別紙目録記載物件(1)ないし(20)の各土地は申立人に取得させるものとし、相手方上村弘に対しては上記抹消登記手続を命じることとする。
手続費用のうち申立人が予納した鑑定料800,000円は各自等分の負担とし、相手方らにその償還を命じ、その余は各自の負担とするものとする。
よって、主文のとおり審判する。