釧路地方裁判所 昭和39年(ワ)202号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告が本件土地を昭和二五年一二月二日自創法第三条の規定により古沢カメヨから買収しこれを上野力に売渡したことは当事者間に争いがない。自創法第一二条第二項の規定によれば「政府が取得した農地につきその取得の当時賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は地役権があるときは、その取得の時に当該権利を有する者のために従前と同一の条件を以て当該権利が設定されたものとみなす。但し、その権利の存続期間は、従前の権利の残存期間とする。」と定められているが、他方同法第二二条第一項の規定によれば「第三条の規定により買収した農地で第一二条第二項の規定による権利の設定があつたもの及び第一六条第一項の命令で定める農地で賃借権、使用貸借による権利、永小作権、地上権又は地役権の設定されているものにつき同条の規定による売渡があつた場合において、その権利を有する者が当該農地の売渡の相手方でないときは、当該権利は、当該農地の売渡の時期に消滅する。」と定められている。しかして原告が本件土地につきその主張の永小作権の登記を有していたことおよび右登記を被告が抹消したことは当事者に争いがなく、この事実と前記当事者間に争いのない事実ならびに成立に争いのない甲第一、第二号証によれば被告は原告の永小作権の登記につき上記自創法の各規定に従つた措置をとつたこと(買収に伴う永小作権の抹消登記をなし次で自創法第一二条第二項の規定による同一内容の設定登記を経由したうえ売渡に伴う抹消登記を経由)が推認され、これを覆えすに足る証拠はない。そうすると本件土地の買収当時仮に原告が本件土地につき永小作権を有していたとしても、それは本件土地が上野力に売渡されたときに消滅するのであるから、これに伴い被告がその登記を抹消することは適法といわなければならない。もつとも適法な行為であつてもそのため原告が損失を蒙つたとすれば被告はその補償をしなければならないが、その補償がなされていない(この点は被告の自認するところである)との一事によつて本件土地の買収および売渡自体が違法となるとは解されず従つてまた売渡に伴う永小作権の消滅の効果が失われるものではないから、本件永小作権についての登記の抹消を違法と目すべき理由はない。しかして右の補償については同法第二二条第二項以下に規定がおかれているのであるから、原告としては右法条に従つてその補償の請求をなしたうえこれにつき不服があれば司法上の救済を求めるのは格別、登記の抹消を違法であるとして国家賠償を請求するのは失当といわなければならない。(友納治夫)