釧路地方裁判所帯広支部 平成19年(ワ)154号 判決 2009年2月02日
原告
X1
同
X2
法定代理人親権者
X1
原告ら訴訟代理人弁護士
伊藤誠一
同
中島正博
被告
音更町農業協同組合
代表者代表理事
A1
訴訟代理人弁護士
松浦護
同
中島和典
主文
1 被告は,原告X1に対し,4644万1876円及びこれに対する平成17年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告X2に対し,5753万8747円及びこれに対する平成17年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用はこれを10分し,その3を原告らの,その余を被告の負担とする。
5 この判決は第1項及び第2項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告各自に対し,7029万1242円及びこれに対する平成17年5月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,亡A2(以下「亡A2」ということがある。)の相続人である原告らが,被告における過重な業務負担により亡A2をして精神病に罹患させ,自殺に至らしめたのであるから,被告には安全配慮義務違反があると主張して,被告に対し,主位的に民法709条に基づく不法行為責任又は民法715条1項に基づく使用者責任を,予備的に雇用契約上の債務不履行責任を追及して,死亡逸失利益等の損害賠償及び亡A2死亡の日から支払済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提となる事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠によって容易に認められる事実である(証拠によって認定した事実は末尾に証拠を掲記した。その余の事実は争いがない。)。
(1) 原告X1(以下「原告X1」という。)は,亡A2の妻,原告X2(以下「原告X2」という。)は,亡A2の長女である。
(2) 亡A2は,平成6年4月1日,被告に採用され,平成13年4月1日から死亡時まで,被告販売部青果課に所属していた。亡A2は,平成17年4月1日付けで青果課係長に昇格した。
(3) 平成16年から平成17年にかけての青果課の管理職は,次のとおりであった(以下,
を「A4課長」,A5を「A5係長」ということがある。)。(<証拠省略>)
平成16年4月1日現在 課長 A4,係長 A5
平成17年4月1日現在 課長 A4,係長 A2
(4) 被告の職制規程においては,課長は,部長を補佐し,部長の所轄業務を分掌する課の責任者として所属職員を統率して,方針,計画を遂行することを職務とするものとされ,所属職員の活動調整及び服務状況の監督等の職務の遂行につき責任を負い,かつ,その遂行に必要な権限を有するものとされていた。(<証拠省略>)
(5) 亡A2は,平成17年5月15日午前6時ころ,職場であるおとふけ農協青果管理センター(北海道河東郡<以下省略>所在。以下「青果管理センター」という。)敷地内の4号倉庫内で首をつって自殺した。
(6) 原告両名は亡A2の相続人であり,他に亡A2の相続人はいない。
2 争点
(1) 業務起因性
(2) 安全配慮義務違反の有無
(3) 損害及びその額
3 争点に関する当事者の主張(省略)
第3当裁判所の認定事実
前記前提事実に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によって認められる事実を総合すると,次のとおりである(認定に用いた証拠等を末尾に掲記した。)。
1 亡A2の身上経歴・性格
亡A2は,昭和○年○月○日,帯広市で出生し,平成17年5月15日に死亡した。死亡当時の年齢は33歳であった。(争いがない)
亡A2は,a高等学校からb大学酪農学部農業経済学科に進学し,平成6年3月,同大学を卒業した。(争いがない)
亡A2は,平成17年3月15日の時点で,身長180センチメートル,体重92.2キログラムの健康体であり,平成15年以前には病気で通院することは,風邪等を除いてほとんどなかった。(<証拠省略>)
亡A2は,平成6年4月1日,被告に採用され,3か月間の見習い期間を経て事務職の正職員となり,同年7月1日から畜産部酪農課,平成12年4月1日からは販売部農産課,平成13年4月1日から販売部青果課に配属となった。(争いがない)
亡A2は,平成11年11月11日,原告X1と婚姻し,平成○年○月○日,原告X2をもうけた。(<証拠省略>,原告X1)
亡A2は,温厚で,きまじめで,責任感が強い性格であった。その反面,亡A2は,部下や同僚に仕事を割り振ることが苦手で,仕事を抱え込んでしまうタイプであった。例えば,平成15年5月15日に作成された「私の能力開発計画書」においては,上司のA5係長から,「部下である各品目担当者をもっと,もっとうまく動かすことが出来ると良いと思います。」と指摘されていた。また,亡A2自身も,平成16年5月11日付け「私の仕事点検書」において,自らの仕事上の問題点につき,「仕事に行き詰まったときに,相談することや仕事を分担することに躊躇してしまい,結局自分が困る場面が多々ある。」と記載していた。もっとも,亡A2は,死亡に至るまで,周囲との大きなトラブル等もなくその職務を遂行しており,性格や能力に特段の問題はないものと認識されていた。(<証拠・人証省略>,弁論の全趣旨)
2 被告の事業内容
被告は,昭和23年4月14日,農業協同組合法に基づき設立された,組合員のためにする農業の経営及び技術の向上に関する指導をはじめとする農業に関与する組合員支援等を目的とした法人であり,農業振興事業,生産事業,販売事業,畜産事業,金融事業等を営んでいる。(争いがない)
被告は,平成17年4月時点において,正組合員数個人1411名,法人20名,合計1431名,准組合員数個人670名,団体228名の合計898名を擁していた。また,被告の役員は,平成17年4月時点において,代表理事組合長A3,代表理事専務A1の下に13名の理事がいた。(争いがない)
被告の就業規則によれば,従業員は職員(期間の定めのない雇用契約従業員)及び準職員(期間の定めのある雇用契約従業員)に区分され,準職員はさらに嘱託員,臨時従業員,期間従業員,パートタイマー及びアルバイトに区分されていた。被告の職員は,平成17年4月時点で,理事兼務の参事A6,参事A7の下に男子72名,女子22名の正職員,男子41名,女子34名の準職員,男子8名,女子1名の派遣職員がいた。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
被告内部の組織として,平成17年4月1日当時,企業管理部(3課1所),金融部(4課),生産部(5課),販売部(4課),畜産部(2課)があり,亡A2が死亡時に属していた青果課は販売部に置かれていた。(争いがない)
3 青果課の陣容及び業務内容
青果課は,生産者組合員から集荷された生産青果を撰果し,出荷計画を立てて販売し,出荷組合員に精算することなどを主な業務としていた。青果課が販売を手がけていた主要な品目としては,長芋,人参,玉葱,南瓜,アスパラ,ホウレン草,カリフラワー,花卉等があった。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
青果課課長は,平成10年7月から平成15年3月まではA8が務め,同年4月からA4が務めていた。(<証拠・人証省略>)
平成16年4月1日現在の青果課の陣容は,以下のとおりであった。(<証拠省略>)
課長 A4
係長 A5
正職員 A2,A9
準職員 A10,A11,A12,A13,A14,A15,A16
派遣職員 A17
平成17年4月1日現在の青果課の陣容は,以下のとおりであった。(<証拠省略>)
課長 A4
係長 A2
正職員 A9
準職員 A10,A11,A12,A13,A14,A15,A16
派遣職員 A17
4 被告における労働環境
(1) 就業時間,休日等
被告の就業規則では,職員の就業時間に関し,4月1日を起算日とする1年単位の変形労働時間制が採用されていた(44条1項)。1年間を平均して1週の実労働時間は40時間を超えないものとされ(同項),1日の労働時間の限度は9時間,1週間の労働時間の限度は48時間とされていた(同条2項)。繁忙期は8月から10月又は11月までとされ,繁忙期には日曜日や祝祭日においても交代で勤務するものとされていた。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
1日の就業時間は,休憩時間を除き,原則として8時間以内とされ(就業規則44条4項),青果課については始業午前8時30分(11月から3月までは午前9時),終業午後5時と定められていた(同項)。また,連続して労働させる労働日の限度は,最長で12日間(1週に1日の休日が確保できる日数)とされていた(同条2項)。また,被告の就業規則では,職員の休日は,原則として,①日曜日,②国民の祝日に関する法律に定める休日,③年末年始,④5月1日,⑤組合長が特に定めた日,⑥第2土曜日,⑦毎8週につき3土曜日(ただし②から⑤までの休日が土曜日に該当する週を除く。)と定められていた(49条1項)。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
もっとも,被告は,時間外労働及び休日労働に関し,業務上の必要がある場合には就業させることができる規定を就業規則に置き(50条1項),従前から,音更町農業協同組合労働組合との間でいわゆる36協定を締結し,帯広労働基準監督署長宛にその旨の届出をしていた。(<証拠省略>)
(2) 労働時間の管理
被告においては,平成17年4月末日までは,出勤簿により職員の出勤管理を行っていた。これは,職員に出勤時に出勤簿に押印をすることを義務付けることによって,当該職員がその日に出勤したことを被告が把握できるというものであったが,出勤簿では出勤及び退勤の各時刻については把握することはできなかった。同年5月1日以降はタイムレコーダーが導入され,以後はタイムカードにより職員の出勤及び退勤の各時刻を把握することとされた。(<証拠・人証省略>)
青果課では,青果課現場事務所である青果管理センターの警備をh警備保障株式会社に委託し,機械警備業務・警報機器保守報告書(以下「本件警備報告書」という。)を定期的に提出させていた。本件警備報告書には,青果管理センターの警報機器の解除及びセットの各時刻が記載されており,これにより青果管理センターに最初に出勤した職員の出勤時刻及び同センターから最後に退勤した職員の退勤時刻を把握することが可能であった。もっとも,被告においては,本件警備報告書を職員の勤務時間の管理に用いることはしていなかった。(<証拠省略>)
(3) 超過勤務
平成16年当時,被告においては,職員が超過勤務をする場合には,正規には課長が命令し,部長(ただし次長に委任されていた。)が決裁することとされていたが,実際には職員が自ら申告し,それを上司が決裁承認する扱いで運用されていた。具体的には,超過勤務が必要となったときは,職員は自らの判断で超過勤務を行い,当日又は翌日に超過勤務の状況(勤務時間)を被告所定の「超過勤務命令票」に記載し,これを命令権者である課長(課長不在の場合は係長)に提出するという運用がされていた。(<証拠・人証省略>)
(4) 人事考課
被告は,業務上の課題及び能力開発の目標を明確にすることなどを目的として,上司が職員の面接を行うこととし,平成13年4月1日付けで,面接実施要領を制定した。これによれば,面接は年3回(4月,10月,2月)行われるものとされ,原則として,人事考課の第1次考課者が被考課者に面接するものとされていた。(<証拠省略>)
また,被告は,職員の人事考課に関し,平成14年2月18日付けで,自己申告実施要領を制定し,自己申告制度を採用していた。これによれば,自己申告は3年ごとに行われ,被考課者は自己申告書を第1次考課者に提出し,第1次考課者がこれを基に面接を行うものとされていた。(<証拠省略>)
(5) 健康管理
被告は,産業医をc病院副院長A18に委嘱し,毎年3月には定期健康診断を実施していた。また,平成13年からは,臨床心理の専門家であるA19を講師に迎えて,CS(顧客満足)等をテーマに役職員研修を継続的に実施し,平成14年からはA19による職員対象のカウンセリングを実施してきた。もっとも,平成15年10月から平成17年5月までの間は,このカウンセリングも実施されなかった。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
5 亡A2の勤務状況
(1) 採用から平成16年まで
亡A2は,採用直後に酪農課に,平成12年4月に農産課にそれぞれ配属されたが,その間,休日は基本的に取れており,年次有給休暇も取得していたため,休日には趣味の渓流釣りやスノーボードをしばしば楽しむ余裕があった。(<証拠省略>,原告X1)
亡A2は,平成13年4月1日に青果課に配属された。当時の青果課課長はA8,係長はA4であった。亡A2は,青果課配属後1年目は補佐役としての業務に,2年目からは施設運営の業務に当たった。亡A2は,それまでよりは残業等が増えたものの,心身面に特段の変調は見られず,休日には釣りに行くなど,余暇を楽しむ余裕も見受けられた。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,平成14年2月28日に被告に提出した自己申告書において,現在の担当業務について,「満足していますか」との質問に「大体満足している」,「性格や能力に適していますか」との質問に「大体適している」,「仕事の質について」との質問に「難しい」,「仕事の分量は」との質問に「やや多い」,「この1年間を振り返って」との質問に「努力した」とそれぞれ記載していた。また,亡A2は,同申告書において,異動について,「希望がありますか」との質問に「当分現職を続けたい(あと5年位)」,「理由は何ですか」との質問に「現職でさらに能力を伸ばしたい」とそれぞれ記載していた。同申告書は,第1次考課者であるA4係長,さらに第2次考課者であるA8課長を経て総務課へと提出された。(<証拠省略>)
(2) 相次ぐ職員の欠勤
平成16年6月2日,青果課のA5係長が十二指腸潰瘍で入院し,同年8月10日まで休職した。そのため,亡A2は,それまで担当していた施設管理業務に加え,A5係長が担当していた販売業務もA4課長と分担する形で新たに担当することとなった。(<証拠・人証省略>,原告X1)
また,平成16年6月30日,準職員のA13及びA14が交通事故により負傷したため,同年7月6日から同年8月下旬ころまでの間,青果課に所属する準職員が2名ないし1名欠けることとなった。このため,亡A2の業務量は増大し,亡A2の残業や休日出勤の頻度も増していった。このころ,亡A2は,原告X1に対し,「絶対的に人が足りない。」などとしばしば述べていた。(<証拠・人証省略>,原告X1,弁論の全趣旨)
これに対し,被告は,農協OBで青果課業務の経験が豊富なA20とA21を臨時採用することで対応した。A20の勤務期間は平成16年8月2日から同年9月10日まで,A21の勤務期間は同年8月17日から同年9月10日までであり,その後,同年度中は青果課に職員が補充されることはなかった。(<証拠・人証省略>,弁論の全趣旨)
A5係長は,平成16年8月11日,職場復帰したが,体調が万全でなく,従前ほどの勤務が困難であった。このため,亡A2は,A5係長の職場復帰後も業務過多の状態は続き,その勤務実態に大きな変化は見られず,夜遅くまでの残業や休日出勤を重ねていった。(<証拠省略>,原告X1)
(3) 人参の撰果・販売
亡A2は,A5係長の休職を契機に,人参,玉葱,アスパラ等の販売を担当することとなったが,平成16年8月から人参の集荷・撰果が本格的に始まり,これが亡A2の業務負担をさらに増大させることとなった。(<証拠・人証省略>,弁論の全趣旨)
人参は,貯蔵に向かず,日々収穫・出荷しなければ品質が落ちてしまう作物であるため,販売担当者及び撰果場担当者は常に連絡を取り合う必要があった。また,撰果場担当者は,決められた製品出荷量を確保するため,生産者と連絡を取って,収穫及び原料入荷日を調整するほか,圃場巡回を行い,各圃場の人参の生育状況の確認や生産者との間で収穫状況等を確認することを行っていた。なお,撰果担当者は,圃場巡回を通じて,日頃接触する機会の少ない生産者と直接話をして勉強したり,生産者の人柄を知ることができることから,圃場巡回はそれなりに意義のあるものとされていた(ちなみに,亡A2も,平成16年5月11日付けで作成した「私の仕事点検書」において,圃場を巡回する機会を増やしたい旨記載している。)。圃場巡回は,人参の収穫作業が午前7時ころから始まるため,主に早朝に行うものとされていた。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,人参の収穫期である平成16年8月から同年10月の間,頻繁に音更町内の圃場を巡回した。被告においては,町内の圃場を巡回する場合には所定の公用車を用いることが義務付けられており,被告職員が圃場を巡回するに当たって公用車を用いた場合には,公用車運転日報を運転当日に作成し,同日報を上司に示して検証と決裁を受ける取扱いがされていた。A4課長は,亡A2が頻繁に圃場巡回に赴いていたことを認識しており,亡A2に対し,今日から収穫が始まる畑がある場合や天候が怪しい場合など必要に応じて巡回すれば足りる旨のアドバイスをしたことがあった。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
亡A2は,このころ,青果管理センターに戻らず,現場や撰果場から直帰することが多くなり,とりわけ平成16年8月及び同年9月は青果管理センターから退勤することはほとんどなかった。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
(4) 会合等の増加
亡A2は,平成16年末ころからは,業務上の会合や打合せ後の飲み会に出席することが多くなり,帰宅時間が遅くなっていった。ちなみに,亡A2が同年12月から平成17年3月までの間に出席した飲み会等は下記のとおりである。(<証拠・人証省略>,原告X1)
(平成16年)
12月16日 A22さん送別会
同月17日 青果課忘年会
(平成17年)
1月25日 人参玉葱総会懇親会
同月26日 岩国 A23氏対応
2月12日 コ・ジャスナ交流会
3月28日 玉葱役員会(亡A2は事務局として参加)
同月29日 パートさん送別会
この他にも,青果課OBであるA6参事の誘いで開かれる非公式の飲み会が不定期にしばしば開かれ,亡A2もこれに参加していた。(<証拠省略>,原告X1,弁論の全趣旨)
A4課長は,亡A2の業務負担が平成16年6月以降増大し,亡A2が疲労している様子を見せていたことを認識していたものの,青果課全体が業務繁忙の状態にあったことからこれを問題視せず,亡A2に対し,「大丈夫か。」「けがをするなよ。」などと時折声をかける程度で,それ以上の措置を特段講じなかった。(<人証省略>,弁論の全趣旨)
(5) 心身の変調
亡A2は,平成16年6月以降,次第に頭痛や腰痛,肩こりを訴えるようになり,同年12月ころからは,両肩や首の後ろ,腰に湿布を貼って就寝するようになった。亡A2の同僚であったA13は,平成16年秋ころ,亡A2から頭痛や肩こりに悩んでいる旨を打ち明けられて通院を勧めたり,肩を揉んでやったりすることがあった。また,亡A2は,同年秋ころから,それまでしっかりとっていた朝食をあまりとらないようになった。亡A2は,同年9月ころから,同僚のA13に対し,「毎日寝付けないし,朝4時か5時には目が覚めてしまう。」などとしばしば話をしていた。なお,亡A2は,平成16年12月ころ,原告X1に対し,「A5係長ぐらい細かったら仕事でつらいことが周りに分かってもらえるのにな。俺はストレスで太る方だから。いっそA5係長みたいに倒れられたら楽なのにね。」と述べたことがあった。(<証拠・人証省略>,原告X1)
原告X1は,平成17年1月ころ,亡A2が午前5時,6時といった早朝にしばしば出勤するようになっていたことに気付いた。そのことを原告X1から尋ねられた亡A2は,「仕事のことが気になって眠れないから仕事に行った。」などと述べていた。(<証拠省略>,原告X1)
亡A2は,早く帰宅した日には娘である原告X2の入浴を担当していたが,帰宅時間のめどが立たなくなったことから,平成17年1月ころから,亡A2の母親が亡A2方に赴いて原告X2の入浴を行うようになった。亡A2は,同年3月ころから,遅い時間に帰宅し夕食をとった後すぐ入浴してそのまま就寝し,翌朝は起床後すぐに出勤するという生活を送るようになり,昼食をとるために帰宅しても,食事後すぐ横になり時間が来るまで寝てしまうようになり,入浴中浴槽の中で眠ってしまうこともあった。また,亡A2は,このころから寡黙になり,「疲れた。」などと述べたり,ため息をついたりする回数が増え,明るさが完全に消失し,夜中にも眠れずに目を覚ましていることが度々あり,原告X1に対し,「仕事のことを考えていた。」旨説明することがあったほか,「家にいても寝ていても何をしても,常に仕事のことが頭から離れない。」と述べていた。なお,亡A2は,平成16年から平成17年にかけての冬には,趣味であるスノーボードやその他のレジャーに出かけることもなかった。(<証拠省略>,原告X1)
(6) 通院
亡A2は,平成16年11月15日,「体調不良のため」と事由欄に記載した早退届を被告に提出して,同日午前11時30分をもって早退した。また,亡A2は,その2日後の同月17日,「体調不良のため,通院」と事由欄に記載した早退届を被告に提出して,同日午前10時30分をもって早退し,d脳神経外科病院を受診したが,同病院における検査の結果,特段の異状は認められなかったため,A4課長にその旨申告した。亡A2は,同年12月14日,「通院のため」と事由欄に記載した外出届を提出して,e整形外科クリニックを受診し,腰痛及び頚部痛を訴えた。亡A2は,同クリニックで腰に巻くベルトを処方してもらい,以後,このベルトを腰に巻いて仕事をすることが多くなった。その後も,亡A2の体調は改善せず,亡A2は,平成17年1月12日及び同年3月7日,仕事等での全身の疲労感及び頭痛,頸肩背部の疼痛等を訴えてf鍼灸院を受診したが,仕事が多忙であったこともあり,それ以上の通院は実現しなかった。(<証拠・人証省略>,原告X1)
なお,亡A2は,平成17年3月15日,c病院で人間ドックを受診し,胆のう胞,高尿酸血症,血尿との診断を受けたが,特段重篤な疾病は見つからなかった。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
(7) 自己申告書の提出
亡A2は,平成17年2月17日,被告に自己申告書を提出した。同申告書には,現在の担当業務について,「満足していますか」との質問に「大いに満足している」,「性格や能力に適していますか」との質問に「あまり適していない」,「仕事の質について」との質問に「やや難しい」,「仕事の分量は」との質問に「やや多い」,「この1年間を振り返って」との質問に「大いに努力した」との記載がされていた。また,同申告書には,異動について,「希望がありますか」との質問に「他の部署へ移りたい(あと2年以内)」,「理由は何ですか」との質問に「経験の幅を広げたい」との記載がされていた。また,同申告書の「あなたは今どんなことに興味を持っていますか。または今後伸ばしたい能力は何ですか。」との質問には,「休日の有効活用。仕事上のストレスをリフレッシュし,メリハリをつけて業務にあたりたい。」との記載がされていた。また,「所属部署に対して要望,意見,提案がありますか。」との質問に対し,「贅沢かもしれないが,もう1人でも増員できれば,気持ちに余裕ができる気がする。」との記載がされていた。同申告書は,第1次考課者であるA5係長,さらに第2次考課者であるA4課長を経て総務課へと提出された。亡A2は,平成17年2月ころ,A4課長から異動の希望を尋ねられて,最初は「え,いいですか。」と述べていたものの,最終的には,A4課長に対し,異動の希望は出さないと述べた。(<証拠省略>)
(8) 係長への昇格
ア 亡A2は,平成17年3月25日,青果課係長に昇格する旨の内示を受け,同年4月1日付けで係長に昇格した。亡A2は,同月2日から前任係長のA5との間で引継ぎを行い,その結果を,A5,亡A2及びA4課長3名の連名で事務引継書にまとめた。同引継書は,全部で4ページから成り,主に取引先ごとにこれまでの取引の概略や懸案事項等が概ね3~6行程度でまとめられていたが,係長として部下の指導教育や面接を実施する際の留意点など,中間管理職として留意すべき点については何ら記載がなかった。結局,亡A2は,中間管理職としての心構えや留意点等について体系的な研修や指導を特段受けることなく,係長としての職務を開始することとなった。(<証拠・人証省略>)
イ 平成17年4月2日付けで,青果課にA24及びA25が配属されることとなったが,両名はいずれも新人で青果課の業務に不慣れであったため,亡A2の業務が軽減されることはなく,かえって初めて新人を部下に迎える上司としての労苦を抱えることとなった。(<証拠省略>,原告X1,弁論の全趣旨)
ウ 亡A2は,中間管理職となったことにより,それまでは同格の地位にあった職員の上司となったため,部下との面接を行うべき立場となり,平成17年5月9日ころまでに面接を終えなければならないこととなった。この面接に当たっては,事前に部下から提出された「私の仕事点検書」及び部下との日常的な接触で感じている点をもとに「人材育成指導計画書」を作成することとされていた。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
エ また,亡A2は,平成17年4月23日から公用車を用いたパートタイマーの送迎も担当するようになり,同日,同月27日,同月30日,同年5月6日,同月9日,同月10日,同月12日,同月13日及び同月14日の9日間,パートタイマーの送り又は迎えを担当した。この送迎に要する時間は,1回につき15分から25分程度であった。(<証拠・人証省略>)
オ 平成17年4月中,亡A2が出席した飲み会等は次のとおりである。(<証拠・人証省略>)
4月1日 A28氏送別会
同月6日 そ菜生産振興会総会懇親会
同月11日 十勝中央青果団地送別会
同月12日 青果課歓送迎会
同月13日 花卉研究会総会懇親会
カ こうした業務負担の増大もあって,亡A2は,平成17年4月には午前6時台の早朝出勤を頻繁に繰り返すようになった。(<証拠省略>,原告X1)
キ 亡A2は,係長に昇格した後も心身の状況は改善せず,疲労を蓄積させている様子が窺われた。加えて,亡A2は,係長に昇格した前後から,自宅では人が変わったように無口になって考え込むようになり,原告X1に対し,処理しきれない仕事の分量,職場の人間関係,新人2人に対する指導の悩みなど,仕事上の悩みばかりを話すようになった。亡A2は,原告X1に対し,「課長の性格はきついんだよね。」とか,「わーっと言われると弁論できない。」などと述べていた。また,亡A2は,係長に昇格したことにより,それまで同格の地位にあった同僚のA9が部下となったところ,A9から無視されるようになり仕事上でも支障があることや,係長として部下のA9やその他の職員と面接をしなければならないことに対する悩みを原告X1に打ち明けていた。(<証拠省略>,原告X1)
亡A2は,平成17年5月17日から同月21日までの予定で,新係長としてのあいさつ回りと営業を兼ねて,A26販売部長とともに本州に出張に行くことが決まっていたが,出張によって業務が滞ることを思い悩んでいた。また,亡A2は,原告X1に対し,「いっそのこと飛行機が落ちてしまえば楽になるのかな,と思うこともあるんだ。」などと述べていた。(<証拠省略>,原告X1)
亡A2は,死亡の数日前,原告X1に対し,出勤の際,「ゆっくりしたいわ。」と述べていた。(<証拠省略>)
ク 亡A2は,平成17年5月11日,A4課長とg社のA27部長との会食に同席した。A4課長は,同日午後10時半ころ,A27部長と別れた後,スナック「i」に赴き,同日午後12時ころまで飲んでいたところ,亡A2が同店に現れた。亡A2は,翌12日午前2時ないし3時ころまで同店で酒を飲んだりカラオケを歌うなどしていた。(<証拠省略>)
(9) 本件異物混入事件
亡A2は,平成17年5月12日,遅くとも午前7時18分までに出勤した。同日午前,長芋出荷用のおがくずにホイールローダーのバックミラーが脱落し,ガラス片が混入するという本件異物混入事件が判明した。本件異物混入事件は,バックミラーが脱落したにもかかわらず,そのことに作業員が気付かず,バックミラーのガラス片がそのままおがくずに混入したことによるものであった。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,平成17年5月12日午後6時ころ,本件異物混入事件の報告を受け,同日午後8時ころ,焼肉屋で食事をしていたA4課長にその旨報告した。A4課長は,亡A2に対し,「分かった時点でなぜ早く報告してくれなかった。」と報告が遅れたことを叱責し,まず亡A2に夕食をとらせた。本件異物混入事件の報告をした際,亡A2は,どうしてよいか分からないといった様子で,夕食をとった際も食欲がなさそうであった。その後,A4課長と亡A2は,撰果場に戻り,おがくずピットやゴミが残る箱等を開けて点検したが,ガラス片は2分の1ほどしか見つからなかった。そこで,A4課長は,出荷するため既に製品化していた長芋を翌13日に点検するとの方針を決定した。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,平成17年5月13日,遅くとも午前5時21分までに出勤した。同日午前6時ころから,4号倉庫において,A4課長,亡A2その他連絡の付いた青果課男性職員等の手で,異物混入の疑いのあるおがくずの処分及び732ケース分の商品の検品作業等を行った。その作業中,亡A2は,簡単な計算を間違えてその場にいた職員に指摘されるまで気付かなかったことがあった。上記作業は午前中で終わり,昼ころには職員は通常業務に復帰したが,ガラス片の全てを回収することはできなかった。A4課長は,点検した商品にはガラス片は混入していないものと判断し,これを出荷することとした。亡A2は,同日夕方ころ,「5~10日間何もそのことで連絡がなかったらOKだよね。」と発言した。A4課長は,本件異物混入事件のため出荷する製品が足りなくなったことから,同月15日の日曜日に出荷準備の作業をするとの方針を決定した。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,平成17年5月13日昼ころ,原告X1に対し,本件異物混入事件について言及し,困りきった様子で,「何でこんな時にこんなことが起きるんだ。まいった。」などと述べていた。(<証拠省略>,原告X1)
(10) A4課長による叱責
亡A2は,平成17年5月14日,遅くとも午前7時26分までに出勤した。亡A2は,同日昼ころ,数日前にA4課長から指示されていた輸出用の長芋の出荷を今月もう1台追加できるかどうかの検討をしながら「難しいなあ。」とぼやいていた。A4課長は,亡A2のそばに近寄り同人のパソコンをのぞき込んだところ,亡A2が4月の引継ぎからどの原料をコンテナ何基使用したのかについて管理をしていないことが判明したため,亡A2に対して数字を掴んでおくよう注意した。また,A4課長は,概算で出すように指示してあった玉葱の精算単価について亡A2に確認したところ,同人の担当していた労賃の計算が1月分又は2月分から整理されておらず,まだできていないことを知った。そこで,A4課長は,出張から戻ったらすぐ処理するよう指示した。その後,亡A2が,ため息をついたり泣き言を言っていたことから,A4課長は,亡A2に対し,「どうした?」と尋ねると,亡A2は,「仕事が一杯たまっていて・・・。」と返答した。そこで,A4課長は,亡A2に対し,抱え込んでいる仕事を列挙させたところ,亡A2は,十数項目に及ぶ未済案件を申告した。その中には,電話発注1本で終わるような単純な業務も含まれていた。A4課長は,亡A2が抱え込んでいる仕事のほとんどが,同人が担当すべき仕事ではないと判断し,仕事をためないように,担当に仕事をちゃんと渡すように,引き継ぐべき仕事は早く引き継ぐように,などと厳しい口調で叱責した。A4課長の叱責は,一時的に中断していた間はあったものの,断続的に,約3時間にもわたった。A4課長は,同日午後4時ころ退勤する際にも,亡A2に対し,「こんなこともできない部下はいらんからな。」などと厳しい口調で叱責した。その後,亡A2は,A13に対し,「至らない上司ですまん。」「どうしていいか分からん。」などと述べた。(<証拠・人証省略>)
亡A2は,平成17年5月14日午後8時ころ,帰宅した。この際,亡A2は,原告X1が見たこともないような泣きそうな顔をしていた。亡A2は,原告X1に対し,がっくりとうなだれて「課長に怒られたんだ。今悩んでいること書き出してみろと言われて書き出してきたんだ。」「今,係長としてのお前の仕事はこれだけだ,新人に任せないからこんなに大変になるんだ,新人に業務分担しろって怒られたんだ。」などと覇気なく説明した。(<証拠省略>,原告X1)
(11) 自殺
亡A2は,平成17年5月15日午前5時10分ころに出勤し,青果管理センターの鍵を開錠した。そして,亡A2は,「お世話になりました。ありがとうございました。4号庫にいます。」などと記載したメモ紙をタイムレコーダーに貼付し,「疲れました。いままでありがとうございました。後のことはよろしくお願いします。」などと記載したメモ紙をA4課長の机上に置いた。亡A2は,同日午前6時ころ,4号倉庫2階ギャラリー部においてロープで自らの首をつって自殺した。(<証拠省略>,原告X1)
6 うつ病に関する知見・判断基準
(1) 労働省通達
労働省労働基準局長の平成11年9月14日基発第544号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」と題する通達によれば,心理的負荷による精神障害等に係る労災請求事案については,その処理に当たって,まず,精神障害の発病の有無等を明らかにした上で,業務による心理的負荷,業務以外の心理的負荷及び個体側要因の各事項について具体的に検討し,それらと当該労働者に発病した精神障害との関連性について総合的に判断する必要があるとして,(1)対象疾病に該当する精神障害を発病していること,(2)対象疾病の発病前概ね6か月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること,(3)業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと,の要件を全て満たす精神障害は,労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する疾病(その他業務に起因することの明らかな疾病)として取り扱うとされている。(<証拠省略>)
そして,この判断要件の運用については,まず国際疾病分類第10回修正(以下「ICD-10」という。)作成の専門家チームによる「臨床記述と診断ガイドライン」(以下「ICD-10診断ガイドラインという。)に基づき行うものとされている。また,業務による心理的負荷の強度の評価に当たっては,当該心理的負荷の原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について総合的に検討するため,「職場における心理的負荷評価表」を用いるものとされている。同表は,① 当該精神障害の発病に関与したと認められる出来事が,一般的にはどの程度の強さの心理的負荷と受け止められるかを判断する「(1)平均的な心理的負荷の強度」の欄,② 出来事の個別の状況を斟酌し,その出来事の内容等に即して心理的負荷の強度を修正するための「(2)心理的負荷の強度を修正する視点」の欄,③ 出来事に伴う変化等はその後どの程度持続,拡大あるいは改善したかについて評価するための「(3)出来事に伴う変化等を検討する視点」の欄から構成されており,①及び②については当該精神障害の発病に関与したと認められる出来事の強度が「Ⅰ」「Ⅱ」「Ⅲ」のいずれに該当するかを評価するものとされている(「Ⅰ」は,日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題とならない程度の心理的負荷,「Ⅲ」は,人生の中で稀に経験することもある強い心理的負荷,「Ⅱ」はその中間に位置する心理的負荷とされる。)。そして,③によりその出来事に伴う変化等に係る心理的負荷がどの程度過重であったかを評価し,その上で,出来事の心理的負荷の強度及びその出来事に伴う変化等に係る心理的負荷の過重性をあわせて「弱」「中」「強」の3段階で総合評価することとされている。(<証拠省略>)
(2) ICD-10診断ガイドライン
ICD-10診断ガイドラインによれば,うつ病エピソード(F32)の診断ガイドラインは,「抑うつ気分」「興味と喜びの喪失」「活力の減退による易疲労感の増大や活動性の減少」を3大典型的症状とし,他の一般的症状として,① 集中力,注意力の減退,② 自己評価と自信の低下,③ 罪責感と無価値感,④ 将来に対する希望のない悲観的な見方,⑤ 自傷あるいは自殺の観念や行為,⑥ 睡眠障害,⑦ 食欲不振を挙げている。そして,(ア)典型的3症状のうち,少なくとも2つと,上記①から⑦までの症状のうち少なくとも2つが存在することが「軽症うつ病エピソード(F32.0)」の診断確定の必要条件とされ,また,(イ)典型的3症状のうち少なくとも2つと上記①から⑦までの症状のうち少なくとも3つ(4つ以上が望ましい。)が存在することが「中等症うつ病エピソード(F32.1)」の確定診断の必要条件とされ,(ウ)典型3症状の全て,さらに少なくとも上記①から⑦までの症状のうち4つ,そのうちいくつかが重症であることが「精神病症状をともなわないうつ病エピソード(F32.2)」の確定診断の必要条件とされている。(<証拠省略>)
7 労災認定
(1) 北海道労働局地方労災医員協議会精神障害専門部会座長A29が平成18年12月21日付けで作成した意見書には,亡A2の自殺につき,概ね次のような記載がある。(<証拠省略>)
疾患名 F32.2精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード
発病時期 平成17年1月ころ
業務要因の検討 亡A2の業務量は,前任の係長の入院,その後準職員2名が交通事故に遭い休んだため業務量が増加し,長時間労働になり,残業時間が平成16年8月には90時間,同年9月に77時間にも上っていた。また,被告の杜撰な時間管理から,その心理的負荷の強度は「勤務・拘束時間が長時間化した。」に該当し,心理的負荷の強度は「Ⅱ」程度であると判断できる。
被告の杜撰な時間管理,長時間労働及び困難な業務で疲れきっている亡A2に対し,被告は,過重な労働に対する認識の甘さから何ら対応を講じていない。さらに,亡A2の精神状態を考慮することなく,上司の3時間にも及ぶ叱責は,被告がメンタルヘルスの管理を怠っていたことを示すものであり,被告の支援・協力態勢の欠如が認められることから「出来事に伴う変化等」の心理的負荷は「特に過重」であると判断できる。
結論 亡A2の心理的負荷の強度の評価は総合判断が「強」であることが判断できる。業務以外の心理的負荷,個体側要因も認められないことから,業務による心理的負荷が客観的にみて亡A2に発病した精神障害の有力な原因であると判断できる。したがって,亡A2は業務による心理的負荷が原因となって「精神病症状をともなわない重症うつ病エピソード」に陥り自殺したものと判断できる。
(2) 平成18年12月26日,北海道帯広労働基準監督署長は,亡A2の自殺は業務上災害である旨の認定をした。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
第4事実認定の補足説明
1 亡A2の勤務実態について
(1) 原告らは,亡A2には,平成16年6月以降,過重な業務負担があり長時間労働を余儀なくされていたと主張するのに対し,被告はこれを否認している。
(2) この点につき,原告X1は,平成16年6月以降,亡A2の業務が繁忙となり,日曜日や休日の出勤も増えていったこと,A5係長が復帰した後も亡A2の繁忙度に変化はなく亡A2が遅くまで仕事をしていたこと,平成17年1月には亡A2が午前5時,6時といった早朝にしばしば出勤していたことに気付いたこと,平成16年末ころから,業務上の会合や打合せの後の仕事がらみの飲み会が増え,亡A2の帰宅が遅くなっていたことを供述している(<証拠省略>,原告X1)。
そこで,こうした供述を裏付ける証拠について検討する。まず,前記認定事実記載(第3の4(2))のとおり,本件警備報告書(<証拠省略>)に記載された警報機器のセット及び解除時刻は,青果課事務所のある青果管理センターへの出勤時刻及び同センターからの退勤時刻を示しているのであって,亡A2の勤務時間を認定する上で大きな手がかりになる重要な証拠であるといえる。同報告書の記載内容をまとめたものが,別紙2(本件警備報告書における警報機器のセット・解除時刻)である(なお,本件警備報告書に記載された警報機器のセット時刻は,例えば平成16年4月1日分として記載された時刻は厳密には前日の同年3月31日の退勤時に警報機器がセットされた時刻を示すものであるが,以下の検討においては,この点は捨象して述べることとする。)。
別紙2によれば,平成16年4月及び同年5月は,午前6時台以前の出勤はほとんどなかったのに,同年6月以降同年12月までの間,午前5時台,6時台の出勤が激増していることが認められる。とりわけ同年11月には,午前5時台より前の出勤が9日,午前5時台の出勤が6日,午前6時台の出勤が5日となっている。そして,亡A2の死亡後にA4課長が労働組合の調査依頼に応じて本件警備報告書に手書きで記入したところによれば,同年6月から同年12月までの間,警報機器の解除を亡A2が行った日の割合は,少ない月で50パーセント,多い月で80パーセントであったと推定されるというのである。そうだとすると,これら早朝の警報機器の解除のうち半数以上のものは亡A2によるものと推認でき,亡A2は,同年6月から同年12月までの間,午前5時台,6時台といった早朝出勤をしばしばしていたものと認められる。一方,平成17年1月から同年3月までの間は,それまでのような早朝出勤は認められないものの,同年4月には午前6時台の出勤が19日と激増し,前同様にA4課長が本件警備報告書に手書きで記載したところによれば,警報機器解除の90パーセントが亡A2によるものと推定されるというのであるから,亡A2は,同月には再び午前6時台という早朝出勤を繰り返していたものと認められる。
また,亡A2の退勤時刻についてみると,別紙2によれば,平成16年6月以降とそれ以前とで,午後8時台から午後10時台までの退勤日数は大きな変化はみられないものの,午後11時以降の退勤日数は増加していることが見て取れる。もっとも,前同様にA4課長が本件警備報告書に手書きで記入したところによれば,同年6月から同年12月までの間,警報機器のセットを亡A2が行った日の割合は,多い月でも50パーセント,少ない月では20パーセントであったというのであって,本件警備報告書からはこれらの警報機器のセットの大半が亡A2によるものとまでは直ちに推認することはできない。
もっとも,亡A2が被告に申告した超過勤務時間(<証拠省略>)をみると,別紙3(A2の超過勤務年度別一覧表)記載のとおり,6月から12月までの超過勤務申告時間は,平成13年度が237時間,平成14年度が186時間,平成15年度が151.25時間であったのに対し,平成16年度には366時間と激増している。被告は,超過勤務を職員の自己申告によって管理していたため,別紙3記載の数字がそのまま亡A2の実際の超過勤務時間を示すものということはできないが,亡A2が実際には超過勤務をしていないのにその旨の申告をするとは考え難く,またそのような事実を認めるに足りる証拠もないことからすると,亡A2は,少なくとも,同年6月から同年12月にかけて,前年度以前の同時期に比べて,かなり長時間の労働をしていたことが推認される。一方,1月から3月までの超過勤務申告時間は,平成13年度が27.5時間,平成14年度が57時間,平成15年度が49.5時間であったのに対し,平成16年度は55時間であり,超過勤務申告時間からは,平成17年1月から同年3月にかけて亡A2が長時間労働をしていたものと直ちに認めることはできない。しかしながら,原告X1は,平成16年末から飲み会の回数が増加した旨述べており,前記認定事実記載(第3の5(4))のとおり,同年12月から各種会合やそれに伴う飲み会が催され,さらにはA6参事が誘ってしばしば開かれる飲み会にも亡A2は参加していたことが認められる。そして,亡A2は,同月から平成17年4月にかけて開催された業務に関連する飲み会について,超過勤務の申告を一切していないのであって(<証拠省略>),このことからすると,亡A2は,A6参事が誘って開かれる飲み会についても超過勤務の申告をしていなかったものと推認される。加えて,亡A2又は原告X1が互いに送信したメール(<証拠省略>)は,これが亡A2の残業の全てを裏付けるものではないものの,亡A2が度々午後8時以降も残業していたことを窺わせるものである。
さらに,亡A2の出勤簿(<証拠省略>)によれば,平成13年4月から平成17年4月までの間の各月における亡A2の勤務日の日数は,少なくとも別紙4(亡A2の出勤日数)のとおりであると認められる(なお,この他にも亡A2の押印漏れなどの理由により出勤したのに出勤簿上は欠席したものと扱われている日がある可能性が否定できない。例えば,平成16年6月13日,同年7月10日,平成17年1月1日は,出勤簿には押印がないものの,超過勤務の申請をしている(<証拠省略>)。)。これによれば,6月から翌3月までの亡A2の出勤日数は,平成13年度が219日,平成14年度が237日,平成15年度が233日であったのに対し,平成16年度は245日となっており,著しい増加とまではいえないものの,前年度より出勤日数が増加して平成13年度以降最高となっている。また,亡A2の出勤簿(<証拠省略>)及び超過勤務一覧(<証拠省略>)によれば,平成16年6月から平成17年4月にかけて,同人は13日連続の勤務が6回(平成16年6月7日から同月19日まで,同年8月2日から同月14日まで,同月16日から同月28日まで,同月30日から同年9月11日まで,同月27日から同年10月9日まで,平成17年3月28日から同年4月9日まで),20日連続の勤務が1回(平成16年11月1日から同月20日まで)あった(なお,同年6月13日は出勤簿上は非勤務日とされているが,超過勤務の申請をしている(<証拠省略>)ことから出勤したものと認めるのが相当である。)。
こうした客観的証拠に照らすと,亡A2は,平成16年6月以降,早朝出勤や残業,休日出勤等の機会が増大していたことが認められるのであって,亡A2には長時間労働等による過重な業務負担があったとする原告X1の供述は,これを信用することができるというべきである。
(3) これに対し,被告は,亡A2の業務負担が過重になっていた事実を否定し,その理由として,A5係長や準職員の休職に対しては経験豊富な退職職員2名を臨時採用するなどの措置をとったこと,A5係長は平成16年8月11日に職場復帰し,その後は亡A2と互角の超過勤務をこなしていたことなどを挙げる。
確かに,一時的な増員によって亡A2の業務負担が幾分軽減された可能性は否定できない。しかしながら,前記認定事実記載(第3の5(2))のとおり,青果課の増員が行われたのは平成16年9月10日までのことに過ぎない。また,被告は,A5係長と亡A2とがそれぞれ申告していた超過勤務時間に大きな差がないことから,亡A2とA5係長とが互角の超過勤務をこなしていたと主張し,これによって亡A2の業務負担は軽減されたかのような主張をするが,前記認定事実記載(第3の5(3))のとおり,亡A2は,同年8月には新たに人参の販売をも担当することになり業務負担が大きく増大したものと認められるところ,そもそも,被告における超過勤務は,職員の自己申告に委ねられていたのであり,被告において職員による自己申告が実態に即した正確なものであることを担保するような手立てを講じていたものと認めるに足りる証拠は何ら存しないから,自己申告による超過勤務の時間を単純に比較して亡A2の業務負担が軽減されたとまではたやすく認められない。また,前記認定事実記載(第3の5(4))のとおり,亡A2は,同年末ころからは業務上の会合や打合せ後の飲み会への出席によって帰宅時間が遅くなっていったものと認められるところ,こうした会合や飲み会については超過勤務の申告がされていなかったことが窺われるのであるから(<証拠省略>参照),この点からもA5係長と亡A2とが申告した超過勤務時間をもとに亡A2の業務負担の過重性を否定することはできない。
そうだとすると,被告がとった増員措置やA5係長の復帰によっても,亡A2の業務負担はほとんど軽減されなかったものと認めるのが相当であり,その他被告が縷々主張する内容を考慮しても,亡A2の長時間労働の事実を否定することはできない。
(4) 以上によれば,亡A2には過重な業務負担があり,そのため夜遅くまでの残業や早朝出勤,休日出勤を重ね,長時間労働を余儀なくされていたものと認定するのが相当である。
2 A4課長による叱責の状況について
(1) 原告らは,平成17年5月14日正午ころから午後3時ころまでの長時間にわたり,亡A2はA4課長から極めて強い調子で叱責を受けた旨主張し,A13もこれに沿う供述をする(<証拠・人証省略>)。これに対し,被告は,間断もなく延々3時間もの長時間叱責し続けた事実はない,亡A2は外出したり片づけをしたりすることもあった旨反論し,A4課長も長時間にわたって原告らが主張するような厳しい叱責をしたことはない旨の供述をする(<証拠・人証省略>)。
(2) この点につき,A13は,「(亡A2はA4課長から)ずっと叱られ続けていました」と供述するものの(<証拠省略>),同人は,A4課長による亡A2への叱責が始まってから終わるまで常に亡A2のそばにいたわけではないから(<証拠・人証省略>),A13の前記供述をもってA4課長が亡A2を3時間もの間間断なく叱責し続けたと認めることはできず,他にこのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) もっとも,A13は,15分あるいは1時間程度それぞれ事務所を離れた以外に,A4課長が亡A2を厳しく叱責し続けていたのを目撃していた旨供述しており(<証拠・人証省略>),他方,A4課長も,種々にわたって亡A2の職務遂行上の問題点を指摘したことを認める供述をしている(<証拠・人証省略>)ことからすると,A4課長による叱責は,長時間にわたる断続的なものであったと推認できる。また,「私も課長に怒られたことはありますが,とても厳しいです。怒る場所も選ばず,みんなの前で怒ります。」(A5の供述。<証拠省略>),「頭はいいが人の使い方ができない人だと思っていました。」(A8の供述。<証拠省略>),「課長の性格はきついんだよね。」(原告X1の供述中の亡A2の供述。<証拠省略>)といった被告関係職員の供述が示すように,A4課長は他人に厳しい性格の人物であると周囲から目されており,同人も「誰に対しても仕事中の口調はきつい方だと思います」(<証拠省略>),「話し方がきついと人に言われたことがある」(証人A4)旨供述していること,原告X1は,この日帰宅した亡A2がそれまで見たこともないような泣きそうな顔をしてうなだれていたと供述している(<証拠省略>,原告X1)ことからすると,A4課長による叱責は,相当厳しい口調によるものであったと認められる。A4課長は,前記のとおり,原告らが主張するような長時間にわたって厳しく亡A2を叱責したことはないと供述しているけれども,A4課長は,帯広労働基準監督署における聴取書について,原告らの申立てに係る文書送付嘱託につき,これを同意せず,また,証人尋問において,その理由について合理的な説明をしていないことからすると,亡A2の自殺の原因をめぐって自己に都合の悪い供述が聴取書に記載されていることを慮った可能性が否定できず,この認定に反するA4課長の供述は採用し難い。
なお,被告は,亡A2が自殺直前にA4課長の机上に「いままでありがとうございました。」などと記載されたメモ紙を残していたことから,亡A2は自殺直前にA4課長に感謝の念を表したものであるなどと主張するが,牽強付会の主張というほかなく,到底採用できない。
(4) 以上によれば,A4課長による叱責は,相当の長時間にわたる厳しいものであったものと認めるのが相当である。
第5争点に対する判断
1 争点(1)(業務起因性)について
亡A2の自殺が被告における業務に起因するものであるか否かを検討するに当たっては,前記認定の労働省労働基準局長の平成11年9月14日基発第544号「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」と題する通達(第3の6(1))に従って認定するのが相当である。以下,検討する。
(1) 亡A2のうつ病エピソードの発病
まず,亡A2がうつ病エピソードに罹患していたか否かについて検討する。
ア 前記認定事実(第3の5(5))によれば,亡A2は,遅くとも平成17年3月末までには,次のような症状を有していたことが認められる。すなわち,亡A2は,自宅でも寡黙になり,「疲れた。」などと述べたり,ため息をついたりする回数が増えていき,明るさが完全に消失していた。また,スノーボード等のレジャーに出かけることもなく,仕事のことばかり考えるようになり,早朝に目が覚めてはそのまま出勤し,夜中に仕事のことを考えて眠れないこともしばしばあった。さらに,入浴中に浴槽で寝てしまったり,昼食のために帰宅してもそのまま寝てしまうなどしていた。
これらは,亡A2には,抑うつ気分,興味と喜びの喪失,易疲労感という,ICD-10診断ガイドライン(前記第3の6(2))が定めるうつ病エピソードの3大典型的症状が見られたことを示すものである。
イ また,亡A2には,遅くとも平成17年3月末までには,以下のように,ICD-10診断ガイドラインが定めるうつ病エピソードの一般的症状も見られた。
・平成17年2月17日に提出した自己申告書には,仕事があまり適していない,仕事はやや難しいなどと記載していた(前記第3の5(7)。同ガイドライン②自己評価と自信の低下)。
・平成16年12月ころ,A5係長みたいに倒れられたら楽だとの発言をしていた(前記第3の5(5)。同ガイドライン⑤自傷あるいは自殺の観念や行為)。
・平成16年9月ころから寝付けない,朝早く起きてしまうなどの睡眠障害が生じ,平成17年3月には夜中にも眠れないことがしばしばあった(前記第3の5(5)。同ガイドライン⑥睡眠障害)。
・平成16年秋から朝食をあまりとらなくなった(前記第3の5(5)。同ガイドライン⑦食欲不振)。
ウ 以上の事実に加え,北海道労働局地方労災医員協議会精神障害専門部会座長作成の前記意見書(<証拠省略>)の内容もあわせると,亡A2は,遅くとも平成17年3月末までには,ICD-10診断ガイドラインが定めるうつ病エピソードに罹患していたものと認めるのが相当である。
(2) うつ病エピソードの原因
そこで,さらに亡A2のうつ病エピソードの原因について検討する。
ア 業務による心理的負荷
前記認定事実記載(第3の5(2)ないし(4))のとおり,平成16年6月,A5係長が入院・休職し,さらに同年7月からは2人の職員が入院・休職することとなり,亡A2が所属していた青果課の人員不足が顕著になったため,亡A2はA5係長が担当していた業務まで担当するなど,担当すべき業務の増大を余儀なくされたものである。しかも,A5係長が職場復帰した後も,亡A2の業務負担はさほど軽減されず,亡A2が新たに担当することとなった人参の販売業務が同年8月から本格化し,業務負担が著しく増大した。さらに同年末ころから翌17年にかけて飲み会等が重なっている。
こうした業務量の増大の結果,亡A2は,早朝出勤や残業,休日出勤を余儀なくされ,疲労を蓄積していったものと推認される。そして,亡A2は,前記認定事実記載(第3の5(5))のとおり,平成16年6月ころから次第に肩こり等を訴えるようになり,同年秋から朝食もあまりとらないようになり,同年9月ころからは睡眠障害などの兆候を見せていたのであり,亡A2のこれらの心身の変調は,業務による心理的負荷が強度のものになっていたことを窺わせるものである。
イ 業務以外の心理的負荷及び個体側要因
これに対し,亡A2には,業務以外に心理的負荷があったものと認めるに足りる証拠はないし,亡A2にうつ病エピソードを発症するような個体側要因を認めるに足りる証拠もない。
ウ 以上によれば,亡A2がうつ病エピゾードに罹患したのは業務による心理的負荷が原因となったものであると認めるのが相当である。
(3) 亡A2の自殺とうつ病との関係
前述のとおり,亡A2は,遅くとも平成17年3月末までにはうつ病エピソードに罹患していたところ,前記認定事実記載(第5の5(8))のとおり同年4月以降,係長に昇格することによってさらにその業務負担が増え,事務処理の停滞やA4課長及び部下職員との関係等を思い悩んでいたことが認められる。そうした状況下で,本件異物混入事件の発生,A4課長による長時間の叱責という事象が立て続けに起きたものであって,これらがさらに亡A2に対して強い心理的負荷となったことは容易に推察できるところである。そして,亡A2に他に自殺を余儀なくされるような事情が見当たらないこともあわせると,亡A2の自殺は,うつ病エピソードに罹患したことによって引き起こされたものであると推認するのが相当である。
(4) 被告の主張について
被告は,亡A2の自殺が被告の業務に起因するものであることを否定し,その理由として,① 亡A2の勤務・拘束時間が長時間化したとはいえず,亡A2がうつ病エピソードに罹患したことはない,② 仮にうつ病に罹患していたとしても,それだけで自害するまでの症状には至っていない,③ 亡A2の業務負担が過重となった原因は,亡A2が不必要な圃場巡回を行ったためである,あるいは本来は部下に任せるべき仕事を自分の手元にため込んだためであるなどと主張する。
しかしながら,①については,亡A2の業務による負荷が増大していたことは前述のとおりであるから,この点を理由として亡A2がうつ病エピソードに罹患していなかったとする被告の主張は採用することはできない。被告は,亡A2が任意参加である飲み会等にしばしば出席していたとして,亡A2の疲労の蓄積と被告業務との関係を否定するかのような主張もしているが,亡A2が参加した飲み会等の多くは,業務と密接に関連したものと認めるのが相当であるから,これらの飲み会等が業務外のものということはできない(A6参事が誘って開かれる飲み会についても,A6参事が青果課OBであって,同人が被告において高い地位を占める上司であったことからすると,亡A2がその誘いを断りきれずに参加を余儀なくされていたものと推認するのが相当であって,亡A2の私的な活動とみることは相当ではない。)。なお,前記認定事実記載(第3の5(8)ク)のとおり,亡A2が自殺の数日前である平成17年5月11日にスナック「i」で夜遅くまで飲酒していたことは事実であり,同店での飲酒については私的なものと評価せざるを得ないが,亡A2が同日以外にもこうした私的な飲酒を重ねていたものと認めるに足りる証拠はないから,かかる事実をもって,被告の業務に起因して亡A2がうつ病エピソードに罹患したとの認定を覆すことはできないというべきである。
②については,前述のとおり,亡A2は,遅くとも平成17年3月末までにはうつ病エピソードに罹患していたと認められるところ,自殺する直前には,係長に昇格したことによる業務負担のさらなる増大から早朝出勤を重ねるなど長時間労働を余儀なくされ(前記第3の5(8)カ),自宅では係長に昇格した前後から無口となり,仕事上の悩みばかり原告X1に話すようになっており(前記第3の5(8)キ),また,本州への出張をめぐり,「飛行機が落ちてしまえば楽になるのかな」などと自殺念慮を窺わせるような発言までしていた(前同)。このような亡A2の言動からすると,亡A2のうつ病エピソードは,係長昇格後さらに悪化の傾向にあったものと認めるのが相当である。そして,かかる状況のもとで,本件異物混入事件が発生したのである。同事件は,亡A2に直接の責任があるものではないが,亡A2は,当時青果課係長という管理職にあり,同事件の報告が遅れたことをA4課長に叱責されて,その責任を痛感していたことが推認される上に,翌早朝から異物混入の疑いのあるおがくずの処分及び商品の検品作業に従事することを余儀なくされたが,結局のところ,混入したガラス片の全てを回収することができなかったため,今後さらに市場に出荷する製品に異物が混入している可能性を危惧する発言をしていたこと(前記第3の5(9))からして,同事件によって亡A2の心理的負荷がさらに増大したことは明らかである(なお,前記第3の5(9)のとおり,亡A2は,本件異物混入事件の翌早朝から行われた検品作業中に,単純な計算すら間違えるような状況にあったのであり,この事実は,本件異物混入事件によって亡A2の心理的負荷がさらに増大していたことを示すものである。)。このように,亡A2がうつ病エピソードに罹患し,本件異物混入事件によってさらにその心理的負荷が増大している状況下において,これに追い打ちをかけるように,亡A2は,A4課長から長時間にわたる厳しい叱責を受けたものであって,同人による叱責によって,亡A2のうつ病エピソードを極度に悪化させたことは動かし難い事実というべきである(前記第3の5(10)のとおり,原告X1は,A4課長による叱責のあった当日,帰宅した亡A2がこれまで見たこともないような泣きそうな顔をしてがっくりとうなだれていたのを見たというのであって,このことはA4課長による叱責によって亡A2の病状が極度に悪化したことを如実に物語っている。)。
③については,前記認定事実記載(第3の5(3))のとおり,圃場巡回には,生産者の作業の進捗等の確認のみならず,日頃接触する機会の少ない生産者と直接話をして勉強したり,生産者の人柄を知ることができるなどの意義があるものと認識されており,こうした認識は被告において共有されていたものと思われる。亡A2も,圃場巡回の機会を増やしたいとの希望を被告に表明していたのであって(前同),およそ亡A2が無意味な圃場巡回を行いことさら業務負担を増大させたものと評価することはできない。そもそも,圃場巡回には被告の公用車を用いるものとされており,被告は公用車運転日報の提出を受けていたのであって,A4課長も亡A2の圃場巡回が頻回に及んでいることを認識していたものである(前同)。仮に,被告が主張するように,亡A2が不必要な圃場回りを繰り返したために業務負担が過重になったというのであれば,被告においてこれを中止させるような措置を講じるべきである。ところが,A4課長は,亡A2に対し,せいぜい必要に応じて巡回すれば足りるといったアドバイスをしたに過ぎないのであって,亡A2が行っていた圃場巡回を被告における業務と無関係のものとして切り捨てることは到底できない。
また,従業員が仕事を部下に割り振ることができず抱え込んでしまうことはおよそどの職場にも見られることであって,そもそも使用者にはこうした従業員の能力,性格,個性等を踏まえた対応が求められてしかるべきである。亡A2は,係長に昇格する以前から,部下や同僚に仕事を割り振ることが苦手で,仕事をため込んでしまうタイプであり,平成15年5月15日に作成された「私の能力開発計画書」において,上司であるA5係長による指摘があるほか,平成16年5月11日付け「私の仕事点検書」において亡A2自らが仕事上の問題点として記入していたところである(前記第3の1)。A4課長は,亡A2から提出された「私の能力開発計画書」や「私の仕事点検書」を通じて,亡A2のこのような仕事上の問題点を把握していたのであるから,亡A2の上司として,同人の仕事ぶり等を適切に把握し,問題点があれば上司から指導してしかるべき措置を講じるべきであったところ,亡A2の自殺の前日まで同人の仕事の進捗状況や業務負担の過重さを把握していなかったのであって(証人A4),かかる亡A2の仕事ぶりを捉えて,亡A2の精神的症状が被告における業務と無関係であるということは到底できない。
したがって,③の点についても,被告の主張は採用できない。
そして,その他被告が主張する点を考慮しても,亡A2の自殺が被告における業務に起因するものではなかったということはできない。
(5) 結論
以上によれば,亡A2の自殺は被告における業務に起因するものであると認められる。
2 争点(2)(安全配慮義務違反の有無)について
(1) 被告の安全配慮義務違反の有無
使用者は,その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し,業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことのないよう注意し,もって,労働者の生命及び身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(安全配慮義務)を負っていると解するのが相当である。
以下,被告の安全配慮義務違反の有無について検討を加える。
ア 前述のとおり,亡A2は,平成16年6月以降,業務負担が増大して疲労を蓄積させ,遅くとも平成17年3月末までにはうつ病エピソードに罹患していたものである。
イ 被告は,平成17年5月1日にタイムカード制を導入するまでは出勤簿でのみ職員の勤務を管理し,超過勤務についても職員の自己申告に委ね,これをチェックすることもしていなかったのであって(前記第3の4(2),(3)),その労働時間管理は杜撰なものであったというほかないが,仮にそうであっても,A4課長は,上司として亡A2と職場をともにし,日々同人の動静を把握できる立場にあり,現に亡A2の業務量が増大していることを認識していたものである(前記第3の5(4))。また,亡A2は,平成16年11月から度々体調不良や通院を理由として早退届や外出届を提出しており,亡A2の同僚でありA4課長の部下であったA13も亡A2の身体の不調を認識していた(前記第3の5(5),(6))。こうした事情に加えて,平成17年2月17日に亡A2が提出した自己申告書には,他部署への異動を希望する旨や,増員を希望する旨の記載があった(前記第3の5(7))こともあわせると,被告は,亡A2が業務負担の増大及びこれを原因とする疲労の蓄積や体調不良に悩んでいたことを認識し,あるいは認識することが可能であったというべきである。
そうだとすれば,被告は,遅くとも平成17年3月までには,亡A2の業務量を軽減する措置を講ずる義務があり,かつそのような措置を講ずることは可能であったというべきである。
ウ ところが,被告は,平成16年6月以降の亡A2の業務量の増大に対し,同年8月から翌9月にかけてわずか1か月間程度アルバイト2名を増員したほかは,亡A2の業務負担を軽減する措置を特段講じていない(前記第3の5(2))。それどころか,被告は,平成17年4月1日付けで,亡A2を係長に昇格させているが,亡A2の青果課における従前の仕事ぶりや性格等からして同人が青果課係長職として相応しいかどうか十分に検討したかどうか疑問があり,しかも初めて管理職に就く亡A2に対するフォローもしていないのである(前記第3の5(8)。なお,被告は,亡A2の係長昇格に当たり,事務引継書を作成しているが,初めて係長職を担う亡A2の負担を軽減するという観点からのものではなく,中間管理職としての心構えや留意点等について体系的な研修や指導もなかったのであるから,これを特段評価することはできない。)。その結果,亡A2の業務負担はさらに増大し,未処理案件は山積みとなり,亡A2は単純な業務ですら手につかないような状態に陥ったものである(前記第3の5(10))。そうした状況下で,本件異物混入事件という,青果課係長としての亡A2の心に重い負担を与えたと思われる事件が発生し,さらに追い打ちをかけるように,本件異物混入事件の後処理作業をした翌日,A4課長による長時間の叱責があったのであって,これが決定的打撃となり,亡A2のうつ病エピソードを悪化させたものと推認するのが相当である。
したがって,被告は,労働者である亡A2に対する安全配慮義務を怠ったというべきである。
(2) 被告の主張について
これに対し,被告は,安全配慮義務違反はなかったと主張し,その理由として,① 平成14年から希望する職員のカウンセリングを実施してきた,② 被告は亡A2がうつ病エピソードに罹患していることを窺わせる事情を全く把握しておらず,自殺直前も出張の手配を進めるなど意欲的に業務に取り組んでいたから,自殺することの予見可能性はなかった,などと主張する。
しかしながら,①については,こうしたカウンセリングのみで亡A2の過重労働が軽減されるわけではないし,カウンセリングも希望者のみを対象とするものであり,かつ平成15年10月以降は,亡A2の死亡に至るまでカウンセリングは1回も開催されなかったのであるから(前記第3の4(5)),これをもって被告が安全配慮義務を果たしたとは到底いえない。
②については,そもそも,うつ病患者が自殺に至る可能性が高いことは一般によく知られた事実であるところ,前述のとおり,A4課長は,亡A2の心理的・肉体的変調を窺わせるような事情を複数把握していたのであるし,亡A2の長時間労働についても認識していたものである。亡A2が,脳神経外科の受診の結果,異状なしとの診断を受けたことは事実であるが(前記第3の5(6)),前述してきた亡A2の自殺前の言動等からすれば,亡A2の身体面に重篤な問題がなくとも,亡A2の仕事ぶりや言動を注意深く観察していれば,単純な仕事もこなすことができないような精神状態に陥っていたことなどを把握することは十分に可能であったというべきであるし,むしろ,身体面に特段の問題がないという受診結果の報告を鵜呑みにし。精神的疾患の可能性を疑わなかった被告の落ち度は否定できないというべきである。
また,亡A2は,平成14年2月28日に提出した自己申告書(<証拠省略>)とは異なり,平成17年2月17に提出した自己申告書(<証拠省略>)においては異動の希望を有していることを被告に表明しているのであって,この点からも亡A2の業務負担の重さ,ひいては亡A2の精神に生じていた変調について認識することは十分可能であった。前記認定事実記載(第3の5(7))のとおり,亡A2は,結局異動の希望は出さない旨A4課長に告げているところであるが,上司であるA4課長,ひいては被告における評価を慮って亡A2が異動の希望を明確にすることができなかった可能性は十分あるというべきであって,被告としては部下職員の微妙かつ複雑な心理についても思いを致すべきであったのである。
なお,亡A2が本州出張の手配を進めていたことは事実であるが(<証拠省略>),仮にかかる事実があるとしても,亡A2の自殺に至る事実経過に照らすと,この事実のみをもって,被告において亡A2の精神的症状に関する予見可能性がなかったとまではいえない。
そうだとすると,被告が亡A2の精神面の変調について予見可能性がなかったということはできず,ひいては亡A2の自殺につき予見可能性がなかったということはできない。
そして,その他被告が主張する点を考慮しても,被告には安全配慮義務違反がなかったものということはできない。
(3) 因果関係
被告が前記安全配慮義務を尽くし,亡A2の心身の状態に適した配属先への異動を行うなどして,その業務負担を軽減し,労働時間を適正なものに抑えるなどの対応をとり,あるいは亡A2の精神的不調を疑い,精神科への受診を勧奨するなどの措置をとっていれば,亡A2がうつ病エピソードに罹患することを防止し,あるいは亡A2が自殺により死亡することを防止できた蓋然性は高かったというべきである。したがって,被告の安全配慮義務違反と亡A2の自殺との間には因果関係があるというべきである。
(4) 結論
以上によれば,被告には亡A2の自殺につき安全配慮義務違反の過失が認められ,亡A2の自殺との因果関係も認められるから,被告は民法709条に基づく不法行為責任を負うというべきである。
3 争点(3)(損害額)について
(1) 死亡逸失利益 7257万7494円
亡A2は,死亡時640万2938円の年収を得ていた(<証拠省略>)。亡A2は,妻である原告X1と子である原告X2との3人暮らしであったから,生活費控除率は30パーセントとするのが相当である。そして,死亡時の亡A2の年齢は33歳であるから,就労可能年齢である67歳までの34年間(ライプニッツ係数16.1929)の逸失利益は7257万7494円となる。
(計算式)
640万2938円×(1-0.3)×16.1929≒7257万7494円
なお,原告らは,被告においては年功を踏まえた賃金体系がとられ,労働組合との団体交渉によって賃金が定められていたことから,賃金センサスによることが相当であると主張するが,亡A2が被告において賃金センサスによる賃金を得る蓋然性が高かったものと認めるに足りる証拠はないから,原告らの主張は採用できない。
(2) 葬儀費用 150万円
葬儀費用として150万円を認める。
(3) 死亡慰謝料 3000万円
亡A2は,平成16年6月以降,増大する業務負担に耐えながらも結局精神病に罹患し,妻と当時未だ1歳の娘を残し,33歳という若さで自ら命を絶つという非業の死を遂げたものである。被告は,亡A2が心身に変調を来していることを現に認識し,あるいは認識し得べきであったにもかかわらず,特段の措置を講じなかったどころか,ほとんど何の配慮のないまま係長へと昇格させるという無謀な人事を断行し,さらには本件異物混入事件という亡A2にとっても衝撃の大きかったと思われる事件の2日後に上司が長時間にわたって叱責を行った結果,亡A2を首つり自殺という惨い死に方へと追いやったものである。
こうした事情に照らすと,亡A2の死亡慰謝料は,3000万円をもって相当と認める。
(4) 原告各自の相続分 各5203万8747円
以上の合計額は1億0407万7494円となるところ,原告らは各5203万8747円の損害賠償請求権を相続により取得した。
(5) 損益相殺 原告X1につき1009万6871円
原告X1は,亡A2の死亡につき,労働者災害補償保険法に基づき,次のとおり合計799万4740円の給付を受けた。(<証拠省略>,弁論の全趣旨)
遺族補償給付 年金 年額215万6971円
(平成20年10月分までの支給実績718万9900円)
葬祭料 80万4840円
また,遺族補償給付(年金)については,平成21年8月分までの年額215万6971円の支給が確定しているものと認める。(<証拠省略>)
したがって,損益相殺として,遺族補償給付(年金)合計934万6871円を原告X1の逸失利益に関する相続分(3628万8747円)から,葬祭料80万4840円を原告X1の葬儀費用に関する相続分(75万円)からそれぞれ控除する(したがって,遺族補償給付(年金)については934万6871円全額を控除することになるが,葬祭料については75万円の限度で控除することになる。)。なお,原告X1は,特別支給金300万円をも受給していることが認められるが(<証拠省略>),これは損害をてん補する性質のものではないから,損益相殺の対象とならない(最高裁平成6年(オ)第992号同8年2月23日第二小法廷判決・民集50巻2号249頁参照)。
これに対し,原告らは,損益相殺の対象としては,口頭弁論終結時に受給しているものに限定されるべきであると主張するが,不法行為と同一の原因によって被害者又はその相続人が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得した場合には,当該債権が現実に履行されたとき又はこれと同視し得る程度にその存続及び履行が確実であるときには,これを加害者の賠償すべき損害額から控除することができるものと解するのが相当であるから(最高裁昭和63年(オ)第1749号平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照),原告らの主張は採用できない。
(6) 弁護士費用 原告X1につき450万円,原告X2につき550万円
以上によれば,原告X1の損害額は4194万1876円,原告X2の損害額は5203万8747円であるところ,本件事案の内容,審理経過,認容額等を総合勘案し,相当因果関係ある損害として被告が負担すべき弁護士費用は,原告X1につき450万円,原告X2につき550万円をもって相当と認める。
第6結論
以上の次第であるから,原告X1の請求は4644万1876円及びこれに対する不法行為日である平成17年5月15日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,原告X2の請求は5753万8747円及びこれに対する不法行為日である同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由があり,原告らのその余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する(なお,仮執行免脱の宣言については,相当でないからこれを付さないこととする。)。
(裁判長裁判官 岡山忠広 裁判官 武藤貴明 裁判官 髙木健司)
(別紙2)
本件警備報告書における警報機器のセット・解除時刻
解除(=出勤)
セット(=退勤)
5:00以前
5:00台
6:00台
※
20:00台
21:00台
22:00台
23:00以降
※
平成
16年
4月
0日
0日
0日
30%
6日
1日
4日
1日
20%
5月
0日
0日
1日
30%
5日
4日
0日
0日
20%
6月
0日
0日
5日
50%
4日
0日
1日
3日
50%
7月
0日
2日
8日
50%
5日
4日
2日
2日
50%
8月
1日
4日
17日
80%
6日
1日
2日
0日
A4
9月
1日
15日
8日
80%
3日
0日
0日
0日
A4
10月
2日
3日
11日
50%
4日
7日
0日
4日
50%
11月
9日
6日
5日
50%
5日
5日
4日
0日
20%
12月
0日
3日
6日
50%
0日
3日
1日
3日
30%
平成
17年
1月
0日
0日
1日
30%
3日
4日
1日
0日
30%
2月
0日
0日
1日
30%
3日
3日
3日
0日
30%
3月
0日
0日
1日
30%
3日
1日
2日
3日
30%
4月
0日
0日
19日
90%
2日
2日
1日
0日
50%
(注) 1 ※は,本件警備報告書に基づきA4課長が亡A2による警報機器のセット・解除と推定される日の割合を示したものである。そのうち,「A4」と記載したものは青果管理センターから退勤した日がなかったとA4課長が述べているもの(<証拠省略>,証人A8,証人A4)である。
2 23:00以降のセット(退勤)時刻は夜間のものである限り午前0時以降のものも含めた。
(別紙3)
A2の超過勤務年度別一覧表
月 年度
13
14
15
16
17
4
0
0
16.5
16
11
5
5
0
18
20.5
14.3
6
2.5
3
17
21.25
7
35.5
99.5
0
37.75
8
49
29
37.5
89.5
9
36
12
21.25
84
10
29.5
3
43
48.75
11
73
36
10
68.75
12
11.5
3.5
22.5
16
1
0
13
4.5
27
2
19
29.5
30.5
20.5
3
8.5
14.5
14.5
7.5
計
269.5
243
235.25
457.5
25.3
(別紙4)
亡A2の出勤日数
平成13
年度
平成14
年度
平成15
年度
平成16
年度
平成17
年度
4月
19
20
22
22
26
5月
21
19
21
18
6月
23
22
21
25
7月
23
24
23
26
8月
24
27
25
28
9月
24
26
27
26
10月
26
29
28
26
11月
22
26
25
27
12月
21
22
24
24
1月
18
20
18
19
2月
17
19
22
23
3月
21
22
20
21
(注) 出張日は出勤日数に含めた。