釧路地方裁判所帯広支部 昭和63年(ワ)179号 判決
原告
たかをビル開発株式会社
右代表者代表取締役
髙橋幸雄
右訴訟代理人弁護士
菊本治男
同
須田唯雄
同
村本政彦
右菊本治男訴訟復代理人弁護士
福田博行
被告
帯広市
右代表者市長
高橋幹夫
右訴訟代理人弁護士
同
橘精三
同
山根喬
同
松浦護
同
伊藤隆道
右指定代理人
長岡修次
同
敷本澄雄
同
阿部孝行
同
関谷勝信
同
八鍬祐子
同
湯田義昭
同
谷正三
同
匂坂敏郎
同
伊藤馬志己
同
塚田正雄
"
事実及び理由
第三 争点に対する判断
争点1(本件売買契約の当事者)についてはひとまず措き、争点2(被告のバスターミナル存続義務)について検討する。
一 〔証拠略〕
1 原告の代表者である髙橋は、本件土地とこれに隣接する本件被告所有地上に、ショッピングビルを建築することを計画し、昭和四八年四月ころから、右の両土地を売り払う意向を有していた被告の市長や助役をはじめとする職員との間で交渉を重ねていた。
2 当初は、髙橋側が本件土地及び本件被告所有地の両方の売渡しを受けて、その上にショッピングビルを建築する方向で交渉が進められていたが、被告は、昭和四八年五月下旬ころ、髙橋側には、本件土地部分だけを売り渡し、被告が本件被告所有地上にビルを建築して、これを駐車場及びバスターミナルとするとの方針を示し、髙橋側にそれまでの計画の変更を求めた。
3 髙橋は、本件土地上に建築するショッピングビルを株式会社イトーヨーカ堂(以下「イトーヨーカ堂」という。)に賃貸することを計画しており、イトーヨーカ堂からは、賃借の条件として、売場面積は八〇〇坪以上であることを求められていたが、本件土地の容積率は四〇〇パーセントであったため、そのままでは約一三四〇坪余の本件土地上にショッピングビルを建築しても、イトーヨーカ堂から求められていた売場面積を確保することはできない状況にあった。
4 これに対し、被告市長は、髙橋に対し、昭和四八年六月ころ、打開案として、本件土地上に髙橋側が建築するショッピングビルと、本件被告所有地上に被告が建築する駐車場併設のバスターミナルとを一体的な建物とし、これによって、駐車場等が併設される建物について適用される容積率の緩和規定により、ショッピングビルの床面積を増やすことを提案した。
髙橋は、この提案に応ずることとしたが、その交渉過程において、被告の市長や職員から、右の打開案により、バスターミナルの乗降客がショッピングセンターを利用することが期待できることや、これによって本件土地の価値が上がるのではないかとの指摘もされたほか、被告の財政上も高く買ってほしい旨の要望も出ていた。
そして、被告は、右に関連して、髙橋に対し、髙橋側の費用でバスターミナルの利便施設として待合室と切符売場を設けることや本件土地にバスターミナルの乗降客のための連絡通路を設けることのほか、本件原告建物に本件被告建物の駐車場との連絡出入口を設けること及び隣接する経済センタービルとの地下通路を設けることを求め、髙橋側では、これに沿って本件原告建物の設計も進めていた。
5 ところが、髙橋以外にも本件土地の買受け希望者が現れたことなどから、被告は、本件土地の売渡しについては一般競争入札の方法によることとし、昭和四八年九月一二日、その旨の告示をした(帯広市告示第一九七号、以下「本件告示」という。)
本件告示においては、入札参加資格として、「現に帯広市内に引き続き一か年以上居住している者(法人を含む)とする。ただし、法人にあっては、帯広市内に本店(主たる事務所を含む)を有するものであること。当該売払地に隣接して市が建設する公共施設と利用上一体化した次項に示す条件に適合する建物の基本設計図を提出し、その受理書の交付を受けたものとする。」と定められ、契約についての条件事項等として、「建物に係る条件 ア 当該売払地に公共施設と用途上不可分のものとしたショッピングセンター等としての建物を建てること。イ 地上七階建以上とし、その延面積を約二万六四四六平方メートル以上とすること。 ウ 公共施設の利用利便上、約一六五平方メートルの面積に待合室及び切符売場等の施設を設けること。 エ その他、隣接する経済センタービルとの地下接続の方法を講ずること。」と定められた。
なお、それまでの交渉経過において、あるいは本件告示に関連して、被告側からは、本件被告建物のバスターミナルの乗り入れバスの便数の見込みとして、一日六〇〇台の数字も出ていた。
6 髙橋は、新会社を設立して、その会社において本件土地を購入しようと考えていたが、本件告示で定められた入札参加資格を満たすため、自らが代表取締役をしていたB帯広ボウル(株式会社帯広セントラルボウル)の名義において右入札に参加し、昭和四八年九月二五日に実施された入札の結果、入札参加者五名の中からB帯広ボウルが一二億一一一六万円で本件土地を落札した。
7 被告とB帯広ボウルは、その後、右落札に基づいて、昭和四八年一〇月一日付けをもって、本件土地について売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)を作成した。そこでは、B帯広ボウルは、売買物件に別記契約条項並びに別添設計図書に適合した建物を建てるものとする、と定められた上、この条件事項として、当該売買物件に公共施設と用途上不可分のものとしたショッピングセンター等としての建物を建てること、地上七階以上とし、その延べ面積を二万六四四六平方メートル以上とすること、公共施設の利便上、約一六五平方メートルの面積に待合室及び切符売場等の施設を設けること、その他、隣接すする経済センタービルとの地下接続の方法を講ずることが定められた。
8 本件土地は、昭和四八年一一月二七日、B帯広ボウルが商号変更した株式会社サマリー名義に所有権移転登記がされ、その後、昭和五〇年二月二六日、A帯広ボウル(昭和四九年六月二〇日設立、代表取締役は髙橋外一名)が商号変更した株式会社サマリー(以下「新サマリー」という。)を所有者として真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記がされ、原告会社は、昭和五四年四月一二日、新サマリーと合併した(なお、現在、本件土地が原告の所有に属することは当事者間に争いがない。)
9 ところで、本件被告建物は昭和四九年七月下旬ころ完成し、本件原告建物は昭和五〇年三月ころ完成した。
そして、本件告示や本件売買契約書で定められた条件等に従って、本件被告建物内あるいは一部本件原告建物内にまたがってバスターミナルの利便施設として待合室、切符売場及び食堂等にあてるための造作物が造られ、これらは、新サマリーの名において、昭和五〇年四月二五日ころ被告に寄附された(当時の被告の評価額一億〇二四九万二三九八円)。また、本件土地上にバスターミナルの乗降客のための連絡通路(南側連絡通路)が設けられ、本件原告建物には本件被告建物の駐車場との連絡出入口が設けられたほか、隣接する経済センタービルとの地下通路も設けられた。
10 被告は、昭和五〇年一〇月一六日から、本件被告建物を駐車場併設のバスターミナルとして供用し、三事業者が乗り入れて利用していたが、乗り入れバスの便数は徐々に減少し、バス事業者も徐々に乗り入れを廃止し、このバスターミナルは、昭和六二年八月廃止された。
二1 右認定事実に基づいて検討するに、本件告示においては、本件土地の買主は、被告が本件被告所有地に建築する公共施設としての本件被告建物と利用上あるいは用途上不可分のビルを建築するという条件が定められていたほか、この公共施設の利便上、待合室や切符売場等を設けることが入札の条件として定められ、また、本件売買契約書においても、本件土地の買主が公共施設と用途上不可分のものとしたショッピングセンター等としての建物を建てることと定められていたほか、待合室や切符売場等を設けることが買主の義務として定められていたのであり、原告は、本件売買契約は、原告による本件原告建物の建設と被告によるバスターミナル等の公共施設の設置とが不可分一体の関係にあるものとして成立し、本件被告所有地上に建設される建物及びその用途に関する契約とが一体となったものである旨主張している。
そして、前記認定の一連の事実経過からすると、髙橋は、本件被告建物にバスターミナルが設置されれば、本件土地に建築を予定していたショピングビルの経営にとっても有利になると考えていたことが認められる。
2 しかしながら、前記認定事実によれば、買主は被告が本件被告所有地に建築する公共施設としての本件被告建物と利用上あるいは用途上不可分のビルを建築する、という本件告示や本件売買契約書の条項は、本件被告所有地に建築する建物と利用上あるいは用途上不可分の建物を建築することによって、本件土地に建築される建物の延べ床面積の制限を緩和させることを目的としたものであったのであり、本件土地にこの目的を満たす建物が建築され、維持できる限り、それ以上に、右の条項から、直ちに、被告に、本件被告建物のバスターミナルを将来にわたって存続させる義務までが発生するものとはいえない。
そして、本件被告建物のバスターミナルは、専ら被告とは別のバス事業者等の利用の上に成り立つものであったものであり、しかも、将来において、どれだけ乗り入れバスの便数を確保できるかは、社会・経済・交通事情の変化等に大きく左右されるものであったと考えられ、本件原・被告両建物の一体不可分の関係が継続する限り、換言すれば本件原・被告両建物のいずれかが滅失あるいは朽廃に至るまでというような長い期間にわたって存続していくことができるかどうかは相当不確実と考えられ、そこまで至らないとしても、将来にわたって存続していくことができるかどうかは、やはり不確実なものであったと考えられる。
しかるに、本件告示や本件売買契約書には、本件土地の売買に関して、代金支払、引渡しや登記手続から買戻し等の事項に至るまで広範囲にわたる内容が明確に記載されているのに対し(〔証拠略〕)、本件被告建物のバスターミナルの存続に関する記載はなく、そのほかにも、本件売買契約の当事者間において、このバスターミナルの存続について明らかにした書面は作成されていないのであって、以上のような諸点に照らして考えると、本件売買契約の当事者が、将来にわたって本件被告建物の用途の一部をバスターミナルとして固定し、このバスターミナルの存続を被告の義務として拘束するまでの意思であったとは認められないものというべきである。
もっとも、本件売買契約に関連して、待合室や切符売場等の寄附がされたほか、本件土地にバスターミナルの乗降客のための連絡通路も開設されているが、右に述べた諸点に加え、髙橋は、これらの寄附等をも前提とした上で、価格を決定して本件土地の入札に参加したのであり、また、本件原告建物は、このような事項を含めた一連の合意の結果として、本来の延べ床面積の制限を緩和されたものとして建築されているのであって、右の寄附等の事実によっても、被告にバスターミナルの存続義務が発生すべきものとはいえない。
そして、そのほかにも、被告に本件被告建物におけるバスターミナルの存続義務があったと認めるに足りる証拠はなく、バスターミナルの存続義務に関する原告の主張は採用できない。
第四 結論
以上によれば、原告の本訴請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないことになるからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 端二三彦 裁判官 手塚明 本多知成)