釧路地方裁判所根室支部 事件番号不詳 判決
主文
原告が被告の株式二、〇〇〇株を有する株主であることを確認する。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
一、申立
1 原告の申立
主文第一、二項と同旨の判決。
2 被告の申立
請求棄却の判決。
二、主張
1 請求原因
(1) 被告は、映画上映・演劇上映・貸館等を目的とし、資本金四、二〇〇、〇〇〇円、一株の金額五〇〇円、発行済株式八、四〇〇株(いずれも額面株)として昭和三二年年一月八日設立登記された株式会社である。
(2) 原告は、被告会社設立に際し、発起人として、昭和三一年一二月頃、その株式二、〇〇〇株を引受け、その頃、株金全額の払込を了し、株主たる地位を取得した。
(3) しかるに、被告会社は、原告の株主たる地位を認めない。
2 答弁及び抗弁
(1) 答弁
請求原因事実をすべて認める。
(2) 抗弁
(イ)被告会社は、原告に対し、昭和三二年四月二五日、原告が引受け、払込を了した被告会社の株式二、〇〇〇株に相当する株券(一〇〇株券二〇枚・株券番号二一ないし四〇)を発行交付した。
(ロ)訴外株式会社北海道相互銀行は、原告に対する釧路地方法務局所属公証人赤野敬止作成の公正証書の執行力ある正本に基づき、昭和三二年四月二五日、右株券を差押え、これは、同年五月一五日頃競売に付され、訴外飛沢徳蔵がこれを競落し、同年六月二八日その名義書換を了した。
(ハ)よつて、原告は、被告会社の株主たる地位を失つた。
3 抗弁に対する答弁
抗弁(イ)の事実を否認し、同(ロ)の事実を認める。
三、証拠(省略)
理由
一、被告が、映画上映・演劇上映・貸館等を目的とし、資本金四、二〇〇、〇〇〇円、一株の金額五〇〇円、発行済株式八、四〇〇株(いずれも額面株)として昭和三二年一月八日設立登記された株式会社であること、原告が、被告会社設立に際し発起人として昭和三一年一二月頃その株式二、〇〇〇株を引受け、その頃、株金全額の払込を了し株主たる地位を取得したことはいずれも当事者間に争がない。
二、よつて抗弁の当否について判断する。
1 訴外株式会社北海道相互銀行が、原告に対する釧路地方法務局所属公証人赤野敬止作成の公正証書の執行力ある正本に基づき昭和三二年四月二五日、原告名義の株券(一〇〇株券二〇枚、株券番号二一ないし四〇)を差押えたこと、右株券は同年五月一五日頃競売に付され訴外飛沢徳蔵がこれを競落し同年六月二八日名義書換を了したことはいずれも当事者間に争がない。
2 ところで、株券が株主権を表彰する有価証券としての効力を生ずるのは、有効に成立した株式について作成された株券が、株主に交付されたときと解すべきところ、すべての証拠によるも被告会社が原告に対し、訴外株式会社北海道相互銀行が差押え訴外飛沢徳蔵が競落した前記原告名義の株券を交付した事実を肯認することはできない。もつとも、被告代表者本人の供述の中には「被告会社は、昭和三二年四月二五日、当時の代表取締役であつた寺島清司方において株券発行の準備を完了したうえ被告会社の従業員松村一朗をして、原告に電話で株券を取りにくるように連絡した。その直後執行吏から原告名義の株券の有無の電話照会を受けたので原告に差押られてもよいかどうか電話で確めたと思う」旨の供述部分があるけれども、右供述部分は証人松村一朗の証言及び成立に争のない甲第四号証にてらし信用できない。かえつて、成立に争のない甲第三号証、前掲甲第四号証及び証人松村一朗の証言、原告本人の供述によれば「被告会社は、昭和三二年四月二五日、当時の代表取締役であつた寺島清司宅において株券発行の準備を整えたが、原告に対し株券を発行する旨の通知を発する前に、訴外株式会社北海道相互銀行の執行委任を受けた執行吏玉田憲二が右寺島清司方に臨み、前記原告名義の株券を差押えた」ことを認めることができる。
してみれば、前記強制執行は、原告名義の株券として効力を生ずる前になされたもので、有効な株券に対する強制執行としての効力を有するものではないといわざるをえない。したがつて原告は、右強制執行により被告会社の株主たる地位を失つたものということはできない。被告会社の抗弁は採用できない。
三、以上によつて明らかなように、原告は、なお、被告会社の株式二、〇〇〇株を有する株主たるの地位にあるものというべく、原告の本訴請求は理由がある。
よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。