大判例

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釧路地方裁判所網走支部 昭和41年(わ)98号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(準強盗罪の訴因について)

本件訴因のうち準強盗に関する部分は、被告人が判示のとおりネツカチーフを窃取したが目的の金員がなかつたので帰宅を待つて所携の柳刃庖丁で金員を強取しようと企て、寝室続きの物置内に身を潜め待機中、翌一六日午前〇時ころ、帰宅した石岡睦子及び金沢信彦に発見されたため、逮捕を免かれる目的で、物置の扉を引き開けた金沢に対し、同所内から右柳刃庖丁を突きつけ、同人を脅迫した、というのである。

そこで判断するに、<証拠>によると被告人は判示のとおり、金沢に向かつて庖丁を突き出して脅迫したことが認められる。そうして、右の脅迫は逮捕を免れるためになされたものであることは外形上明らかであるけれども、その程度が反抗を抑圧するに足りる程度のものであるかどうかは単に鋭利な刃物を突き出したとの一事により決せられるものではなく、当時の具体的状況に徴して判断すべきであるところ、前記証拠によると、被告人は判示のとおり物置に隠れていたが金沢から扉を開けられそうになるや、発見されるのをおそれて内側の桟を両手で掴んで引つ張り扉が開かないようにしていたが外から力まかせに引き開けられたため発見されてしまつたので、やむをえずかたわらに置いていた柳刃庖丁をもつてとつさに金沢の方に向けて無言で突き出したこと、一方金沢は、物置に被告人が隠れており庖丁を突き出して来たのを発見して驚いたが、とつさに半開きになつた扉を足で蹴つて閉め、外から押さえつけて被告人を閉じこめてしまつたこと、その間の行動は殆ど一瞬のうちになされたものであり、従つて庖丁を金沢に向かつて突き出したといつても、扉が開けられた瞬間に、わずかに扉の隙間から、刃先が外部にのぞいた程度であるにとどまり、被告人が庖丁を金沢の身体に突きつけたり或いはふり廻すなどの行動に出る余裕は全くなく、又そのような事実はなかつたこと(ちなみに右物置は高さ約一メートル、幅約六九センチメートルで内部もさほど広くなく、大人はかがみ込まなければ入れない程度のもので、被告人は身体の自由を制約された状態にあつたことは明らかである。)被告人は、扉を外から押さえつけられるや、完全に逃走をあきらめ、まもなく、かけつけた警察官によつて現行犯逮捕されたこと、がそれぞれ認められる。

証人金沢信彦の証言中、庖丁を脇腹近くに突きつけられたとの部分は右認定の経過に徴し措信できない。

以上認定した事実によつて脅迫の程度を考えると、本件庖丁が鋭利な刃物であり、かつ時間が深夜であつたことを考慮しても、なお金沢の反抗を抑圧するに足りないものと認めざるを得ないから本件は準強盗ではなく窃盗罪と脅迫罪(暴力行為等処罰ニ関スル法律一条違反)の併合罪と認められるが、準強盗は講学上結合犯と呼ばれるもので、窃盗及び脅迫の両罪を一罪のなかに包含するものであるから準強盗罪の訴因に対し窃盗罪及び脅迫罪の二罪を認定しても、被告人の防禦に不利益を生じないので訴因変更の手続を要しないことは当然である。(小泉祐康)

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