大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎地方裁判所 事件番号不詳 判決

右被告人等に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官某が関与して、審理を遂げ、左の如く判決する。

主文

被告人丸に製綱株式会社を罰金弐百万円に処する。

被告人西島国夫を懲役六月及び罰金弐拾万円に処する。

被告人田尻英章、同勝木忠雄を各懲役四月に処する。

但し被告人西島国夫、田尻英章、同勝木忠雄に対しこの判決の確定した日からそれぞれ三年間右懲役刑の執行を猶予する。

被告人西島国夫が前記罰金を完納することができないときは、金四百円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人丸に製綱株式会社、同西島国夫、同田尻英章、同勝木忠雄の連帯負担とする。

理由

被告人丸に製綱株式会社は新古ロープの買付、加工及び製造販売を目的として、昭和二十二年十一月二十日設立されたもので、被告人西島国夫は同会社の代表取締役、被告人田尻英章は同会社の資材係、同勝木忠雄は同会社の経理係であるが、昭和二十三年六月被告会社の増資に際し新株中三万株の引受人がなく、中部悦良に懇請して同人を名義上の引受人として該三万株の株金百五十万円を同人より立替を受けたので、その立替金の償還資金に窮し、且つ被告人西島国夫が同会社の用務上しばしば東京その他に出張するについて旅費及び交際費等多額の費用を要するところから、被告人西島国夫、同田尻英章、同勝木忠雄は被告会社の業務に関し共謀の上、被告会社の売上金等の収入の一部を同会社の経理より除外し、これを以て右立替株金の償還及び旅費交際費等に充当するとともに、かくして被告会社の法人税を免れようと企て、

(一)  被告会社が日本紙業株式会社に対し

(イ)  昭和二十三年五月二十二日頃売渡した屑ロープ八千二百七十五貫七百匁の代金百二十六万七百四十二円

(ロ)  同年七月十九日頃売渡した屑ロープ八千六百貫の代金百十二万九千三百八十円

(ハ)  同年八月二十五日頃売渡した屑ロープ六千九百七十貫の代金百二十五万円

(ニ)  立替保険料二万二千八十円、合計金三百六十六万二千二百二円をその頃受領しながら、被告会社の正規の帳簿にはその内金九十二万九千七十円八十一銭を記帳しただけで、残金二百七十三万三千百三十一円十九銭を脱漏し(但しこの脱漏金の内金二十七万七千八百八十九円十九銭は後記(二)の別口預金に含まる)

(二)  尚被告人西島国夫名儀の東京銀行チエーン預金及十八銀行北支店普通預金、被告人田尻英章名儀の勧業銀行長崎支店旭町詰所普通預金等の別口預金口座を設けて被告会社のロープ等の売上金の一部を預入れ、又は被告会社より株式会社丸三船具店に売渡したロープ等の代金について別口勘定を設けて、それぞれ被告会社の経理と別途の経理をなし、その売人金及金利等の収入合計百十四万二千三百三十九円六十七銭より出張旅費その他の必要費等の支出合計金五十五万千九十一円四十五銭を控除した残額金五十九万千二百四十八円の別途利益金を脱漏し

昭和二十二年十一月二十日より昭和二十三年九月三十日に至る被告会社の法定事業年度の法人税確定申告をなすに際し、同年度の普通所得額は金三百七十二万四千四百九十八円であるのに、その内前記(一)の脱漏額から、(二)の別口預金に包まるゝ金額を控除した残額と、(二)の脱漏金額との合算額に相当する金三百四万六千四百九十円の普通所得を秘匿し、同年度普通所得を金六十七万八千八円と詐つて同年十一月三十日頃所轄長崎税務署に該確定申告をなし、以つて不正の行為によつて法人税金百五十七万四千六百二十円を免れたものである。

証拠

一、被告会社の登記簿謄本(検第一号の一二)、同定款(検第二号)

一、証人張間博視、同中山栄馬、同中村百則の当公廷における証言。

一、日本紙業株式会社芸防工場原簿写(検第四号)、富士銀行長崎支店及び十八銀行北支店の各証明書(検第五号の一、二)、被告会社の領収証(検第六号の一乃至三)

被告人西島国夫、同田尻英章、同勝木忠雄名義の各預金通帳及び被告人西島国夫名義のチエーン預金残高内訳証明書(検第九号の一乃至五)

一、被告会社の原簿(検第七号)

一、別口収支明細表(検第八号)、会社計算の納税額と調査税額対照表等の綴(検第十号)及び損益表(検第十一号)

一、被告会社の法人税確定申告書(検第三号)

一、証人佐谷登の当公廷における証言。

一、検察官作成の被告人勝木忠雄、同田尻英章、同西島国夫の各供述調書(検第十二号の一乃至三)

適条

被告人西島国夫について法人税法第四十八条第一項第二項、刑法第六十条、第二十五条、第十八条、刑事訴訟法第百八十一条第一項、第百八十二条。

被告人田尻英章、同勝木忠雄について法人税法第四十八条第一項、刑法第六十条、第二十五条、刑事訴訟法第百八十一条第一項第百八十二条。

被告会社について法人税法第五十一条、第四十八条第一項、刑事訴訟法第百八十一条第一項、第百八十二条。

(尚本件は、判示のような事情で多額の資金を要し、しかも被告会社の経理上これを支出することができなかつた為、事業拡張に焦慮した結果本件犯行を為すに至つたもので、直接脱税を目的としたものでないこと、被告会社は今や拡張計画がなつて水産業界等の要望に添うべく本格的にロープ等の製造に着手せんとしている際被告人等が脱落することがあれば相当多きい影響があると考えられること、被告人等の改悛の情も顕著であること等の事情を参酌して懲役刑の執行を猶予した)。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!