大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

長崎地方裁判所 昭和33年(む)2号 判決 1958年2月06日

被疑者 馬場義治 外四名

★ 決定

(被疑者氏名)(略)

右の者等に対する威力業務妨害被疑事件に付、長崎地方裁判所裁判官上治清が昭和三十三年二月六日なした検察官の勾留延長請求に対する却下決定に対し、検察官から別紙理由に基き準抗告申立があり、当裁判所はその申立を理由ありと認め左のとおり決定する。

主文

長崎地方裁判所裁判官上治清が昭和三十三年二月六日為した勾留期間延長請求却下の決定はこれを取消す。

右被疑者等に対する各勾留はこれを三日間(昭和三十三年二月七日より昭和三十三年二月九日迄)延長する。

(裁判官 臼杵勉 入江啓七郎 田中正一)

★ 別紙

本件は事案重大複雑且つ微妙にして本件に関与しおりたる多数のピケ隊員その他当局関係者等について綿密周到なる取調をなし、事案の真相を明らかならしむべきことは当然の事理に属するところであるが現在迄の捜査の経過によれば本件ピケ隊員に対する取調は容易に進捗せず、ピケ隊員六十二名のうち漸く十七名の取調を了し得たる状況である。

而して右の如くピケ隊員の取調が渋滞せる理由は専ら捜査妨害に起因するものであつて、即ち取調未了ピケ隊員の中には、

1、出頭を拒否するものあり、

2、数回の呼出に応じて辛うじて出頭するも供述を拒否するものあり、

3、供述するも供述調書に署名捺印を拒否するものがある、

等の実情であるが、これについてはピケ隊員が右の如き戦術態度に出ることを使嗾するものありて、その使嗾者はピケ隊員に対し、右の如き方法態度に出づべき旨を書面により指示し、或はピケ隊員を一定の場所に参集せしめて口頭指示を与える等の手段を講じたる事実が判明したものである。

然れども検察官においてはこれ等ピケ隊員に対して極力その出頭を求め或はその居住場所に赴いて努めて事理を説きその任意の供述を求めることに努力しつつあり、斯る努力は前記の如く事案の真相を見極める為には極めて肝要のことと思料されるのみならず、前記の如き事情に照らせば若し被疑者等を釈放せんか、被疑者等に対する取調べ内容がピケ隊員に発表流布されて通謀を促し今後の捜査に支障があるばかりでなく、ピケ隊員に対する捜査妨害についての指示が愈々活溌となり捜査の収束は到底望み得ざるものと思料されるので勾留延長の要がある。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例