長崎家庭裁判所上県出張所 平成15年(家)23号 審判 2003年9月17日
主文
申述人の本件申述を却下する。
理由
1 申述人の本件申述は、平成15年5月29日に当裁判所になされたものである。
一件記録によれば、被相続人甲野次郎は平成14年3月27日に死亡しており、申述人は被相続人の母親であること、先順位の相続人である被相続人の子供3名全員と被相続人の配偶者甲野葉子は既に相続を放棄していること、が認められる。
2 また、一件記録によれば、前記先順位の相続人らの相続放棄の理由は、いわゆる「カネミ油症事件損害賠償訴訟」に関して、被相続人が国に対し受領した仮払金の返還義務を負担していたことが主たるものであることが認められるところ、申述人はこれらの債務負担の経緯や前記第1で記載した先順位の相続人の相続放棄の事実を平成15年1月ころには知っていたことが認められるのであり、申述人は、その時点において、自らが相続人となる原因たる事実及び被相続人に債務があることを知っていたということになる。
なお、申述人は農林水産省から相続放棄の意向確認の書面が来なかったので相続放棄の手続きをとらなかった旨述べているところであるが、この事情は債権者から請求がなかったというものにすぎず、この事情をもって熟慮期間内に相続の放棄が困難な事情があったと評価することはできない。
3 以上によれば、本件申述についての相続放棄の熟慮期間は、遅くとも平成15年2月から進行するというべきであり、本件申述は、申述人において、相続放棄の熟慮期間になされたものであるから、主文のとおり審判する。