長崎家庭裁判所佐世保支部 事件番号不詳 決定
少年 M子(昭一七・二・二七生)
(処分結果)不処分決定
(理由の要旨)改悛の情顕著で問題点である家族関係が調整され保護の必要性がない。
(裁判官 杉山忠雄)
(別紙) 地裁の公判調書(昭三五・五・三〇公判 長崎地裁佐世保支部 裁判官 林繁)
人定質問
氏名は M子
年令は 昭和一七年二月二七日生
職業は 無職
住居並本籍は起訴状記載のとおり
被告事件に対する陳述
被告人
起訴状に記載してある事実はそのとおり相違ありませんので別に申し上げることはありません。若し本件で処罰されても致し方ありません。
弁護人
被告人が申述べたところと同意見で別に陳述することはありません。
簡易公判手続
裁判官
簡易公判手続により審判する旨決定
証拠調
別紙証拠関係カード記載のとおり
被告人の供述
別紙被告人供述記載のとおり
検察官の意見
本件公訴事実について取調べた各証拠によりその証明十分である、被告人の家庭においては姉も本件同様のことをやつており当時被告人方に下宿していた女についても同様で環境がよくない。再犯のおそれがあると思うので被告人を懲役四月に処するを相当と思料する。
弁護人の意見
本件公訴事実については被告人が認めているとおりであるが、ただ情状として検察官意見のとおり被告人の環境がよくなかつたことである、当時の状況からそうせざるを得なかつたものと思う、被告人が素行不良だつたという事実は被告人が述べているように知り合いの人が他人の傘をとり、それを売つて被告人は食事をさせてもらつたということで被告人の態度等から推して素質は悪くないようである、被告人は以前に男女関係がありその男は仕事は非常に真面目であるが家の為、子供の為の生活費は全然くれんので生活に困り非常に迷惑していた、そういうことから被告人は自暴自棄になり本件を起す結果となつてしまつたのである、その後被告人はまじめになると言つており、姉は漁師の夫と結婚し、それは田舎の青年が姉に同情して家庭をもつたのであるが、一生懸命に働くまじめさで一人で多人数の生活をみている。被告人も環境を変えさせる為保釈後は半農半漁をしている姉の家にやり百姓の手伝をさせている、被告人が述べているとおり今後はまじめな生活に入ると思うので諸般の事情御斟酌の上寛大な処分をお願いします。
最終陳述
被告人
今後は一生懸命百姓をしようと思います、二度とこういうことは致しません。
裁判官
本件を長崎家庭裁判所佐世保支部に移送する旨決定
理由
被告人は起訴状記載のような犯罪を行つたものでこのことは現行犯人逮捕手続書、被告人の検察官、警察官に対する各供述調書により認められ売春防止法第五条第三号に該当するところ、少年の前歴は誠に微々たるもので眼中におく必要もなく、前科もない、ところで本件の罪質、情状を考え被告人の環境、その不良性の程度を併せ考えるとき、適切な保護処分の必要は痛感されるがこの少年に対し刑事処分を以て望むとの説には当裁判所は賛成致しかねるので少年法第五五条を適用して右のとおり決定する。
(昭和三五年五月三一日 長崎地方裁判所佐世保支部 裁判所書記官補 原口龍太郎)
(起訴状記載の公訴事実)
被告人は昭和三十五年三月十二日午後七時四十分頃、佐世保市○○町○○番地長崎○○自動車株式会社前道路上において、売春をする目的をもつて、赤色のコートを着て数人の街娼婦と共に通行中の外国人に対し呼び止めたり、寄り添つたりして、公衆にふれるような方法で客待ちをしたものである。