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長崎家庭裁判所佐世保支部 昭和43年(少)46号 決定 1968年1月31日

少年 B・M(昭二三・七・一七生)

主文

この事件を長崎地方検察庁佐世保支部検察官に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、全日本学生自治会総連合に所属するものであるが、米国原子力航空母艦エンタープライズを中心とする原子力艦艇の佐世保寄港を実力によつて阻止しようと企て、学生ら多数と共謀のうえ

第一  1 昭和四三年一月○○日午後二時三〇分ころから同日午後二時四〇分すぎころまでの間、長崎県佐世保警察署長の許可をうけないで、佐世保市○○町○番○○号先○○交差点から国際通りを経て同市△△町○番地先○○○橋上に至るまでの道路上において、右学生ら数百名とともに、長さ約一メートルないし二メートルの角棒等多数を携え、十数列の縦隊で道路一ぱいに拡がつて駆け足行進等をして、一般交通に著しい影響を及ぼすような集団示威行進を行ない、もつて無許可で道路を使用し

2 同日午後二時四〇分すぎころから同日午後五時ころまでの間、右○○○橋付近道路上において、右学生らの米国海軍佐世保基地侵入行動を阻止するため警戒警備中の長崎県警察原空寄港警備本部西田連隊長崎部隊隊長境宗明、京都部隊隊長中川賢一郎ら各指揮下の多数の警察官に対し、石を投げつけ、角棒をもつて殴りかかる等の暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害し

第二  1 同年一月△△日午前九時一五分ころから同日午前九時二五分ころまでの間、長崎県佐世保警察署長の許可を受けないで、佐世保市□□町○番○号○○銀行□□支店前から国際通りを経て同市△△町○番地先○○○橋上に至るまでの道路上において、右学生ら二〇〇名くらいとともに、道路一ぱいに拡がつてだ行進、うず巻き行進等をして、一般交通に著しい影響を及ぼすような集団示威行進を行ない、もつて無許可で道路を使用し

2 同日午前九時二五分ころから同日午前九時二八分ころまでの間、右○○○橋付近道路上において、右学生らの米国海軍佐世保基地侵入行動を阻止するため警戒警備中の長崎県警察原空寄港警備本部西田連隊長崎部隊隊長境宗明、京都部隊隊長芦田孝男ら各指揮下の多数の警察官に対し、石を投げつけ、角棒等をもつて殴りかかる等の暴行を加え、もつて右警察官らの職務の執行を妨害したものである。

(適用法令)

第一、第二の各1につき道路交通法第七七条第一項第四号、長崎県道路交通法施行細則第一五条第三号、道路交通法第一一九条第一項第一二号、刑法第六〇条

第一、第二の各2につき刑法第九五条第一項、第六〇条

(検察官送致の理由)

少年は、自己の政治的信念に基づく阻止行動であるから、本件各行為について何らやましいところはないと陳述しており、このような政治的確信犯に対しては、少年法の定める保護処分はそもそも不適当といわざるをえない。また、少年の住居が親元を離れた大学の寮であり、半年足らずで成年に達することを考えると、保護処分の実効も到底期待できない。その他本件の罪質等諸般の事情を考慮し、この際刑事処分によるのを相当と認め、少年法第二〇条にしたがい主文のとおり決定する。

(裁判官 藤野岩雄)

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