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長崎家庭裁判所諫早出張所 平成22年(家)284号 審判 2011年2月24日

主文

本件申立てを却下する。

理由

1  申立ての趣旨及び申立ての要旨

(1)  申立ての趣旨

事件本人(養子となる者)を申立人らの特別養子とする。

(2)  申立ての要旨

申立人らは,昭和61年×月×日婚姻した夫婦であるが,実子に恵まれなかった。申立人らは,平成17年×月×日長崎県のaセンターに里親登録をし,平成18年8月,同センターから事件本人(当時3歳9箇月)を紹介された。その後,申立人らと事件本人の交流が続き,同センターは,平成21年×月×日,申立人らに対し,事件本人につき里親委託決定をし,申立人らは,同日,事件本人の委託を受けた。

事件本人と実親子同様の親子関係を成立させることが事件本人の福祉に合致する。よって,本件申立てをする。

2  当裁判所の判断

(1)  一件記録によれば,次の事実が認められる。

ア  申立人らは,昭和61年×月×日婚姻した夫婦であるが,実子に恵まれなかった。申立人らは,特別養子縁組を視野に入れて,平成17年×月×日長崎県のaセンターに里親登録をし,平成18年×月,同センターから事件本人(当時3歳9箇月)を紹介された。

イ  その後,申立人らは,事件本人との間で,面会,事件本人の外出による交流を続け,平成19年×月以降,面会又は月に1ないし5泊の事件本人の外泊による交流を続けていたところ,事件本人は,平成20年○月○日,満6歳となった。同日の直近3か月における申立人らと事件本人の交流は,平成20年×月×日面会,同月×日面会,同年×月×日面会,同月×日から×日まで外泊(1泊2日),同月×日から×日まで外泊(1泊2日),同年×月×日から同月×日まで外泊(2泊3日),同月×日から同月×日まで外泊(1泊2日)というものであった。

ウ  申立人らは,事件本人が満6歳となった平成20年○月○日以降,ほぼ毎週末,1泊2日の外泊により(2泊3日及び4泊5日の外泊もあった。)交流した。

長崎県のaセンターは,平成21年×月×日,申立人らに対し,事件本人につき里親委託決定をした。申立人らは,同日,事件本人の委託を受け同人を引き取ったが,事件本人は,この時点で6歳2箇月になっていた。当初,上記センターは,平成20年×月×日に申立人らに対して事件本人につき里親委託決定をする予定であったが,事情により延期され,その後,委託決定がなされないまま経過し,平成21年×月×日に上記のとおり委託決定がなされたものである。

エ  事件本人は,本件申立て時(平成22年×月×日)において,7歳11箇月になっていた。

(2)  前記(1)の事実によれば,事件本人は,本件を申し立てた時に6歳に達している者であった(7歳11箇月になっていた。)ことが認められるから,6歳に達する前から引き続き養親となる者(申立人ら)に監護されている場合でない限り,特別養子縁組の養子となることができないというべきである(民法817条の5)。

本件についてこれをみるに,前記(1)の事実によれば,申立人らは,事件本人が6歳に達する前から事件本人との間で外泊を含む交流があったことは認められるが,その程度は実質的に「引き続き」の監護があったと評価することはできないものであったのみならず,長崎県のaセンターは,申立人らの監護を開始させるための里親委託決定を平成20年×月×日に行う予定であったが,これを延期し,事件本人が満6歳に達した平成20年○月○日当時は,上記延期後,上記委託決定を行わない状態を続けているときであったことに照らせば,上記交流の事実をもって,申立人らが事件本人につき「引き続き」の監護をしたと認めることはできず,他に申立人らが上記委託決定を受けた平成21年×月×日より前に事件本人の監護を開始したことを認めるに足りる証拠はない(前記(1)の事実によれば,申立人らが事件本人につき監護を開始したのは平成21年×月×日であることが認められる。)。

したがって,事件本人については,6歳に達する前から引き続き養親となる者(申立人ら)に監護されている場合に当たるとはいえないから,特別養子縁組の養子となることができないというべきである。

(3)  以上の次第で,本件申立ては,理由がないのでこれを却下することとし,主文のとおり審判する。

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