長野地方裁判所 平成6年(行ウ)6号 判決
原告
宮本誠こと 鄭榮寛
被告
長野県知事 吉村午良
右訴訟代理人弁護士
宮澤健治
同
田下佳代
右訴訟復代理人弁護士
中嶌知文
右指定代理人
土屋嘉宏
同
神田稔
同
松本和民
同
野口安美
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 キャンピング車についての税率区分の不存在について
〔証拠略〕によると、被告は、本件処分に当たり、キャンピング車である本件自動車は、条例五七条一項一号ないし四号所定の乗用車、トラック、バス又は三輪の小型自動車のいずれにも属さないものの、その用途、構造・設備、総排気量、乗車定員の諸元を参酌して、右の四種の自動車の中では最もバスに近いものと判断し、かつ、そのうち自家用の最低の税率に拠ることとしたものと認められる。
ところで、法は、自動車税の課税客体を、軽自動車税の課税客体である自動車その他政令で定める自動車を除くすべての自動車とし(法一四五条一項)、乗用車、トラック、バス及び三輪の小型自動車の各区分ごとに標準税率を定めた上で(法一四七条一項)、これら以外の自動車等については、道府県がこれら四種の区分とは別の区分を設けて自動車税の税率を定めることができると定めている(同条五項)。ただし、法は、自動車の意義については何らの定義規定も置いていないので、その概念は、根本的には道路運送車両を規律する基本法である道路運送車両法に依拠して定めなければならない。したがって、自動車税の課税客体は、原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具であって原動機付自転車以外のものといい得ることになろう(昭和二九年五月一三日自乙府発一〇九号自治庁次長通達参照)。そうすると、本件で問題とされているキャンピング車は、右の意味での自動車であることは明らかであるから、もともと自動車税の課税客体である自動車に該当することは疑いないところである。したがって、キャンピング車に対する課税は、条例によって創設されたものではなく、そもそも法によって課税客体とされているものということができる。そして、〔証拠略〕によると、キャンピング車の主要な用途は、人を乗せて陸上を移動することに重点があり(就寝用具等の居住のための諸設備は、直接的にはキャンピングという用途のために施されているものであるが、これも結局は人の陸上移動に資するものであり、単なる荷物運搬のための用具ではない。)、しかも、その構造・設備がやや大がかりで、車体及びその重量が通常の乗用車より大きいと認められることに徴すると、法一四七条一項が列挙している区分の中では、バスに近似性があるということができ、その形状次第では、バスに該当するとして課税することが相当な場合もないわけではないと考えられる。また、キャンピング車の具体的な用途が通常のバスとは異なる点に着目して、特種用途車の一種として、法一四七条五項に基づき同条一項が列挙している四つの区分とは異なる取扱をすることも、もとより可能である。その場合、法三条一項によれば、右の特別の区分は条例に定めることが必要であり、また、課税要件明確主義の見地からは、個々の形状区分をできる限り明記した方が望ましいと考えられる。しかしながら、〔証拠略〕によれば、一口に特種用途車といっても、その種類は多岐にわたっていると認められ、そのすべてを条例に明記することは困難であり、そのうちキャンピング車をとってみても、形状・構造・装置が一般的に同一であるとか、不変であると認めるに足りる証拠はなく、現時点及び将来にわたって、これを自動車の中の一つの範疇として明定することが相当であるか否かについては問題がないわけではない。そして、右の諸点に、多種多様な車種をすべて条例に明記し、かつ、形状を異にしたり、新たな用途のための自動車が出現する都度、条例における課税区分を変更することは著しく困難であるという立法技術上の制約があることをも併せ考慮すると、本件の条例のように法が列挙している四種の区分のほかの形状区分については具体的には課税庁が定めるものとしても、やむを得ないものというべきである。そして、このような規定方式による自動車税の賦課も、結局は法一四七条及び条例五七条一項に根拠があるのであり、違法ということはできない。
二 本件処分の合理性について
前判示のとおり、被告は、本件処分に当たり、本件自動車について条例五七条一項五号の定めに基づいて同項三号に定める自家用バスのうち乗車定員が三〇人以下のものに関する税率を適用したのであるが、その判断は、課税庁の裁量に委ねられているものではなく、具体的に列挙された区分を適用した場合との間で均衡を失するなど、不合理なものであってはならないことはいうまでもない。
そこで、この見地から本件処分における被告の判断に合理性が存するか否かについて検討するに、まず、一般的にキャンピング車の形状等がバスに近似しているといい得ることは前判示のとおりである。そして、〔証拠略〕によれば、本件自動車は、乗車定員八人、車両重量三八五〇キログラム、車両総重量四二九〇キログラム、長さ五八七センチメートル、幅二四五センチメートル、高さ三二三センチメートル、総排気量七・五一リットルであると認められる。このような本件自動車の用途、乗車定員、重量、車体の大きさ、総排気量に照らせば、本件自動車は、その形状及び構造・設備の点で通常の乗用車とはかなり異なっており、むしろバスに近似性があるので、被告が本件自動車の税率を定めるに当たって自家用バスに準拠したことは相当であり、また、その中でも最も低額である乗車定員三〇人以下の自家用バスと同様の税率を適用したことも何ら不合理ではない。
三 他の地方公共団体との税額の格差について
憲法一四条一項は、法の下の平等を定めたものであるが、右規定は合理的理由のない差別的取扱を禁止する趣旨であって、事柄の性質に応じて合理的と認められる差異を生じさせることは、何ら右規定に違反するものではない(最高裁昭和三九年五月二七日大法廷判決・民集一八巻四号六七六頁、同昭和六〇年三月二七日大法廷判決・民集三九巻二号二四七頁等参照)。
ところで、本件処分が地方税たる自動車税の賦課決定処分として法及び条例に従った合理的な処分であることは前判示のとおりであるから、これを他のわずかな地方公共団体とだけ比較して不合理な差別ということができないことは明らかである。
原告のこの点に関する主張は、その余の点について検討するまでもなく、理由がない。
四 以上によれば、本件処分は適法であり、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 齋藤隆 裁判官 杉山愼治 古田孝夫)