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長野地方裁判所 昭和42年(ソ)5号 決定 1967年9月22日

抗告人 三井辰男

主文

本件抗告を却下する。

理由

(抗告人の申立および申立の理由)

抗告人は、原決定を取消し抗告人の忌避申立は理由がある旨の裁判を求めた。右抗告の理由の要旨は、原決定理由欄一ないし五(原決定書一枚目表一三行目より三枚目裏八行目まで)記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

(当裁判所の判断)

抗告人主張の各忌避申立理由がいずれも失当であることについての当裁判所の判断は、左記に付加するほか原決定のそれぞれの主張に対する判断と同一であるからこれをここに引用する。

抗告人は、本案(伊那簡易裁判所昭和四〇年(ハ)第一九号根抵当権設定登記抹消登記請求事件。以下同じ。)第八回口頭弁論期日における原告本人尋問調書作成に当り、同裁判所裁判所書記官吉川剛が不実の記載をしたと主張し(原決定書理由欄二記載の点)、また、同書記官が故意に右調書謄本の交付を遅らせたと主張する(原決定書理由欄五記載の点)が、抗告人が右調書謄本を昭和四一年一一月二日に交付を受けたことは、その自認するところであるから、抗告人は遅くとも右同日にはその記載内容を了知していたものというべきところ、右各主張のような事由があって同書記官について裁判の公正を害するおそれがあると考えた場合には、遅滞なく忌避申立をすべきであるに拘らず、前記本案記録に徴すれば、抗告人はその後同書記官立会のもとに開かれた第九回(昭和四一年一一月一六日)および第一〇回(昭和四二年二月八日)各口頭弁論期日において、準備書面を陳述し書証を提出しているのであって、このような経過のもとにおいては、抗告人はすでに右各事由を理由とする同書記官に対する忌避権を失っているものとみるべきである。また、そうであるとすれば、第八回口頭弁論期日より前の期日に施行され調書作成ずみの証人尋問調書についての事由も適法な忌避申立の理由とはなしえないものといわなければならない。けだし前記第八回口頭弁論調書作成およびその謄本交付につき同書記官に裁判の公正を害するおそれがあると考えて忌避申立をすべきかどうかを決意するにあたっては、それよりも前に施行された口頭弁論調書を閲覧するのが自然であり、またそれを要するとしてもあながち難きを強いることにはならないというべきであって、それをしないで忌避申立をしなかった場合には、右口頭弁論調書についての事由にもとづく忌避権も併せて失ったものとみるのが相当だからである。

してみれば、抗告人の忌避申立は理由がなく、この申立を却下した原決定は相当であって本件抗告は理由がないからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 西山俊彦 裁判官 落合威 清野寛甫)

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