長野地方裁判所伊那支部 昭和31年(ワ)36号 判決
日本相互銀行
証拠を総合すると次の事実を認めることができる。すなわち、原告等主張のように、本件第三目録記載の建物はもと亡飯島与の所有であつたが、同人は大正一三年一月二〇日死亡したので遺産相続が開始し、その相続人は長女原告ふさ子、二女原告与志子、長男被告俊一の三名であり、また本件第一、第二目録記載の各宅地はもと亡飯島ちやう(与の妻)の所有であつたが、同人は昭和三年一月二二日死亡したので遺産相続が開始し、その相続人は前記三名及び訴外三沢はる子(ちやうの子)の四名であり、従つて本件不動産は被告俊一が単独でその処分をすることはできないものであるのに、同被告は原告等に無断で、「原告等が飯島与、同ちやうの遺産相続につき、受くべき相続分がない」旨の原告等名義の証明書を偽造し、はる子の委任によつて作成した、同人名義の、ちやうの死亡による遺産相続につき受くべき相続分がない旨の証明書と共に、これを長野地方法務局伊那支局に提出し、本件各不動産につきそれぞれ自己単独名義の遺産相続による所有権移転登記を受けたが、元来本件不動産は、与及びちやうの前記子女三名又は四名が共同相続すべき遺産であり、四名のうちはる子は前述のとおり、ちやうの遺産につき自己の受くべき相続分がない旨の証明書を作成し、これを行使して被告俊一が同人単独名義の相続登記をなすことを承諾した。従つて右はる子の行為は、被告俊一に対し、共有持分を贈与したものであることを認められるのであつて、以上認定の事実よりすれば、本件不動産中ちやうの遺産である第一、第二目録記載の不動産については原告等の共有持分は各四分の一、被告俊一の共有持分は四分の二であり、与の遺産である第三目録記載の不動産に対しては、原告等及び被告俊一の共有持分は各三分の一であり、被告俊一が自己の右持分を越えてなした前記各登記は、同被告の持分の限度では有効であるが、その余の部分は無効であるといわざるを得ない。ところで被告株式会社日本相互銀行が、被告俊一より本件各不動産につきそれぞれ根抵当権設定登記を受けたことは被告銀行の認めるところであるが、右各不動産についての被告俊一の共有持分が前記のとおりである以上、同人より右各不動産につき根抵当権の設定を受けた被告銀行は、被告俊一の持分のみについて根抵当権の設定を受けたに過ぎず、従つて右各登記は被告俊一の持分の限度においては有効であるが、その余の部分は無効である。
よつて原告等の右無効部分についての登記無効確認並びに抹消登記手続請求は正当であるとしてこれを認容した。