長野地方裁判所伊那支部 昭和34年(ワ)7号 判決
証拠によると、本件貸借については公正証書とは別途に公正証書の記載にかかわらず被告の主張するとおりの利息及び遅延損害金の特約があつた事実を認めることができる。
ところで被告は、右利息及び遅延損害金は利息制限を超えるものではあるが、原告が任意に支払つたものであるから有効な弁済であると主張するので判断するのに、利息制限法第一条は、「利息制限超過の利息の約定は超過分につき無効である。しかし、債務者が制限超過の利息を任意に支払つた場合には、その返還を請求することができない」旨規定し恰かもこのような弁済を結果的に有効とする趣旨であるかの如き観があるけれども、翻つて同法全体の趣旨から見ると、同条の趣旨は「かかる利息の約定は無効であることは勿論、弁済そのものも無効である。しかし、後日に至つて債務者がその返還を請求することは認めない。すなわち、この場合には民法の非債弁済による不当利得返還の規定の適用を排除する」との趣旨に過ぎず、従つて利息制限法による制限超過の利息及び遅延損害金の支払は、たとえ債務者が任意に支払つたものであつても、利息又は遅延損害金の支払としては無効であり、かかる場合超過支払分は元本の存する限り当然元本に法定の充当がなされるものと解するのが相当である。
よつて、右見解の下に本件各弁済金を弁済の都度その日までの二割の制限利息又は四割の制限遅延損害金に充当し、残金を元本に充当する方法によつて計算すると、利息、遅延損害金及び元本を全部弁済した上金千四十六円の過払をしたことになるから、本件金銭消費貸借債務に既に弁済によつて消滅し、これが債務名義たる本件公正証書は失効し、これによる強制執行は許されるべきでないから、その不許を求める原告の請求は正当であるとしてこれを認容した。