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長野家庭裁判所 昭和39年(少)314号 1964年9月04日

主文

少年を長野保護観察所の保護観察に付する。

理由

(虞犯事実)<省略>

(適用法令)

少年法第三条第一項第三三号

(要保護性)

少年の知力(一Q=七三)は、普通域よりはるかに低く従つて判断力に乏しく考え方は自己中心的、依存的、しかも自己顕示性の強い性格で行動も亦社会性に乏しい、しかし元来気の弱い、おとなしい少年であつたが幼時、両親と別れてから生育環境の変遷、特に尼僧寺に住込み、将来尼僧にならんとする少年に対し地域社会の蔑視的遍見から少年は漸次的劣等感を持ち友人、知己等の親愛感を失い孤独的な異状性格が形成し、そして漸次青春期に入るにしたがい知能低格から自己統制が出来ない上に依存感情にひかれ自己を受け入れて呉れる異性に近づき衝動的な行動の現れとして上記の非行に陥つたものである。

よつて少年の所遇について考量するに少年鑑別所における鑑別の結果をみるに、精神障害は認められないが遇奇な異状性格は、かなり高度であるが非行性そのものはいまだそれ程悪化の傾向はみられない従つて少年の希望する愛性と依存を合理的に受け入れる社会資源の協力を得て補導の実を挙げ以て少年の健全の育成を期する為めの保護措置として家庭裁判所調査官の試験観察に付し紡績会社を経営している上田市国分○島○次の同会社へ稼動を約束させると同時に少年の補導を同人に委託して同人に引き取られた当初はかなりの成績を示したが八月の盆休みを利用して長野市に帰り尼寺○○庵を訪ね同庵に宿泊中尼僧との折合を損ねかつ紡績女工に親めないと云い右尼寺を出て旧友をたずねたり野宿をして補導委託先であつた○島方の会社寮に帰るのを拒むに至り、当裁判所は止むを得ず身柄保全の為めに観護の措置を採て少年に反省の機会を与えた結果漸次勤務意欲が現われたが然し少年の要保護性はかなり高度なものと考えられるが改めて収容保護の方途を採ることには不適当のものがあり向後は相当期間強力な保護的措置による専門的指導を施すのが相当であると思料し少年法第二四条第一項第一号少年審判規則第三七条第一項により、主文のとおり決定する。

(裁判官 千種秀夫)

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