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長野家庭裁判所上田支部 昭和40年(家)19号 審判 1965年1月26日

申立人 天野辰男(仮名)

相手方 天野たか(仮名) 外七名

主文

別紙目録記載の不動産は申立人及相手方たかが取得し(共有持分二分の一宛とす)申立人及相手方たかは連帯して

相手方天野花に対し 金二三万二、二八六円

相手方天野久に対し 金二三万二、二八六円

相手方天野みつに対し 金二三万二、二八六円

相手方本田明子に対し 金五万一、六一九円

相手方南田一男に対し 金五万一、六一九円

相手方南田和男に対し 金五万一、六一九円

相手方天野松男に対し 金二三万二、二八六円

を各支払うこと。

本件調停及審判費用は各自の負担とする。

理由

申立人及天野たかの主張

一、本籍長野県○○市大字○○○八七八番地被相続人天野まつ(昭和一八年四月一二日死亡)の相続人又は相続人の相続人は申立人及相手方等並申立外水田シノの十名であつたが水田シノは昭和四〇年一月五日その相続分を申立人に譲渡した。

二、被相続人の遺産は別紙目録記載の不動産である。

三、右不動産は一区画をなし総坪数二七一坪であるが相続人の一人であつた長男天野忠男は事実上右不動産を管理しておつたため自己単独の相続財産であると考えたものの如く昭和三三年頃その一部二二坪を道路用地として○○市へ売渡す契約をした外昭和三六年中その余の部分を安田高男外三名に宅地として売渡又は賃貸契約をし既にそのうち二名は建物を建築してある、よつて本件相続人であると同時に忠男の養子で相続人である申立人及忠男の養子で相続人である相手方天野たかは忠男の右契約上の義務を果したくこれがためには遺産全部を申立人及相手方天野たかが取得しその現時価による評価額を相続分に応じ分配したい。

相手方山田みつ同天野久同天野花の主張

申立人の主張の方法で遺産分割をしたい。

相手方本田明子同南田一男同南田和男の主張

父の遺産が一つもないのでその形見として本件不動産の現物分割を求める。

相手方天野松男の主張

本件遺産の現物分割を求める。

当裁判所の判断

調査の結果及一件記録により次の通り判断する。

被相続人天野まつが昭和一八年四月一二日死亡しその相続人又は相続人の相続人は申立人及相手方等の外申立外水田シノであり(別表系図の通り)水田シノは昭和四〇年一月五日その相続分を申立人に譲渡した結果申立人及相手方等の相続分は別紙相続分表の通りであり被相続人の遺産及その現在における時価は別紙目録の通りであり相続分に応じ遺産を現物分割した場合の分け前又は右時価で評価した場合の分け前は別紙分割表の通りである。

本件遺産たる不動産は○○市内の近年住宅地として発展しつつある場所に一区画をなしており総坪数二七一坪であるが事実上右不動産を管理していた相続人の一人である長男天野忠男は自己の単独相続財産であると考えたものか昭和三三年頃右土地の一部二二坪を道路用地として○○市へ坪当七〇〇円で売渡契約をし昭和三六年中その余の土地を安田高男外三名に宅地として売渡契約(坪当り五、〇〇〇円)又は賃貸契約をしたが共同相続財産であつたため契約履行をすることができないまま昭和三八年五月二九日死亡した。本件相続人の一人であり忠男の養子であつてその相続人でもある申立人及忠男の養子であつてその相続人である相手方天野たか(申立人妻)は忠男の右契約上の義務を果さんとして遺産分割の協議をしようとしたけれども協議ができなかつたので遺産分割の調停を申立てたが調停が成立せずして本審判に移行したものである。しかして本件遺産分割については相手方本田明子同南田一男同南田和男同天野松男の外は本件不動産を申立人及相手方天野たかに取得させて忠男の契約上の義務を履行させその代り申立人及相手方天野たかがその他の者に時価で相続分に応じた金員の支払をすることの意見であり右四名のみが現物分割を主張するものであるが、

本件不動産は総坪数二七一坪であつてこれを現物分割をするとすれば相手方本田明子同南田一男同南田和男の分け前は各約九坪であり宅地としても農地としても全く利用価値がないので同人等がこれを形見として所有したいとの主張は相当でない又相手方天野松男の分け前も僅か約三九坪に過ぎず前と同様宅地又は農地としても殆んどその価値がなくしかも同人は長く○○市を離れて暮し現在○○汽車製造株式会社に組立工として勤務する長男義男と生活を共にし埼玉県○市の新築家屋において自らは既に六八歳の老齢のため若干内職をして余生を送つており特に本件遺産のうちの僅少な土地を必要とする事情がなく真相は単に親兄弟との過去の感情のもつれから殊更現物分割を主張しているにすぎないものである。

よつて以上諸般の事情を考慮して主文の通り審判する。

(家事審判官 草深今朝重)

相続系図<省略>

相続分表

申立人 天野辰男 六三分の一六・五

相手方 天野たか 六三分の四・五

〃   天野松男 六三分の九

〃   山田みつ 六三分の九

〃   天野久  六三分の九

〃   天野花  六三分の九

〃   南田一男 六三分の二

〃   南田和男 六三分の二

〃   本田明子 六三分の二

目録(遺産の不動産)省略

相続分に応じた遺産分割表

相続人氏名

現物分割取得坪数

時価分割取得金員

天野辰男

天野たか

天野松男

山田みつ

天野 久

天野 花

南田一男

南田和男

本田明子

七〇・九五坪

一九・三五坪

三八・七坪

三八・七坪

三八・七坪

三八・七坪

八・六坪

八・六坪

八・六坪

二七〇・九坪

四二万五、八五六円

一一万六、一四三円

二三万二、二八六円

二三万二、二八六円

二三万二、二八六円

二三万二、二八六円

五万一、六一九円

五万一、六一九円

五万一、六一九円

一六二万六、〇〇〇円

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