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長野家庭裁判所松本支部 平成8年(少ハ)6号 決定 1997年1月16日

少年 K・J(昭和56.2.2生)

主文

1  窃盗、詐欺保護事件につき、少年を中等少年院に送致する。

2  本件戻し収容申請を却下する。

理由

第1窃盗、詐欺保護事件について

(罪となるべき事実)

少年は、

1  平成8年12月5日午前8時20分ころ、長野県北安曇郡○○町○○××番地○○駐車場において、料金支払いの意思も能力もないのに、あるように装って○○株式会社(代表取締役A)に所属してタクシー営業中であった運転手Bに対し、「○△までお願い。」などと申し向け、同運転手に料金の支払いを受けられるものと誤信させ、その自動車に乗車し、同日午前8時45分ころまでの間、同県南安曇郡○△町○○××番地×○○前の駐車場まで運転走行させ、よって、右区間の料金相当額(4230円)の財産上不法な利益を得、

2  C、D、Eと共謀の上、同月7月午前10時15分ころ、同町○△××番地○○商店において、同店経営者F所有の現金1万5000円及び封筒3枚を窃取した。

(法令の適用)

1について 刑法246条2項

2について 刑法60条、235条

(処遇の理由)

1  少年は、平成8年10月31日中等少年院を仮退院した直後から、保護観察所の指導に服さず、かねてからの問題点であった不良交友を自ら積極的に再開し、不良仲間とともに連日シンナーを吸入したり、自動二輪等の暴走行為を繰り返す一方、職に就かず、きままな生活を送る中で本件非行に至ったものであり、その仮退院中の行動には更生の意欲が感じられず、非行性は進んでいる。少年の性格的問題点として社会性が未熟で、身勝手で自己本位であり、行動の統制力も乏しいこと等があげられるが、少年自身は、自分自身の問題点になかなか目が行かず、他罰的、なげやりな面が見られ、本件非行後の内省も不十分である。

2  少年は、父母の離婚により父と同居しているが、少年は、仮退院後、父に暴力を振るう等して脅して頻繁に現金を持ち出しており、父親の指導は全く聞き入れない。父子関係は、深刻な状態であり、家庭の監督は全く期待できない。

3  以上のような少年の問題点、内省の程度、家庭の監護能力等を考慮すれば、少年の更生のためには、少年院において、更生の意欲を高めるよう配慮しつつ、じっくりと系統的な矯正教育を施す必要がある。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して主文第1項のとおり決定する。

第2戻し収容申請事件について

(申請の理由の趣旨)

少年は、平成8年10月31日中等少年院から仮退院し(仮退院期間平成13年2月1日まで)、現在長野保護観察所の保護観察下にあるが、

1  同年12月6日及び9日の2回にわたり、長野県南安曇郡○△町○○××番地×ハイツ○○×××号において、実父のGに対して、手拳で殴打する暴行を加え、

2  前記(罪となるべき事実)2記載の窃盗を犯した。

以上の行為は、犯罪者予防更生法34条2項所定の一般遵守事項2号及び同法31条3項に基づく特別遵守事項3号(他人の金品に手を出さないこと)に違反したものであり、仮退院後数日にして従前の不良仲間との交際を復活させ、徒食生活を続け、保護観察による指導も忌避するなど、もはや社会内処遇は困難であり、少年を中等少年院に戻して収容する必要がある。

(当裁判所の判断)

仮退院後の遵守事項違反の事実、少年の生活状況等は、申請の理由の趣旨記載のとおりと認められ、少年を中等少年院に収容する必要があるが、本件窃盗、詐欺保護事件につき、少年を中等少年院に送致する以上、戻し収容の必要性を欠くに至ったので、主文2項のとおり決定する。

(裁判官 藤澤孝彦)

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