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青森地方裁判所 平成10年(わ)103号 判決 1998年11月11日

主文

被告人を懲役二年六月に処する。

未決勾留日数中五〇日を右刑に算入する。

理由

(犯罪事実)

被告人は、平成一〇年六月二五日、知り合ったばかりの甲野花子(当時一七歳)をドライブに誘い、同日午後六時二〇分ころから自己が運転する普通乗用自動車の助手席に同女を乗せて青森市内を走行中、劣情を催し、少しくらい抵抗しても無理矢理にでも同女を姦淫しようと企て、同日午後八時一五分ころ、同市大字大谷字小谷地内北奥幹線新設工事第七工区共同企業体送電線工事車両用待避所に駐車した同車内において、同女の上に覆いかぶさり、その両手首を手で掴んで同女の体側に押しつけるなどの暴行を加え、「うるせえ、この。」、「おっかねより、気持ちいいほういいべ。」などと申し向けて脅迫し、その反抗を著しく困難ならしめて、強いて同女を姦淫し、その際、同女に対し、全治まで約一週間を要する膣裂傷の傷害を負わせたものである。

(証拠)<省略>

(法令の適用)

被告人の判示所為は、刑法一八一条(一七七条前段)に該当するところ、所定刑中有期懲役刑を選択し、なお犯情を考慮し、同法六六条、七一条、六八条三号を適用して酌量減軽をした刑期の範囲内で、被告人を懲役二年六月に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中五〇日を右刑に算入することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑事情)

本件は、被告人が、いわゆるナンパをしてドライブに誘った高校生である被害者を強姦し、その際全治まで約一週間を要する傷害を負わせたという事案である。その動機は、被害者が自分の好みでスタイルが良いことから、どうしてもセックスをしたいと思い、少しくらい抵抗されても無理矢理姦淫しようと考えたなどという身勝手極まりないもので、何ら酌むべき点は認められない。犯行態様は、被害者の抵抗を少なくしようと、犯行現場に向かう途中で暴走族の知り合いに電話をしたように装い、被害者の希望地まで送る振りをして、人気が無く暗い鬱蒼とした林道に連行した上で、性体験がないから止めて欲しいと哀願し、必死に抵抗する被害者に暴行・脅迫を加えて、約三〇分間にわたって姦淫したという狡猾かつ悪質なものである。本件犯行が被害者に与えた恐怖感及び肉体的苦痛はもとより、男性経験のない被害者が被った精神的な打撃も大きいことが認められる。加えて被告人は、口止めをしようと本件犯行中に被害者の写真を撮った振りをしたり、犯行後も被害者と更に性的な関係を結ぼうとしつこく電話をかけ、写真をばらまく旨被害者のPHSにメッセージを送るなどしており、こうした被告人の行動により被害者が被った精神的な苦痛も無視できない。被害者及び被害者の母親が、捜査機関に対し被告人の厳重処罰を希望したのは当然である。以上の点などを考慮すると、被告人の刑事責任は相当に重い。

したがって、被害者の母親に対して一〇〇万円を支払って示談が成立し、同人は、裁判所に対し被告人の寛大な処分を求めていること、本件の傷害の程度は全治まで約一週間であること、被害者が被告人と知り合ったその日に安易にドライブに行くことに応じたことが、被告人が被害者と性的交渉をもとうと決意するきっかけとなったことは否めないこと、被告人は本件を反省し、今後はいわゆるナンパもしないと誓っていること、被告人にはこれまで前科がないこと、被告人の母親及び妻が今後の被告人の監督を約束していること等被告人に有利な事情も認められるが、これらの事情を最大限考慮してもなお、刑事責任の重大性に鑑みると、執行猶予を付すべき事案とは認め難く、酌量減軽をした上で、主文の刑に処するのが相当である。

(裁判長裁判官 鈴木浩美 裁判官 井上秀雄 裁判官 小池健治)

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