青森地方裁判所 平成13年(ワ)109号 判決 2002年7月31日
原告
畑中正平
ほか一名
被告
成田達
ほか二名
主文
一 被告成田達及び同成田賢一は、原告畑中正平に対し、各自金六二五万七六一一円及びこれに対する平成一二年一〇月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告成田達及び同成田賢一は、原告畑中シノブに対し、各自金五三五万七六一一円及びこれに対する平成一二年一〇月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らの被告成田達及び同成田賢一に対するその余の請求並びに被告藤原幸次に対する請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、原告らと被告成田達及び同成田賢一との間においては、原告らに生じた費用と同被告らに生じた費用の各五分の一を同被告らの負担とし、その余を原告らの負担とし、原告らと被告藤原幸次との間においては、全部原告らの負担とする。
五 この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告畑中正平に対し、各自金三六五三万八五七一円及びこれに対する平成一二年一〇月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告畑中シノブに対し、各自金三一四八万八五五五円及びこれに対する平成一二年一〇月三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、後記の自損交通事故により死亡した畑中琢実(以下「亡琢実」という。)の両親である原告らが、運転者である被告成田達(以下「被告達」という。)及びその父親である被告成田賢一(以下「被告賢一」という。)に対して、民法七〇九条に基づき、保有者である被告藤原幸次(以下「被告藤原」という。)に対して、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、損害賠償の請求をしている事案である。
一 前提事実(かっこ内の証拠等により認められる)
(1) 本件事故の発生
亡琢実(昭和五九年七月一一日生、死亡当時一六歳)は、次の交通事故により死亡した(争いのない事実、甲一、二、丙一、以下「本件事故」という。)
ア 日時 平成一二年一〇月三日午前三時二五分ころ
イ 場所 青森県むつ市大字田名部字赤川ノ内並木四二番地一一四六先路上
ウ 事故車両 普通乗用自動車(青森五六そ九九五七号、以下「本件車両」という。)
エ 事故態様 被告達が、亡琢実及び小管愛を同乗させて、本件車両を運転中、本件車両を道路の進行方向右側の電柱に衝突させた。その結果、助手席に同乗していた亡琢実が頭蓋骨骨折等により死亡し、後部座席に同乗していた小管愛が両大腿骨骨折等の傷害を負った。
(2) 相続
原告らは、亡琢実の父母として、亡琢実の損害賠償請求権を二分の一ずつ相続した(甲四)。
(3) 損害の填補
原告らは、自動車損害賠償責任保険から、三〇〇〇万円の支払を受けた(争いのない事実)。
二 争点及びこれに対する当事者の主張
本件の争点は、(1)被告らの責任の成否、(2)賠償すべき損害、(3)過失相殺等による減額の有無であり、これに対する当事者の主張は次のとおりである。
(1) 被告らの責任の成否
(原告らの主張)
ア 被告達は、本件当時一六歳で運転免許を有していないにもかかわらず、本件車両を運転し、前方注視を怠り、かつ、ハンドル操作を誤って、本件事故を惹起させたのであるから、民法七〇九条により、原告らが被つた損害を賠償する責任がある。
イ 被告賢一は、被告藤原から委託を受けて本件車両を預かり、自宅の庭に保管していたのであるから、被告達その他の第三者が無断で本件車両を持ち出すことのないように保管すべき義務があったのに、これを怠った。また、被告賢一は、本件事故当時、被告達が一六歳の未成年者であり、その親権者であったのだから、被告達が本件車両を無免許で運転することのないよう監督すべき義務があったのに、これを怠った。したがって、被告賢一は、民法七〇九条により、原告らが被った損害を賠償する責任がある。
ウ 被告藤原は、本件車両の所有者であるから、自賠法三条の運行供用者として、原告らが被った損害を賠償する責任がある。
なお、被告藤原は、亡琢実も共同運行供用者であり被告藤原に対して自賠法三条の他人であることを主張することは許されないというけれども、亡琢実が共同運行供用者であると評価されるべきではないし、また、被告藤原が被告賢一に対して本件車両をその鍵とともに預けていたことなどからすれば、被告藤原は、被告賢一に対し、あらかじめ、同被告が指示する者が運転することを許容し、さらには同被告の唯一の同居者である被告達が運転することをも容認していたというべきであり、責任を免れない。
(被告達及び同賢一の主張)
被告達の責任については争う。また、被告賢一の責任については、被告達らは、被告賢一が寝静まった深夜、同被告に気付かれないようにして本件車両を持ち出したのであり、被告賢一は、被告達らが無免許で本件車両を運転していることをまったく知らなかった。また、被告賢一は、本件車両の鍵をサイドボードの引出しにしまっていたのであり、本件車両の保管義務や被告達の監督義務は尽くしていた。
(被告藤原の主張)
被告藤原は、本件事故当時、自宅の新築のため、本件車両を被告賢一に預けていたのであるが、被告達及び亡琢実は、当時一六歳で無免許であるにもかかわらず、被告賢一に無断で、深夜ひそかに本件車両の鍵を持ち出し、本件車両を交替で運転した上、本件事故を起こしたのである。したがって、亡琢実は、被告達とともに、本件車両の共同運行供用者であり、たとえ被告藤原が本件車両の運行供用者であるとしても、被告藤原の運行支配が間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、亡琢実らのそれは、はるかに直接的、顕在的、具体的である。このような場合、亡琢実は、被告藤原に対し、自賠法三条にいう他人であることを主張して同条による損害賠償を請求することは許されない(最判昭和五七年四月二日判時一〇四二号九三頁参照)。
なお、被告藤原が、被告達の運転を容認していたということもない。
(2) 賠償すべき損害
(原告らの主張)
ア 亡琢実に発生した損害
逸失利益 六四八七万七三一〇円
なお、年収は、賃金センサス平成一一年の男性労働者の平均である五六二万三九〇〇円とし、生活費控除率は三割が相当である。また、一八歳から六七歳まで就労可能とし、中間利息の控除は、六七歳までの就労期間に対応するライプニッツ係数から一八歳までの就労期間に対応する同係数を控除したものが用いられるべきである。
したがって、具体的な計算は、次のとおりとなる。
五六二万三九〇〇円×(一-〇・三)×一六・四八〇=六四八七万七三一〇円
イ 原告畑中正平(以下「原告正平」という。)の固有の損害
葬儀費用 三三九万八九一六円
仏壇・仏具購入費 五七万円
墓地使用料 五〇万円
原告正平固有の慰謝料 一〇〇〇万円
合計 一四四六万八九一六円
ウ 原告畑中シノブ(以下「原告シノブ」という。)の固有の損害
原告シノブ固有の慰謝料 一〇〇〇万円
エ 原告らは、亡琢実の両親として、前記アの亡琢実の損害賠償請求権を二分の一(三二四三万八六五五円)ずつ相続した。
そして、前記前提事実のとおり自賠責保険から支払を受けた三〇〇〇万円は、原告らの損害に二分の一(一五〇〇万円)ずつ充当した。
オ 弁護士費用
原告正平分 四六三万一〇〇〇円
原告シノブ分 四〇四万九九〇〇円
カ よって、被告らは、原告正平に対し三六五三万八五七一円、原告シノブに対し三一四八万八五五五円及びこれらに対する本件事故日である平成一二年一〇月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。
(被告達及び同賢一の主張)
争う。
(被告藤原の主張)
争う。特に、亡琢実の逸失利益の算定に当たり、生活費控除率は五割とするべきであり、原告正平の固有の損害に関しては、葬儀費用、仏壇・仏具購入費、墓地使用料は、総額一二〇万円の限度とされるべきである。
(3) 過失相殺等による減額の有無
(被告達及び同賢一の主張)
亡琢実は、被告達が無免許であることを知りながら本件車両に同乗していたのみならず、その持ち出しを積極的に分担したり、自らも無免許で運転したりした上、本件事故の前、亡琢実の携帯電話に女友達から電話があり、運転しながら携帯電話をかけると危ないため、被告達に運転を交替してもらったのである。したがって、本件車両の運行には、亡琢実にも、被告達と同程度の責任があると考えられ、相当な過失相殺がされるべきである。
(被告藤原の主張)
亡琢実は、被告達の運転が違法で危険なものであることを十分認識していたはずであり、さらに、被告達の危険な運転を放置容認していたのであるから、本件事故の発生には、亡琢実にも重大な帰責事由がある。したがって、損害額の算定にあたっては、この点が斟酌され、相当な減額がされるべきである。
(原告らの主張)
いずれも争う。
第三判断
一 争点(1)(被告らの責任の成否)について
(1) 証拠(甲二、三、五、丙一、被告賢一)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 本件車両は、被告藤原の長女の所有名義となっているが、同女が独立して以降は、実家である被告藤原宅に置いたままとなり、同被告が管理していたものである。
イ 被告藤原は、平成一二年五月ころ、自宅を新築するため、その完成までの間、本件車両を長男の妻の父である被告賢一宅に保管してもらうこととし、以後、本件車両は、被告賢一が自宅の隣の空き地で預かり保管していた。また、本件車両の鍵も、被告賢一が自宅居間の食器棚の引出しに入れて保管していた。
ウ 被告賢一は、平成四年に妻と離婚し、その際長男である被告達の親権者となり、本件事故当時は、被告達と二人で暮らしていた。
被告達は、平成一二年三月に中学校を卒業したが、その後はほとんど仕事に就くことはなく、本件事故当時は無職で、夜間は、夕食を食べては再び外出し、深夜一二時ころに帰ってくるという生活状態にあった。
被告達は、本件事故当時、一六歳で、運転免許を有していなかったが、以前にも自動車を運転したことがあり、本件事故の前日にも、亡琢実や新谷明道ら中学時代の同級生四人とともに、深夜、本件車両を持ち出して、乗り回すということがあった。
エ 本件事故当日である平成一二年一〇月二日から三日にかけての深夜、被告達が、亡琢実と小管愛に対し、本件車両を持ち出してドライブに行くことを誘い、亡琢実と小管愛もこれに応じた。なお、亡琢実も、自ら、前日同乗した新谷明道に誘いの声を掛けたが、同人は、前日の被告達の運転が乱暴で危険であると感じていたため、この誘いを断った。
オ 被告達は、本件車両の鍵が自宅居間の食器棚の引出しに入っていることを知っており、平成一二年一〇月三日午前零時すぎころ、被告賢一が寝静まったのを見計らって鍵を持ち出し、まず、亡琢実が本件車両の運転席に乗り込み、エンジンを掛けないまま、被告達が本件車両を後ろから押していき、自宅から少し離れたところで、被告達が運転席に、亡琢実が助手席に、小管愛が後部座席にそれぞれ乗り込んで、エンジンを掛けて出発した。
カ その後、被告達、亡琢実及び小管愛は、本件車両に乗り、自宅から一〇キロメートル以上離れた石持漁港に到着し、同漁港の広場に本件車両を停めて三人で話をしたり、石を投げたりし、また、被告達は、本件車両を運転してスピンターンの練習をしたりして遊んだ。
キ その後、三人は石持漁港を出発したが、その際は、亡琢実が運転した。亡琢実が運転している途中で、同人の携帯電話に電話がかかってきたため、被告達が再び運転を替わり、亡琢実が助手席に、小管愛が後部座席に乗って走行していた。被告達は、本件事故を起こす手前の道路で、凹凸のある道路を相当の高速度で走らせ、上り坂の頂上付近でジャンプするのが面白いなどと言いながら走行するうち、本件車両が横滑りするような状態になった。
ク 平成一二年一〇月三日午前三時二五分ころ、被告達らの乗った本件車両は、青森県むつ市大字田名部字赤川ノ内並木四二番地一一四六先路上において、被告達のハンドル操作の誤りなどから、道路進行方向右側の電柱に激突した。この事故により、本件車両はその左側を電柱に激突して大破し、亡琢実はまもなく死亡し、小管愛は両大腿骨骨折などの傷害を負った。
ケ 被告達は、本件交通事故についての業務上過失致傷罪等により、青森家庭裁判所に送致され、平成一三年三月五日、少年院送致の決定を受けた。
(2) 被告達の責任について
上記認定事実によれば、被告達は、本件事故当時一六歳で運転免許を有せず、運転技術も未熟であったにもかかわらず、相当な高速度で無謀な運転をしているうち、ハンドル操作を誤った過失により、本件事故を生じさせたものである。
したがって、被告達は、民法七〇九条により、本件事故により原告らが被った損害を賠償する義務がある。
(3) 被告賢一の責任について
被告賢一は、平成一二年五月以降、被告藤原から本件車両をその鍵とともに預かり保管していたものである。
そして、被告賢一は、被告達の親権者として、同被告に対する一般的な監督義務を負っているが、前記認定事実のとおりの本件事故直前の被告達の無職徒遊の状況のほか、証拠(丙一、被告賢一)によれば、被告達は、中学三年生時である平成一一年五月に学校内で乱暴をして補導されたり、翌一二年二月には他校の生徒とけんかをしたことによる傷害の非行歴がある上、同年五月には、原動機付自転車を無免許で運転していた疑いにより、警察から注意を受け、被告賢一もこの件で交番に呼ばれていたことが認められるのであるから、このような事実関係からすれば、被告賢一としては、自宅横の空き地に保管していた本件車両を被告達が持ち出して運転することのないよう、被告達に対する監督を強化するとともに、その鍵の保管には格別の注意を払うべき義務があったものであるところ、本件車両の鍵を自宅居間の食器棚に保管していたというのみでは、この義務を尽くしたとはいえない。
したがって、被告賢一には、被告達に対する監督義務違反が認められ、被告達の前記のとおりの行状や運転免許を有していないことなどをも考慮すると、この義務違反と本件事故の発生との間には相当因果関係がある。
したがって、被告賢一には、民法七〇九条により、本件事故により原告らが被った損害を賠償する義務がある。
(4) 被告藤原の責任について
前記認定事実によれば、被告藤原は、本件車両の保有者として、自賠法三条の運行供用者と認められる余地がある。
ところが、前記事実関係によれば、亡琢実は、本件事故当時、中学時代の同級生である被告達の誘いに応じて、無免許である同被告の運転する車両に同乗したのみならず、本件車両の持ち出しの際には運転席に乗り込んでこれを容易にしたり、石持漁港からは自らも無免許で本件車両を運転し、その後、自己の携帯電話に電話がかかってきたことから、再び被告達に運転を替わってもらったのである。このような事情からすれば、亡琢実は、被告達とともに、本件車両の共同運行供用者の地位にあったものと認められる。
一方、証拠(丙一、被告賢一)によれば、被告藤原は、平成一二年五月に本件車両を被告賢一に預けて以降はこれを使用することもなく、被告賢一にその管理に委ねていたものと認められる。
このような事実関係からすると、被告藤原が本件車両の運行供用者にあたるとしても、同被告の本件車両の運行に対する支配は、間接的、潜在的、抽象的であるのに対し、亡琢実の運行支配は、はるかに直接的、顕在的、具体的であり、このような場合、亡琢実やその相続人である原告らが、被告藤原に対し、自賠法三条の他人であることを主張して同条による損害賠償を請求することは許されないというべきである。
なお、原告らは、被告藤原が、被告達が本件車両を運転することを容認していたと主張するけれども、本件全証拠によってもこのような事実は認められない。
したがって、原告らは、被告藤原に対し、自賠法三条に基づく損害賠償の請求することは許されず、原告らの同被告に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。
二 争点(2)(賠償すべき損害)について
(1) 亡琢実に発生した損害
亡琢実は、死亡当時一六歳であり、健康上の支障はうかがわれないから、生存していれば、満一八歳から満六七歳までの四九年間は稼働し得たものと推定される。また、年収は、賃金センサス平成一二年による男性労働者平均によると、五六〇万六〇〇〇円である。上記期間を通じて控除すべき生活費の割合は五割と認めるのが相当であり、中間利息の控除につきライプニッツ係数を用いて死亡時における逸失利益を算定すると、次のとおり、金四六一九万二〇三八円となる。
五六〇万六〇〇〇円×(一-〇・五)×(一八・三三八九-一・八五九四)=四六一九万二〇三八円
(2) 原告正平の損害
ア 証拠(甲六ないし二四、原告シノブ)によれば、原告正平が亡琢実の葬儀費用、仏壇・仏具購入費、墓地使用料として合計四四六万八九一六円を支出したことが一応認められる。これらの費用のうち、本件事故と相当因果関係がある損害は、一五〇万円と認めるのが相当である。
イ 亡琢実の死亡により原告正平が父として受けた精神的苦痛は、甚大であるものと認められ、これを慰謝すべき金額としては、一〇〇〇万円が相当である。
ウ 原告正平は、亡琢実の父として、前記(1)の逸失利益の二分の一である二三〇九万六〇一九円を相続した。
エ 以上により、原告正平の損害は、合計三四五九万六〇一九円である。
(3) 原告シノブの損害
ア 亡琢実の死亡により原告シノブが母として受けた精神的苦痛は、甚大であるものと認められ、これを慰謝すべき金額としては、一〇〇〇万円が相当である。
イ 原告シノブは、亡琢実の母として、前記(1)の逸失利益の二分の一である二三〇九万六〇一九円を相続した。
ウ 以上により、原告シノブの損害は、合計三三〇九万六〇一九円である。
三 争点(3)(過失相殺等による減額の有無)について
前記一(4)において摘示したとおり、亡琢実は、本件事故当時、無免許である被告達の誘いに応じて本件車両に同乗したのみならず、本件車両の持ち出しを容易にしたり、石持漁港からは自らも無免許で本件車両を運転し、その後、自己の携帯電話に電話がかかってきたことから、再び被告達に運転を替わってもらったのである。また、前記一(1)の認定事実や証拠(丙一)によれば、亡琢実は、前日の被告達の運転が相当無謀で危険なものであることを知りながら、本件事故当日も同乗したものと認められる。
このような事情からすれば、亡琢実は、被告達による無免許運転行為に積極的に加担して危険の発生に寄与し、また、同被告による無謀で危険な運転を容認していたものといわざるを得ず、本件事故の発生については相当の帰責性があるといわなければならない。したがって、過失相殺の規定を類推し、原告らに生じた損害からその四割を減額するのが相当である。
よって、原告正平の損害額は二〇七五万七六一一円、同シノブの損害額は一九八五万七六一一円となる。
四 損害の填補及び弁護士費用
原告らは、自賠責保険から三〇〇〇万円の支払を受けているから、上記各損害額から各一五〇〇万円ずつを控除すると、原告正平の損害額は五七五万七六一一円、同シノブの損害額は四八五万七六一一円となる。
そして、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、原告ら各自につき五〇万円と認めるのが相当である。
以上により、原告らの請求できる損害額は、原告正平につき六二五万七六一一円、同シノブにつき五三五万七六一一円となる。
五 結論
よって、原告らの請求は、被告達及び同賢一に対し、原告正平につき金六二五万七六一一円、同シノブにつき金五三五万七六一一円、及びこれらに対する本件事故日である平成一二年一〇月三日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、上記各被告に対するその余の請求並びに被告藤原に対する請求はいずれも失当であるからこれを棄却することとする。
(裁判官 吉田純一郎)