青森地方裁判所 平成16年(レ)9号 判決 2004年6月15日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
3 控訴人は4万円を国庫に納付せよ。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,控訴人に対し,29万1564円及びこれに対する平成15年12月11日から支払済みまで年36パーセントの割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要
本件は,控訴人が,被控訴人に対し,訴外A(以下「A」という。)に対する貸金について,被控訴人との間で締結した根連帯保証契約に基づき,保証債務の履行を求めた事案である。
原審は,控訴人の請求を棄却したため,控訴人が控訴した。
1 争いのない事実等(争いがないか,証拠上容易に認められる事実)
(1) 控訴人は,Aとの間で,平成12年5月15日,50万円を限度額として金銭をくり返し借り入れることができるとの契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。
(2) 被控訴人は,控訴人との間で,同日,本件基本契約に基づくAの債務について,5年間継続的に連帯保証するとの合意をした。
(3) 控訴人は,同日,Aに対し,本件基本契約に基づき,以下の約定で50万円を貸し付けた(以下「本件貸金債務」という。)。
ア 利息 年39.42パーセント
イ 損害金 年40.004パーセント
ウ 弁済方法 平成12年6月10日以降,毎月10日に最低1万6500円を支払い,平成17年5月14日までに完済する。
エ 特約 支払を1回でも怠ったときは期限の利益を失う。
(4) A又は被控訴人は,本件貸金債務について,原判決別紙計算書記載のとおり控訴人に分割返済をした。
2 争点
控訴人がAの期限の利益喪失を宥恕していたと認められるか。
第3当裁判所の判断
1 弁論の全趣旨によれば,被控訴人は,Aの期限の利益喪失を控訴人が宥恕していたと主張し,控訴人はこれを争っているものと解されるので,この点について検討する。
争いのない事実,証拠(甲1~3,被控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,① 控訴人とAとの間では,本件貸金債務について,分割返済金の支払いを1回でも怠ったときは期限の利益を失うとの合意がされていたこと,② Aは,平成12年7月10日の支払を遅滞したが,翌11日に約定どおりの分割返済金額を支払い,その後も支払を遅滞しがちであったが,平成15年12月までほぼ毎月分割返済金の支払いを続けていたこと,③ その間,控訴人はAに対して一括返済を求めることはなく,異議を留めずに分割返済金を受領し続けていたこと,④平成14年10月頃以降は,被控訴人が控訴人から支払を求められ,Aに代わって分割返済金の返済をしたことも何度かあったが,その際も控訴人は被控訴人に対し一括返済を求めずにこれを受領していたことが認められる。
以上の事実によれば,控訴人は,Aが期限の利益を喪失したとして残元金の返済を求めたり,遅延損害金の請求をするという意思を有していなかったものと認められ,被控訴人につき,期限の利益の喪失にあたる事由があっても,これを宥恕していたと認めるのが相当である。
2 そして,上記認定に基づき,本件貸金債務について,利息制限法所定の利率によって計算すれば,原判決別紙計算書記載のとおり,本件貸金債務は既に完済されていると認められる。
したがって,控訴人の請求は理由がない。
3 ところで,本件において,控訴人は,平成16年3月25日に青森簡易裁判所に控訴状を提出したが,同控訴状には,控訴の理由について「追って,準備書面(控訴の理由書)を提出する。」と記載していたこと,控訴人は,同年4月15日に青森地方裁判所書記官から「控訴理由書の提出について(事務連絡)」と題する書面により,控訴理由書の提出を促されたが,控訴の理由を記載した書面を一切提出せず,同年5月18日の当審における第1回口頭弁論期日にも出頭しなかったことは,当裁判所に顕著な事実である。
以上の経過によると,本件控訴は,控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的としてしたものであると認められる。そこで,民事訴訟法303条1項の規定を適用して,控訴人に対して,控訴の提起の手数料の10倍以下である4万円の納付を命ずることとする。
4 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却した上,4万円の納付を命ずることとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河野泰義 裁判官 伊澤文子 裁判官 石井芳明)
(以下別紙省略)