青森地方裁判所 平成6年(わ)131号 判決 1995年1月18日
裁判所書記官
鈴木徳夫
本籍
青森県下北郡大畑町大字大畑字湊村三六番地
住居
青森市松原二丁目七番一一号
会社役員
辻久
昭和七年四月一八日生
右の者に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官濱隆二及び私選弁護人菊池至各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金三〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、青森市松原二丁目七番一一号に本店を置き不動産売買等の事業を営む有限会社京王不動産の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、同会社の業務に関し法人税を免れようと企て、架空の交通事故を装うことにより雑損害金を不正計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、平成元年八月一日から平成二年七月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が三億九二一一万七七六五円であったにもかかわらず、平成二年九月二九日、青森市本町一丁目六番五号所在の青森税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億五二七〇万五二二〇円であって、これに対する法人税額が五九五三万〇二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成六年押第三〇号の一)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億五五二九万五〇〇〇円と右申告額との差額九五七六万四八〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
以下の〔 〕に甲・乙として番号を掲記するものは、証拠等関係カード記載の検察官請求にかかる証拠の番号である。
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通及び大蔵事務官に対する質問てん末書二三通〔乙1ないし25〕
一 被告人ほか一名作成の上申書〔甲11〕
一 伏見みよの検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書三通〔甲13ないし16〕
一 長岡留里子の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書二通〔甲17ないし19〕
一 千葉一嘉の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書〔甲20・21〕
一 佐藤達也の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書二通〔甲22ないし24〕
一 石田恒久及び辻静枝の大蔵事務官に対する各質問てん末書〔甲25・28〕
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書説明資料・雑損調査書・広告費調査書・支払手数料調査書・旅費調査書・脱税額計算書〔甲6ないし10・12〕
一 検察官作成の捜査報告書〔甲29〕
一 青森手形交換所の捜査関係事項照会回答書〔甲3〕
一 株式会社ディーシーカード作成の回答書〔甲30〕
一 有限会社京王不動産の商業登記簿謄本〔甲1〕
一 大蔵事務官作成の領置てん末書〔甲4〕
一 押収してある法人税確定申告書一綴(平成六年押第三〇号の一)〔甲5〕
(法令の適用)
被告人の判示所為は法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑と罰金刑を併科したうえ情状により罰金刑につき同条二項を適用し、その所定刑期及び罰金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
〔求刑 懲役一年及び罰金三〇〇〇万円〕
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 嶋原文雄)