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青森地方裁判所 昭和38年(ワ)148号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、まず、被告佐々木からの弁護士法違反の主張について判断する。〓原告が請求の原因として述べる事実と弁護士内野房吉が主張するところからすれば、被告美耶子の夫でかつ被告耕二、晋三、由美子らの父である工藤朝三から依頼をうけた同弁護士が、朝三の代理人となつて請求の原因事実記載仮登記の抹消を求めて被告佐々木に対し提起した訴訟事件と、本件訴訟事件とは、同一生活事実関係ないし同一経済的利益に関する紛争関係に基くものであると解することができ、しかしてそのことから、さきの訴訟事件において同弁護士は、本件土地に関する朝三と被告佐々木との間の売買契約に基く紛争に関しおよび朝三と原告との間の原告主張の売買契約関係に関し、朝三から協議をうけてその機密に属する事項および朝三と原告との関係についての立ち至つた事情をうちあけられて協議をうけているものと推認するに難くない。

弁護士法第二十五条第一号は、「相手方の協議を受けて賛助し又はその依頼を承諾した事件」を掲げ、その事件につきその職務を行つてはならない旨定めるところ、ここに「相手方」とは、前説示のような紛争関係を、相続によつて承継したと解すべき相手方の被相続人から協議をうけて受任した事件につき、被相続人が死亡したため相続によりその地位を包括的に承継した場合における相続人をも含むものと解すべく、又、「事件」とは、前記さきに提起した事件と前説示のような紛争関係においてその基礎を同じくする事件をも含むものと解すべきである。

右のように解すべきことは、同法条が、一方の当事者の代理人たる弁護士が本人を裏切り相手方にまわつてその利益を害しようとすることを禁止する当事者の利益保護を目的とするばかりでなく、およそ弁護士をしてその使命にかんがみ誠実にその職務を執行せしめ弁護士として品位をけがすことなからしめようとの律意をも包含するものと認められることからも、肯定することができる。そして、これを本件について考えれば、前記事実関係のもとでは、同弁護士の本件訴訟の受任は同法条に抵触し、原告訴訟代理人としての資格を有しないと判断する。

しかして、被告佐々木のこの点に関する主張は、右弁護士が原告より委任を受けたとして出頭した最初の弁論期日である本件第八回口頭弁論期日においてなされ、本件弁論終結までこれを維持したものであるから、同弁護士が原告代理人としてした訴訟資料および証拠資料の提出、援用、人証に対する尋問等一切の訴訟行為はすべて本訴においてその効力を有しないものといわざるを得ず、それらの結果はすべて本訴から排除される。(秋吉稔弘)

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