青森家庭裁判所 事件番号不詳 判決
被告人 鹿内定一
主文
被告人を罰金六千円に処する。
右罰金を納めないときには、金弐百円を壱日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
訴訟費用を被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、嘗て青森市大字大野字長島四十五番地において、特殊料理店「七福」を経営して居たものであるが、昭和三十年十二月十日頃十八歳に満たないC子(昭和十六年二月十六日生)を女中に雇入れ使用中、昭和三十一年二月三日頃から同年七月末頃までの間右自宅(料理店)において、同女をして不特定多数の男子客を相手に売淫させ、もつて児童に淫行をさせたものである。
(証拠)
以上の事実は
一、C子の司法警察員に対する供述調書
一、被告人の当公廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書
一、C子の戸籍抄本
を綜合して、これを認める。
(法令の適用)
被告人の判示行為は、児童福祉法第三十四条第一項第六号第六十条第一項に当るから、その所定刑中罰金刑を選びその金額の範囲内で被告人を罰金六千円に処し、もし被告人がこの罰金を納めないときには、刑法第十八条に従い、金弐百円を壱日に換算した期間被告人を労役場に留置する。又訴訟費用(証人村上武雄及び弁護人小野善雄に支給の分)は、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により、これを被告人の負担とする。
(被告人の主張に対する判断)
被告人は初めC子を雇入れる際、同人が昭和十二年生の十九歳であると言うて居り且つその体格、容姿等も十八歳以上に見えたのみならず、その後来訪したC子の姉も、C子が昭和十二年生れであるから使つて貰い度いと申して居たので、それ以上戸籍謄抄本を取寄せて調べるまでもなく十八歳以上に達して居るものと信じ女中として雇入れたものであるが、その後更にC子自ら進んで遊興客を相手にするようになつたものであると主張する。しかし児童福祉法第六十条第三項によれば、児童を使用する者は児童の年令を知らないことを理由として同条第一項の規定による処罰を免がれることができないものとし、只年令を知らないことにつき過失のないときは処罰しないと規定しているのである。そうしていわゆる接客婦として雇われることを希望する婦女子が、その希望を遂げるため、自分の年令を偽り制限年令を超えているように故ら雇主を欺き就職する事例が極めて多いことは、当裁判所に顕著な事実であるのみならず、被告人も多年に亘つて特殊料理店を経営して居た経験上、当然その間の事情を知り得た筈であるものと推定できるので被告人もC子を雇入れる際には、単に同人又はその姉の申出や身体の発育状況のみを過信せず、更に進んで客観的な資料として戸籍謄抄本を取寄せるとかその他適当な調査方法を講じて年令を確認すべき注意義務があるものといわねばならない(昭和三十年十一月八日最高裁判所第三小法廷決定参照)。しからば右の如き注意義務を尽さなかつた被告人には少くとも過失責任のあること明らかであり、又仮りにC子が自発的に売淫行為をしたものとしてもその雇主である被告人において、これを容認しその売淫による対価の割前を取得して居たものであるから、結局被告人の前記主張はいずれもその理由がない。
そこで主文のように判決する。
(判事 坪谷雄平)