青森家庭裁判所 昭和47年(少ハ)1号 決定 1972年10月20日
本人 T・E(昭二六・一二・一〇生)
主文
本件申請を却下する。
理由
一 本件申請の要旨は、「上記在院者は、昭和四六年一二月二四日当裁判所が犯罪者予防更生法四二条にもとづき、少年院に収容する期間を同四七年一〇月二三日までと定めて特別少年院に送致する旨の決定により、盛岡少年院に収容中であるため、右期間の満了とともに、少年院法一一条八項に定めるところにより退院させなければならないものであるところ、未だその犯罪傾向が矯正されず、かつ同少年院における処遇の最高段階に達していないので、上記在院者を退院させることは不適当であると認められる。そこで、同法一一条二項の規定により、なお一〇か月間上記在院者の収容を継続すべき旨の決定を求める。」というものである。
二 ところで、少年院の在院者に対し、裁判所の決定によりその収容を継続することができる場合として少年院法一一条二項が規定するのは、同条一項の場合であり、本件のような同条八項の場合を直接の対象事項としていないことは、その文理上明白である。しかして、右規定の趣旨を考えると、心身の成育途上にある対象者に対する保護矯正の処分を合目的的に執行する要請と対象者に対する人権の保障に欠けるところをなからしめる要請とを調和させるものとして、一方において対象者が成年に達した後においても少年院へ収容できる場合を認めるとともに、他方においてかかる場合には裁判所が法定の限度内において一定の収容期間を定めるものとしたものと理解できるのであつて、実質的にも充分の合理性を有するものと考えられる。してみれば、右規定の文理上の範囲をこえて、これを同条八項の場合に及ぼすことは、在院者の権利をみだりに制限するものとして許されないところといわなければならない。
三 よつて、本件申請を不適法と認め、主文のとおり決定する。
(裁判官 井上清)