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青森家庭裁判所八戸支部 昭和49年(少)336号 決定 1974年11月20日

少年 N・O(昭三〇・九・一六生)

主文

この事件につき、少年を保護処分に付さない。

理由

本件は、当裁判所が昭和四九年一月二八日少年法二〇条により検察官送致決定をした事件の再送致事件であるところ、再送致の理由は、「送致後の情況により訴追を相当でないと思料する。送致事実中、重過失傷害については、捜査の結果訴追が相当でないと思料します。」というのであるが、具体的事実の記載を欠くためその趣旨は必ずしも分明ではなく、文字どおり、先の検察官送致決定にかかる事実のうち重過失傷害の点につき、送致後情状にかかわる新たな情況が発生したとの趣旨にも解され、また暗に右事実につき、公訴を提起するに足りる嫌疑がないことを指摘するようでもある(もつとも、この場合は右事実を家庭裁判所へ再送致することの適否が問題になろう)。

しかしながら、本件記録を精査してみれば、先の検察官送致決定にかかる事実はいずれも証拠上これを肯認しうるうえ、いわゆる「送致後の情況」に該当すべき格別の事情も見当らない(ちなみに、重過失傷害の点については、右決定当時すでに少年と被害者との間で被害弁償に関する和解が成立し、かつこれが当裁判所に判明していた)から、いずれにせよ本件再送致は不当といわざるをえない。

そして、本件非行事実の内容、少年の年齢等諸般の事情を総合すれば、少年を刑事処分に付してその罪責を自覚させるのが相当と考えられるけれども、本件につき、再度検察官送致決定をすることは穏当とはいえないし、一方少年は、手続の遅延により本件非行事実の発覚後一年以上に亘つて処分未定の状態に置かれ、この間少なからぬ精神的苦痛を蒙つたであろうことが窺われ、また反省悔悟の情が顕著であると認められることでもあるので、再度の検察官送致はもちろん保護処分もこれを行わないこととするのが相当である。

よつて、少年法二三条二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 安倉孝弘)

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