大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 平成16年(行ク)9号 決定 2004年11月04日

申立人(基本事件被告)名古屋国税局長 有地浩

申立人(基本事件被告)浜松西税務署長 岡島譲

上記両名指定代理人 森田強司

同 伊藤英一

同 高橋孝信

同 鈴木秀幸

同 鈴木智子

同 松島一秋

同 新井克幸

相手方(基本事件原告) 甲

上記当事者間の平成16年(行ウ)第4号課税処分取消等請求事件において、被告(申立人)名古屋国税局長に対する通達等無効確認請求訴訟につき、申立人らから移送の申立てがあったので、当裁判所は、相手方の意見を聞いた上で次のとおり決定する。

主文

本件申立てを却下する。

理由

1  本件申立ての趣旨及び理由は、別紙「平成16年7月21日付け弁論の分離及び移送申立書」及び「平成16年10月9日付け「弁論の分離及び移送申立書」訂正書」記載のとおりであるから、これを引用する。

2  現時点における原告(相手方)の訴えは、①被告(申立人)名古屋国税局長に対する通達等無効確認の訴え、②被告(申立人)浜松西税務署長に対する更正の請求棄却処分取消しの訴え、③被告(申立人)浜松西税務署長に対する過誤納金還付の訴えの3つである。

これらのうち、②及び③の各訴えについては、いずれも静岡地方裁判所の管轄に属することに争いがないが、これに対し、申立人らが移送を求める①の訴えについては、本来、名古屋国税局長の所在地を管轄する名古屋地方裁判所の管轄に属するものである(行政事件訴訟法38条1項、12条1項)。

3  しかしながら、①から③の各訴えは、いずれも、原告(相手方)が、亡父から相続によりA株式会社の株式を取得した際の自己の相続税につき、課税関係の是正を求めようとするものであり、その中で、同株式の価額の評価の前提となった被告(申立人)名古屋国税局長の通達等が誤りであることを請求の原因として主張するものであるから、民事訴訟法7条、38条前段にいう「訴訟の目的である権利又は義務が同一の事実上又は法律上の原因に基づく」との要件を満たしているとみることができる。

また、本件における訴訟の具体的な進行を考えると、上記のとおり①から③の各訴訟は実体的な争点を共通にし、手続的な点に関しても、②の訴えの適法性の審理(不服申立手続を経ていないことにつき「正当な理由」があるか否かにつき、なお審理を要すると思われる。)に比べ、①の訴えの適法性の審理に特段の期間や証拠方法を要するとは解されないから、上記各訴訟の弁論を併合しても、特に審理が複雑化したり訴訟が遅延したりするとは思われない。むしろ、相手方が本人訴訟であることなど本件における諸般の事情を考慮すると、たとえ②及び③の各訴えが不適法と判断される場合であっても、これらの弁論に①の弁論を併合して一括処理を図ることが妥当というべきである。

そうすると、このような本件においては、①の訴えについても、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法7条に基づき、静岡地方裁判所の管轄を認めることが相当である。

4  よって、本件申立ては理由がないからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 佃浩一 裁判官 三島恭子 裁判官 笹本哲朗)

(別紙 弁論の分離及び移送申立書)

被告らは、平成16年6月1日付け移送申立書において、本件訴訟を名古屋地方裁判所に移送することを求めたところであるが、その後、原告の平成16年4月25日付け「訴状訂正申立書」及び同年6月7日付け「訴状訂正申立書(その2)」によって訴状記載の請求の趣旨が訂正されたことを受けて、以下のとおり、申し立てる。

なお、略称等は、新たに用いるもののほか、平成16年6月1日付け移送申立書の例による。

第1 申立ての趣旨

本件訴訟から被告名古屋国税局長に対する通達無効等確認請求(請求の趣旨第1項)の弁論を分離し、名古屋地方裁判所に移送する。

第2 申立ての理由

1 本件訴訟は、原告が、①被告名古屋国税局長に対し、平成10年にAの株式を「気配相場のある株式として国税局長が指定した銘柄」であるとした指定等が無効であることの確認を求める無効確認請求訴訟(請求の趣旨第1項)(以下「甲請求」という。)、②被告浜松西税務署長に対し、原告がした相続税の修正申告につき、「追加相続税と延滞税の賦課決定の処分」の取消しを求める処分取消請求訴訟(以下「乙請求」という。)、③被告浜松税務署長に対し、納税済みである国税及びその利息相当額の支払を求める支払請求訴訟(以下「丙請求」という。)であり、いわゆる訴えの原始的主観的併合及び原始的客観的併合訴訟の形態をとっている。

しかし、本件訴訟のうち、甲請求の管轄は、静岡地方裁判所(御庁)にはなく、名古屋地方裁判所にある。

2 すなわち、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)は、16条において原始的客観的併合を、17条において原始的主観的併合をそれぞれ規定しているが、各規定に基づく訴えの併合が認められるためには、基本となる取消訴訟及び関連請求に係る訴えがともに適法な訴えであることが必要である(司法研修所編「改訂・行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的研究」241、245ページ、南博方編「条解行政事件訴訟法」520ないし521、536ページ)。

これを本件についてみると、本件訴訟においては、答弁書第2の2(5ページ)のとおり、基本となる取消訴訟である乙請求が不適法であるから、行訴法16条及び17条に基づく訴えの併合が認められる余地はない。

そうすると、甲請求については、静岡地方裁判所(御庁)に管轄が認められる余地はなく、被告名古屋国税局長の所在地の裁判所である名古屋地方裁判所の管轄に属するものである(行訴法12条1項、38条1項)。

3 したがって、甲請求については、本件訴訟から弁論を分離し、名古屋地方裁判所に移送すべきである。

以上

(別紙 「弁論の分離及び移送申立書」訂正書)

被告らは、平成16年7月21日付け弁論の分離及び移送申立書(以下「本件申立書」という。)において、本件訴訟から被告名古屋国税局長に対する通達無効等確認請求(請求の趣旨第1項)の弁論を分離し、名古屋地方裁判所に移送することを求めたところであるが、その後、再び、原告の平成16年8月23日付け「訴状訂正申立書(その3)」によって訴状記載の請求の趣旨が訂正されたことを受けて、本件申立書第2を下記のとおり訂正する(なお、下線部分が訂正部分である。)。

第2 申立ての理由

1 本件訴訟は、原告が、①被告名古屋国税局長に対し、平成10年にAの株式を「気配相場のある株式として国税局長が指定した銘柄」であるとした指定等が無効であることの確認を求める無効確認請求訴訟(請求の趣旨第1項)(以下「甲請求」という。)、②被告浜松西税務署長に対し、被告浜松西税務署長が平成16年8月9日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求める処分取消請求訴訟(以下「乙請求」という。)、③被告浜松西税務署長に対し、納税済みである国税及びその利息相当額の支払を求める支払請求訴訟(以下「丙請求」という。)であり、いわゆる訴えの原始的主観的併合及び原始的客観的併合訴訟の形態をとっている。

しかし、本件訴訟のうち、甲請求の管轄は、静岡地方裁判所(御庁)にはなく、名古屋地方裁判所にある。

2 すなわち、行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)は、16条において原始的客観的併合を、17条において原始的主観的併合をそれぞれ規定しているが、各規定に基づく訴えの併合が認められるためには、基本となる取消訴訟及び関連請求に係る訴えがともに適法な訴えであることが必要である(司法研修所編「改訂・行政事件訴訟の一般的問題に関する実務的研究」241、245ページ、南博方編「条解行政事件訴訟法」520ないし521、536ページ)。

これを本件についてみると、本件訴訟においては、被告の「訴状訂正申立書(その3)に対する答弁書」第2の2(2ないし3ページ)のとおり、基本となる取消訴訟である乙請求が不適法であるから、行訴法16条及び17条に基づく訴えの併合が認められる余地はない。

そうすると、甲請求については、静岡地方裁判所(御庁)に管轄が認められる余地はなく、被告名古屋国税局長の所在地の裁判所である名古屋地方裁判所の管轄に属するものである(行訴法12条1項、38条1項)。

3 したがって、甲請求については、本件訴訟から弁論を分離し、名古屋地方裁判所に移送すべきである。

以上

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例