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静岡地方裁判所 平成18年(わ)233号 判決 2006年8月31日

主文

被告人を懲役4年6月に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は,平成17年9月7日午後8時20分ころ,普通乗用自動車を運転し,静岡県藤枝市上藪田<番地略>先の交差点を藤岡方面から北方方面に向かい時速約50ないし60キロメートルで直進中,右後方から進行してきた甲野太郎(当時21歳)運転の普通乗用自動車が進路変更して自車進路の直前に割り込んできたことなどから憤慨し,甲野運転車両の通行を妨害する目的で,最高速度が40キロメートル毎時に指定されている道路において,重大な交通の危険を生じさせる時速約120ないし130キロメートルの速度で進行して甲野運転車両を追い上げ,同車の後方約8.1メートル(車間距離にして約5.7メートル)ないし約30.1メートル(車間距離にして約27.7メートル)まで同車に自車を著しく接近させ,甲野太郎をして,被告人運転車両との衝突の恐怖を覚えさせて被告人運転車両から離れるため,前方注視及び進路の安全確認不十分なまま被告人運転車両と同等以上の高速度で走行させ,そのころ,同市上藪田<番地略>先の信号機により交通整理の行われている交差点において,直進した甲野運転車両の右前部と,対向して同交差点に進入し,右折進行してきた乙山花子(当時64歳)運転の普通貨物自動車の右前部を衝突させ,その衝撃により,さらに,甲野運転車両を道路左側路外の花壇の煉瓦に衝突させて転覆させ,同状態の同車右後部に自車左前部を衝突させ,よって,乙山花子に胸部打撲の傷害を負わせ,同日午後8時25分ころ,同所において,同人を上記傷害に基づく左胸腔内出血により死亡させ,甲野太郎に加療約3週間を要する後頭部挫傷等の傷害を,同人運転車両に同乗中の甲野次郎(当時49歳)に加療約2週間を要する左下腿打撲傷の傷害をそれぞれ負わせた。

(証拠の標目)<省略>

(補足説明)

1  弁護人は,被告人が甲野運転車両を時速100キロメートル以上の速度で逃げざるを得ない状況に追い込んだわけではない,被告人には甲野運転車両始め他車の通行を妨害する目的はなかったし,自車を甲野運転車両に著しく接近させたものでもない,甲野は自分の自由かつ独自の判断で自動車を走行させて交通事故を惹起したものであるから,被告人には危険運転致死傷罪は成立しない旨主張する。

2  そこで,検討するに,前掲関係証拠によれば,以下の事実が認められ,この事実については,被告人及び弁護人においても概ね争いがないところである。

(1)  被告人は,平成17年9月7日午後8時20分ころ,普通乗用自動車を運転し,静岡県藤枝市上藪田<番地略>先の信号機による交通整理が行われている交差点内の片側2車線中の左側車線を,藤岡方面から北方方面に向かって時速約50ないし60キロメートルで直進していたところ,甲野太郎は,普通乗用自動車を運転して,同交差点を被告人運転車両と同方向に,被告人運転車両の右後方(右側車線)から時速約60ないし70キロメートルで進行してきて,被告人車両の直前に進路変更して割り込んだ。甲野太郎は,同乗させていた父親甲野次郎が見たいというテレビ番組の放映に間に合わせようと上記速度で走行していた。

(2)  上記交差点から本件事故発生地点である同市上藪田<番地略>先交差点を経て北方方面に至る道路(県道伊久美藤枝線)は,上藪田<番地略>先の交差点から本件事故発生交差点までの距離が概略610メートル程度,上藪田<番地略>先の交差点から本件事故発生交差点を経てその先約200メートルまではほぼ直線(本件事故発生交差点から北方方向に約200メートルの地点では右に大きく湾曲している。)で,上藪田<番地略>先の交差点から本件事故発生交差点の手前約70メートル(実況見分調書等には,該当数値がないため,図上の計測数値に縮尺を乗じて割り出したもの)までは片側2車線であるが,以後は1車線となって本件事故発生交差点を経て北方方向に向かっている。上藪田<番地略>先の交差点から本件事故発生交差点の間は,最高速度が40キロメートル毎時に,本件事故発生交差点から北方方面へは30キロメートル毎時にそれぞれ指定されている。

(3)  被告人は,甲野運転車両が直前に割り込んできたことから,衝突の危険を感じてブレーキを掛けるとともに,クラクションを鳴らした。甲野太郎は,驚き,甲野運転車両の速度を時速約70ないし80キロメートルに上げた。被告人は,甲野運転車両に衝突しそうになったことや,同車が何事もなかったかのように加速して進行していくことから憤慨し,甲野運転車両を追跡しようと考えて,急加速して同車を追った。甲野太郎は,道路が進路前方で片側1車線になることから,割り込み地点から約226.4メートル進行した地点(甲野運転車両と乙山運転車両とが衝突した地点〔以下,「第1衝突地点」という。〕から約341.7メートル手前の地点)で,左側車線から右側車線に進路変更して進行したが,その際,後方を確認すると,被告人運転車両が約38.9メートルに近付いてきており,追いかけられていると感じ,被告人車両を引き離そうと更に加速した。被告人は,自車を時速約90ないし100キロメートルに加速して甲野運転車両の後方約40メートルに近付いたが,同車が自車から逃げている感じを受けて憤慨したまま,追い上げてやろうと考え,甲野運転車両に続いて進路変更して,更に加速して進行した。

(4)  甲野太郎は,左側車線から右側車線に進路変更した地点から約139.7メートル進行した地点(第1衝突地点から約202メートル手前の地点)で,時速100キロメートルを超過する速度が出ていたが,後方を見ると被告人運転車両が約14.5メートル(車間距離にすると約12.1メートル)の位置にまで接近していたため,減速すると衝突してしまう危険を感じるとともに,被告人から追いかけられている恐怖感から,更に加速して時速約120から130キロメートルで進行した(甲野が上記のとおり被告人運転車両の接近を確認した地点から片側1車線となる地点までは約120メートルである。)。被告人は,時速約120から130キロメートルに加速して甲野運転車両を追い上げ,第1衝突地点から約196.5メートル手前の地点において,自車を甲野運転車両の後方約8.1メートル(車間距離にすると約5.7メートル)まで接近させたが,甲野運転車両が急ブレーキを踏むなどしたときに対応しきれないと危険を感じ,それ以上近くまで接近させることはなかったが,ブレーキを掛けて減速することはしなかった。

(5)  甲野太郎は,上記の速度で,後方の被告人運転車両の動向に気を取られ,前方注視及び進路の安全確認不十分なまま進行した。甲野太郎が,第1衝突地点から約69.3メートル手前の地点で,ルームミラーで確認すると,被告人運転車両は後方約30.1メートル(車間距離にすると約27.7メートル)の地点を追従していたため,同人は依然として恐怖感を感じていた。甲野太郎は,更に約40メートル進行した本件事故発生交差点の停止線直前の位置(第1衝突地点から約29.3メートル手前の地点)で,同交差点の対面信号機が青色から黄色に変わるのを認め,続いて,同交差点内の第1衝突地点から約14.8メートル手前の地点で,やや右前方約16.9メートルの同交差点出口の横断歩道上に,対向車線から右折進行してきて差し掛かった乙山運転車両を発見し,ハンドルを左に切ったが間に合わず,甲野運転車両の右前部と乙山運転車両の右前部とが衝突した。衝突の衝撃で,乙山運転車両は進行方向と反対方向に約21メートルも飛ばされて停止し,甲野運転車両は左前方に逸走して第1衝突地点から約17.2メートル先の路外の花壇の煉瓦に衝突して道路上で転覆し,その状態の右後部に,被告人運転車両の左前部が追突し,更に約47.6メートル押し出されて停止した。

(6)  被告人は,上記のとおり甲野運転車両に約8.1メートル(車間距離にすると約5.7メートル)まで接近させた後も,約161メートルにわたって時速約120ないし130キロメートルで甲野運転車両を追い上げ,第1衝突地点から約168.5メートル手前の地点で,甲野運転車両の後方約30.1メートル(車間距離にすると約27.7メートル)の位置におり,甲野運転車両と乙山運転車両とが衝突したときは,第1衝突地点から約35.5メートル手前(甲野運転車両との車間距離にすると約28.68メートル)を走行していたもので,上記衝突を目撃して急ブレーキを掛けたが間に合わず,第1衝突地点から北方方向約24.8メートルの地点に転覆していた甲野運転車両に衝突し,同車を前記のとおり押し出した上,自車を甲野運転車両との衝突地点から更に約12.2メートル北方寄りの電柱に衝突させるなどして停止した。

(7)  これらの衝突事故で,乙山,甲野太郎及び甲野次郎は判示の各傷害を負い,乙山は死亡した。

3  以上の事実によると,被告人は,普通乗用自動車を運転し,片側2車線とはいってもすぐに1車線になる,最高速度が40キロメートル毎時に指定されている狭い一般道路において,甲野運転車両に対して,約200メートル近くにわたって,時速約120ないし130キロメートルの高速度で追い上げ,車間距離にして約5.7メートルないし約27.7メートルに著しく接近する行為を続けた結果,甲野運転車両の運転者甲野太郎において,被告人運転車両から逃げることに注意の多くを奪われ,前方注視及び進路の安全確認が不十分なまま高速度で進行することとなって本件事故を惹起させるに至っているのであるから,被告人の行為は,重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し,かつ,通行中の甲野運転車両に著しく接近させて,甲野運転車両の自由かつ安全な通行を妨害するものであることは明らかであり,しかも,被告人は,時速100キロメートル以上で走行している甲野運転車両に,更にそれを超える時速約120ないし130キロメートルの高速度で,車間距離にして約5.7メートルまで自車を接近させ,自分でも危険と考えたものの,その後も時速約120ないし130キロメートルで走行する甲野運転車両に約27.7メートルくらい接近させた状態で追い上げを続けているのであるから,被告人には,甲野運転車両の自由かつ安全な通行を妨害する意図すなわち「通行を妨害する目的」も優に認められる。

4  もっとも,弁護人は,前記のとおり危険運転致死傷罪の成立を争い,るる主張しているので,所論について更に検討する。

(1)  弁護人は,被告人運転車両が甲野運転車両に約8.1メートルまで近付いた地点は,第1衝突地点から約196.5メートル手前であって,その後,甲野運転車両と被告人運転車両との車間距離は開き,衝突時にはこれが約35.5メートルになっていたのであるから,被告人は自車を甲野運転車両に著しく接近させたということはできないと主張する。

検討するに,被告人が自車を甲野運転車両に最接近させた地点が第1衝突地点から約196.5メートル手前であり,衝突時には甲野運転車両と被告人運転車両との車間距離は約28.68メートル(弁護人のいう車間距離はやや不正確である)であって,最接近時よりは開いてはいるが,被告人は,最高速度が40キロメートル毎時と指定されている,百数十メートル先の,本件事故発生交差点の近くでは幅約3メートルの片側1車線となる道路(本件事故発生交差点から北方方向に向けては更に狭く片側約2.5メートル,指定最高速度30キロメートル毎時となる。)を,時速約120ないし130キロメートルもの高速度で甲野運転車両を追い上げて上記の距離まで接近させているのであるから,両車の車間距離が約5.7メートルであればなおのこと,約28.68メートル(なお,甲野太郎が事故直前に確認している車間距離は約27.7メートルである。)であっても,その秒速や空走距離及び制動距離等に照らせば,いつ衝突事故が発生しても不思議ではない状況であり,甲野太郎が追突の恐怖から,被告人運転車両から離れようとすることは十分に考えられるのであって,被告人の運転行為は,自車を甲野運転車両に著しく接近させたと認めるに十分である。しかも,衝突時の車間距離と第1衝突地点から約168.5メートル手前の地点における車間距離とではほとんど違いがないのであり,被告人は本件衝突事故直前まで追い上げを続けていたことが優に認められる。

(2)  弁護人は,被告人は「(割り込んできた車両の運転者が)どこの奴だと思い,どこに住んでいる奴か確かめてやろうと思って追いかけた」にすぎず,甲野運転車両の減速や車線変更を不可能にする,あるいは同車の前に出てその走行を遮るといった手段で同車の通行を妨げる認識は全く持っていなかったから,被告人には,相手方の通行を妨げる積極的な意図は認められないと主張する。

検討するに,被告人に,割り込んできた車両の運転者がどこに住んでいるのか確かめたいとの気持ちがあったとしても,これと通行を妨害する目的とは十分に併存し得るのであり,既に説明したとおり,被告人は,単に甲野運転車両に追従したというものではなく,甲野太郎が追突の恐怖を感じて更に加速せざるを得ないと考えるような著しい接近行為を,十分承知の上続けているものであるから,被告人の運転行為によって,客観的に甲野運転車両はその自由かつ安全な通行を妨害されたものであるとともに,被告人に甲野運転車両の自由かつ安全な通行を妨害する意図があったことも明らかである。

(3)  弁護人は,甲野運転車両はいつでも左側車線に進路変更して被告人運転車両をやり過ごすことができたし,また,被告人運転車両は甲野運転車両に近付いた後,同等の車間距離を保っていたものであるから,やみくもに速度を上げて被告人運転車両を振り切ろうとせず,そのままの速度で進行するとか,あるいは減速するといった行為がとれたのに,甲野太郎はこれをせず,本件交通事故を惹起しているのであるから,本件交通事故は被告人の行為の結果ということはできず,本件交通事故と被告人の運転行為との間に因果関係がないと主張する。

検討するに,甲野運転車両が進路変更して被告人運転車両をやり過ごすことができたかどうか考えるに,そもそも,被告人運転車両は甲野運転車両が進路変更をすると同じようにこれをして甲野運転車両を追い上げて来ているのであるから,進路変更をすれば,そのまま行ってくれると考えられるような状況にはない。その上,本件事故発生交差点に至る道路は,時速100キロメートルを超える速度で進行中の甲野太郎が,被告人運転車両が車間距離にして約12.1メートルの位置にまで接近していることに気付いた地点から約120メートルで片側1車線となってしまうのであるから,その速度に照らすと,左側車線への進路変更自体,最初から無理な注文というほかない(このような状況に照らすと,甲野がその供述調書において,そうすれば良かったと述べていたとしても,実際にそのような行動が期待できるものとはいえない。)。その余の点についても,本件事故発生交差点までの間の百数十メートルにつき,被告人運転車両が甲野運転車両をほとんど変わらない間隔で追い上げたものとしても,前記のとおり,その車間距離と速度及び道路状況等に照らせば,いつ追突事故が起きても不思議でない状況といえるから,甲野運転車両が追突の恐怖から被告人運転車両から離れようと更に高速度で進行することは十分あり得るところであって,被告人は甲野運転車両を加速せざるを得ない状況に追い込んだといえるのであり,被告人の運転行為と甲野太郎が進路前方の安全確認不十分なまま高速進行したこととの間には優に因果関係が認められる。

弁護人の主張はいずれも理由がない。

5  以上によると,被告人は甲野運転車両の通行を妨害する目的で,通行中の同車に著しく接近し,かつ,重大な交通の危険を生じさせる速度で4輪以上の自動車を運転し,このため甲野運転車両は被告人運転車両から逃げることに注意を奪われ,前方注視及び進路の安全確認が不十分なまま高速度で本件事故発生交差点を直進しようとして,対向車線から右折進行してきた乙山運転車両と衝突する事故を惹起し,また,この事故が原因となってその後の衝突事故が惹起されたものであり,これら衝突事故により判示各被害者が受傷し,乙山花子は死亡するに至ったものであるから,被告人に判示の危険運転致死傷罪が成立することは明らかである。

(法令の適用)

罰条

乙山花子に対する危険運転致死の点

刑法208条の2第2項前段(人を死亡させた者)

甲野太郎及び甲野次郎に対する各危険運転致傷の点

いずれも同項前段(人を負傷させた者)

科刑上一罪の処理  同法54条1項前段,10条(最も重い危険運転致死罪の刑で処断)

訴訟費用の不負担  刑事訴訟法181条1項ただし書

(量刑の理由)

本件は,被告人が,前車を後方から高速度で追い上げ,前車の運転者をして,追突の恐怖から前方の安全確認不十分なまま高速度で進行させ,交差点で,対向車線から右折進行してきた車両と衝突させ,更に自車も前車に衝突させて,対向右折車の運転者を死亡させ,前車の運転者と同乗者に傷害を負わせたという,危険運転致死傷の事案である。

被告人が前車を追い上げようと考えたきっかけは,被告人運転車両の直前に前車が進路変更して割り込んできたことにあるが,このようなことは,現在の交通事情ではしばしば起こり得ることであることにも照らし,被告人のとった行動は誠に短絡的であり,その危険性にかんがみ到底酌量の余地がない。被告人は,指定最高速度の約3倍もの高速度で前車を追い上げ,最短で約5.7メートル,その後も概ね約28メートル程度まで接近し続けるなど,極めて危険な態様であり,前車の運転者が追突の恐怖を抱くのは至極当然である。したがって,前車の運転者において,進路前方に対する安全確認が不十分なまま高速運転を続けたことの責任の多くが,このような危険な状態で追い上げた被告人にあるというほかないところである。このような被告人の危険運転行為によって,上記のとおり1人が死亡し,2人が傷害を負うという誠に重大な結果が生じている。死亡した被害者乙山の苦痛及び無念は察するに余りあり,遺族の喪失感,悲しみも誠に大きい。遺族の処罰感情にも厳しいものがあるがやむを得ないところである。2人の傷害の結果も軽いものとはいえない。また,被告人には,速度違反の罰金前科1犯及び前歴1回があり,速度違反に対する認識の甘さもうかがわれるところである。これらによれば,被告人の刑事責任は,相当に重い。

他方,被告人の責任に比較すれば小さいといえるが,前車の運転者についても,これほどの高速走行になったことについて一端の責任があると認められ,責められるべきものがある。また,乙山運転車両は本件交差点を極端に内回りをしており,このことが甲野運転車両との衝突事故発生の1つの要因となっていることもうかがわれるが,夜間対向車の位置を正確につかむのはなかなか困難な上,甲野運転車両の速度が指定最高速度の3倍もの速度であったことに照らすと,被害者乙山が甲野運転車両の動向を正確に判断できなかったことは同人の落ち度というべきものではなく,早く右折を完了してしまいたい気持ちの表れから本件交差点を内回りに右折を開始していることも,本件量刑上さほど考慮すべき事情ではないというべきである。さらに,被告人は,事実関係を素直に認めて反省悔悟の態度を示し,起訴後には,自分の責任をしっかり自覚し,遺族の元へ謝罪に赴いたり,墓参りにも行っていること,今後自動車の運転をしないと述べ,本件後に取得した車両も処分していること,被害者乙山に対する香典として被告人側合計で30万円を供えていること,被告人の車両には対人対物無制限の任意保険が付せられているので,相応の被害賠償が見込まれること,被告人の父親及び被告人の恋人の父親が公判に出廷し,いずれも今後の監督を約束していることなど,被告人にとって酌むべき事情もある。

そこで,以上の諸事情を総合考慮し,被告人に対しては,主文の刑を相当と認める。

(裁判長裁判官・竹花俊德,裁判官・本間敏広,裁判官・荒井智也)

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