静岡地方裁判所 昭和25年(行)23号 判決
原告 治教大本遠州別院
被告 磐田税務署
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、請求の趣旨
原告は、被告は原告に対し金一万九千八百六十二円及び之に対する昭和二十四年八月十二日より完済に至るまで日歩十銭の割合による金員を支拂え、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。
三、事 実
被告は原告に対し昭和二十四年八月九日付をもつて取引高税金一万九千八百二十一円を賦課して來たので、原告は同年八月十一日金一万九千八百六十二円を袋井局に納入した。しかし乍ら元來宗教法人に対しては課税すべきものでないから、宗教法人であり且收益を目的とする事業をなしていない原告に対する被告の右課税処分は無効であると言わなければならない。從つて右税金は原告に義務がないのに納付したこととなり、被告はこれを不当に利得したものであるからここに原告は被告に対し右金一万九千八百六十二円の返還を求め、且つ右に対し納付の翌日である昭和二十四年八月十二日より還付に至るまで日歩十銭の割合による還付加算金の支拂を求めるため本訴に及んだ次第であると陳述した。
被告指定代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として権利保護要件に関して、元來行政廳は国又は公共団体の機関にすぎず、権利義務の主体ではないから、特別の規定がある場合を除いては当事者適格を有しない。從つて本件のように過誤金の返還を求める訴においては国を被告とすべきものであり、税務署長には当事者適格がないから本訴請求は権利保護の要件を欠くものとして棄却すべきものであると述べ、次に本案に関する答弁として原告主張事実中、原告が宗教法人であること、原告主張のように被告が原告に課税し原告がこれを納付したことは認めるが、原告が收益を目的とする事業をなしていなかつたとの点は否認する。すなわち被告は原告が製繩機及び農機具等の製造販賣の事業を行い、取引の存在が認められたので課税をなしたもので何等課税処分には違法はない。從つて課税処分が無効であることを前提とする原告の本訴請求は理由がなく棄却されるべきものであると陳述した。
四、理 由
被告の当事者適格について職権を以て調査するに、原告の主張は要するに、宗教法人である原告に対する租税の賦課処分は当然無効でありそれによつて被告が取得した金一万九千八百六十二円は法律上の原因がない取得であり不当利得に該当するから原告が納付した右金員の返還を求めると言うにある。果して然らば本件訴訟は不当利得の返還を目的とする通常の民事訴訟に属することあきらかであるから権利の帰属主体たる国を被告として訴求すべきものであり磐田税務署もしくは行政廳たる磐田税務署長は本訴請求に付正当なる当事者たるの適格を有しないものと言わなければならない。よつて同被告に対する原告の本訴請求は爾余の点について判断するまでもなく失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八十九條を適用して主文の通り判決する。