大判例

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静岡地方裁判所 昭和27年(行)10号 判決

原告 佐々木享子

被告 熱海市熱海農業委員会

一、主  文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、(一)原告所有別紙目録第一、記載土地と訴外室伏新次郎所有別紙目録第二、記載土地との従来の境界線(同所百一番地の八〔百八番地とあるは誤記と認める〕上の桜立木を一端とし、之から同所百二番地の一〔百二番地とあるは誤記と認める〕西北端と同所百二番地の二南端との接触地点上の榎の立木に至る直線)を変更して、同所百二番地の一上の榎より同番地上二間西方の地点と前記同所百一番地の八上の桜立木とを結ぶ直線を右両者所有土地を分割すべき境界線として表示した被告委員会の昭和二十七年九月十五日附土地境界査定処分の無効を確認する。若し右処分が無効でないときは、(二)右処分を取消す、(三)訴訟費用は被告の負担とする旨の判決を求め、その請求の原因として、別紙目録第一、記載の土地は原告が、同目録第二、記載の土地は訴外室伏新次郎が、自作農創設特別措置法により夫々政府より売渡を受けた土地であつて、目録第一、記載の土地と同第二、記載の土地との境界は、同所百一番地の八地上にある桜立木と、同所百二番地の一西北端と同所百二番地の二南端との接触地点上の榎の立木を結ぶ直線であるが、被告委員会は訴外室伏新次郎の申出により、昭和二十七年九月十五日前記百二番地の一地上の榎より原告所有地内に二間西方へ入つた地点と前記桜立木とを結ぶ直線を目録第一、記載の土地と同第二、記載の土地との境界線と定め、同月十六日附を以て原告に対し、「当委員会は昭和二十七年九月十五日委員立会の下に別紙政府売渡分割実測図に基き神奈川県足柄下郡吉浜町力石工務所員測量を以て現地に分割線を表示した」旨通告し、右は同月十七日原告に到達した。然し乍ら右処分には次のような違法事由があるので無効である。即ち、(一)別紙目録第一、記載の土地は原告がすでに政府より売渡を受けた土地であり、被告が擅にその境界を変更することは、農業委員会法第六条所定の被告委員会の権限に属しない。(二)右処分は、被告委員会の農業委員会法第三十七条第三十八条第三十九条所定の手続による議決に基かないでなされたものである。若し右処分が無効でないとしても、右(一)の違法事由は取消原因に該当する。と述べた(立証省略)。

被告訴訟代理人は、原告の訴を却下する旨の判決を求め、その理由として、被告は、原告と訴外室伏新次郎との間に自作農創設特別措置法によつて売渡を受けた農地の境界について争いがあつたので、室伏新次郎の申立により、昭和二十七年九月十六日農地の境界について、政府売渡分割実測図に基き、現地に両地関係者の立会いを求め分割線を表示し、これを両地の所有者に通知したことはあるが、右のような通知は行政訴訟の対象になる行政処分でないことは明らかであるので、原告の訴は不適法として却下されるべきである、と述べた(証拠省略)。

三、理  由

本件は、被告農業委員会が昭和二十七年九月十五日訴外室伏新次郎の申立により、別紙目録第一、及び第二、記載の土地の境界を現地に表示し、翌十六日附にて、原告に対しその旨を通告したことを以て被告農業委員会のなしたる行政処分と見做し、その無効確認若くは取消を求めるものであること、その主張自体明瞭である。併しながら右通告は農業委員会が売渡農地の境界を明らかならしめて将来相隣地所有者間に紛争の生ずることを防止せんとする意図を以てなしたるもの即ち農業委員会法第六条第二項に定むる農地の利用関係についての争議を防止する措置としてなしたるものと認むるを相当とするところ、かゝる通告は素より何等関係当事者の権利関係に変動を生ぜしめる法律上の効力を伴うものではなく、又法律上利害関係人を拘束するものでもなく単に関係当事者が之に従うことを希望する一片の勧告に過ぎないものと解するを相当とするから素より行政訴訟の対象としての行政処分たる性質を有しないものと言わなければならない。

然らば原告の本件訴は争訟の対象たり得ざる事項をその標的となしたるもので到底維持し難いこと明らかであるから不適法としてこれを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 戸塚敬造 田嶋重徳 土肥原光圀)

(別紙目録省略)

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