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静岡地方裁判所 昭和62年(わ)398号 判決

主文

被告人株式会社永髙を罰金五、〇〇〇万円に、被告人金壬粉を懲役一年六月に各処する。

この裁判確定の日から四年間被告人金壬粉の右刑の執行を猶予する。

(罪となるべき事実の要旨)

被告人株式会社永髙は、静岡県浜松市上西町八五六番地に本店を置きパチンコ遊技場を営む資本金四、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人夏山きく子こと金壬粉は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人金壬粉は被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、同会社の営業・経理を掌理している同会社の当時の専務取締役夏山孝榮こと曺孝榮と共謀の上、売上の一部を除外するなどの不正な方法により、所得の一部を秘匿したうえ

第一 昭和五七年七月一日から同五八年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が二億二、六三八万四、七四三円であり、これに対する法人税額が九、三六七万九、〇〇〇円であるのに、昭和五八年八月二九日、浜松市元目町二〇番地の一所在の浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億二、八四五万六、八二八円であり、これに対する法人税額が五、二五四万九、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、正規の法人税額との差額四、一一二万九、七〇〇円を免れ

第二 昭和五八年七月一日から同五九年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が二億四、九一九万五〇二円であり、これに対する法人税額が一億六三九万四、五〇〇円であるのに、昭和五九年八月二九日、前記浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億三、八〇八万一、〇七二円であり、これに対する法人税額が五、八二八万四、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、正規の法人税額との差額四、八一一万二〇〇円を免れ

第三 昭和五九年七月一日から同六〇年六月三〇日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が二億三、二一九万三、一二五円であり、これに対する法人税額が九、八八〇万五〇〇円であるのに、昭和六〇年八月二七日、前記浜松税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億一、八一八万四、五二〇円であり、これに対する法人税額が四、九四三万四、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、正規の法人税額との差額四、九三六万五、九〇〇円を免れ

たものである。

(法令の適用)

被告人金壬粉は被告人株式会社永髙の代表者であったから、その判示各所為はそれぞれ刑法六〇条、法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人金壬粉を懲役一年六月に処し、情状により、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

被告人金壬粉の判示各所為は被告人株式会社永髙の業務に関してなされたものであるから、被告人株式会社永○に対しては、法人税法一六四条一項、情状により、同法一五九条一項、二項をそれぞれ適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により各罪の罰金額の合算額の範囲内で被告人株式会社永髙を罰金五〇〇〇万円に処する。

(量刑の理由)

本件は、被告会社の当時の代表取締役であった被告人金壬粉が、現在の被告会社の代表取締役で当時の専務取締役であった曺孝榮と共謀して、売上の一部を除外して仮名預金するなどの方法で、三年間に合計約一億三八六〇万円の法人税を脱税したという事案で、脱税合計額が一億円を超える高額で、三年間の合計逋脱率が約四六パーセントと高いこと、金被告人がパチンコ業を始めた直後の昭和五〇年ころから同じ手口でなされた継続的な脱税の一環であり、脱税で得た裏金の一部を金被告人ら家族で分配していたこと、今回の脱税発覚後税務署の調査に対し偽装工作をしたこと、法人税法違反罪の罪質などを考慮すると、金被告人及び被告会社の刑責を軽視することはできない。

そうすると、以下の情状を考慮しても、被告会社に対しては求刑どおり罰金五〇〇〇万円を科するのが相当と認められる。

しかしながら、金被告人については、同被告人が本件脱税の指示はしているものの、売上から除外する金額の決定及びその実施等脱税工作そのものは曺孝榮が行っていたこと、金被告人らが、脱税して裏金を作り、そのことでパチンコ経営の安定を図ろうとしてこれまで長期間の脱税を継続してきたことは金銭を重視した自己本位な考えによっていて、そのこと自体は厳しく非難されなければならないが、同被告人らのこれまでの生活歴を見ると、同被告人らがそのような考えをとるにいたったことに、酌むべき点が全くないとは言えないこと、金被告人は、これまで前科のない五八歳の女性で、少女期に来日して以来、読み書きが不自由で、昭和三八年に夫を失うなど多くの苦労を経ながらも、一家を支えて稼働し、子供四人を成人させ、五店舗を抱える被告会社等の経営に当たってきており、学校への寄付等社会への貢献もしていること、金被告人は、本件について反省の情を示し、被告会社の社長を辞し、また、被告会社は、本件脱税に関連した税金をすべて支払い、青色申告の承認を取り消されたものの税務経理を改善したこと、被告会社が主文の罰金を支払うこととなることなどの諸事情を十分斟酌すると、今回に限り、金被告人の刑の執行を猶予するのが相当と認められる。

(裁判官 植村立郎)

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