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静岡地方裁判所浜松支部 昭和58年(ワ)131号 判決 1986年1月27日

原告 松浦克彦

右訴訟代理人弁護士 名倉実徳

被告 東海交易株式会社

右代表者代表取締役 加治屋尚

右訴訟代理人弁護士 岩田孝

同 堀井敏彦

右訴訟復代理人弁護士 内田龍

主文

一  被告は、原告に対し、金五〇六万六八〇〇円及びこれに対する昭和五八年五月一二日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その六を被告の、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、金八四七万八〇〇〇円及びこれに対する昭和五八年五月一二日から支払いずみまで、年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、被告に対し、名古屋繊維取引所におけるスフ糸及び綿糸の先物取引を委託し、別紙取引一覧表のとおりの取引(以下「本件先物取引」という。)を行った。(ただし、個々の取引の委託契約については、後記のような問題がある。)

右取引に関連して、原告は被告に対し後記のとおり合計八六〇万円の委託証拠金を預託し、被告はこれから手数料及び差損金の合計七六七万八〇〇〇円を差し引いて残額の九二万二〇〇〇円を原告に返還した。

2  本件先物取引の具体的経過は以下のとおりである。

(一) 原告及び妻富久美(以下「富久美」と、また原告と富久美をあわせて「原告ら」という。)夫婦は、昭和五七年一〇月一三日午後七時三〇分ころ、被告浜松支店従業員である上坂昭夫及び小山弘文(以下それぞれ「上坂」、「小山」という。)の訪問を受け、スフ糸の先物取引を強く勧められた。

原告らは最初断っていたが、右上坂らは「東海交易株式会社は全社をあげてスフ糸の取引をやっている。資本が大きく、実績があって信用ができる。私達を信用してくれれば絶対損はさせない。五円の値幅が出たら売る。期間も一週間か二週間だろうけれど、長くとも一か月みておけば大丈夫。」等と述べ、一か月以内の短期間に確実に利益が生ずることを請け合った。

原告らは、先物取引の経験が皆無であったので、右の言葉を信用し、短期間に確実に利益があがるならやってみようという気持ちになった。

最初は一〇枚程度という話であったが、上坂が最初大きくやっておいて、次回からは元本に手をつけずに利益金のみでやれば良いと強く勧めたので、原告はその言葉に押し切られ、委託証拠金二一〇万円を積んでスフ糸三〇枚分を買建することを承諾した。

ところが、翌日午前、原告の出社中に上坂が原告方に電話し、富久美に対し、三〇枚分を買うことになっていたが、残っている二〇枚分があるのでこれもまとめて買った方がよいと告げた。富久美は原告に相談もできないままこれを承諾せざるをえなかった。その結果委託証拠金も三五〇万円預託せざるをえなくなった。

そして、当日三月限のスフ糸五〇枚が上坂らによって買建された。しかし、何月限の玉を買建するかについては、原告らに対し事前になんらの説明もなかった。

原告は、同月一四日郵便局の定期預金を解約して、二一〇万円を用意し、同じころ東海銀行から定期預金を担保に八〇万円を借り入れ(被告会社浜松支店従業員河合康夫課長―以下「河合」という。―がその手続きをした。)、また榛原町農業協同組合から貯金を下して六〇万円を用意し、同月一七日ころ右合計三五〇万円を被告会社浜松支店に委託証拠金として預託した。

(二) ところが間もなく、河合から原告に電話があり「万一相場が下がった場合すぐ両建できるようにした方がいいから委託証拠金を余分に出した方が安心だ。さらに、三五〇万円を出してほしい。」と言ってきた。しかし、原告は前記のように最初三〇枚分を買うと約束したのに原告の承諾もなく二〇枚分を買い増しされて、一四〇万円も委託証拠金を余分に出すことになったのを不満に思っていたのに、さらに両建のための証拠金を要求され、これでは全く最初の話と違うので、これを断った。

すると、河合から原告の出社中富久美に対し電話があり、「万一のためにお金を預けておいた方がいい。」と言ってきた。富久美が原告に相談もなく勝手に預けることはできないと断ると、河合は「御主人には先日両建の説明はしてあるので、奥さんが心配してお金を準備したことを怒るはずはない。万一のためのお金だから使わずに返すことになるとは思うが、用心のために奥さんのお金を用意できないか。」と強く勧めた。富久美は、心配になったためこれを用意する気になったが、金は榛原町農協に貯金してある旨を話すと、河合は自分の方でその金を右農協まで取りに行ってもいいと述べた。右富久美は、再度右金銭が一一月までに戻ってくることを確認した後、右農業協同組合に勤めている妹に電話し、河合の話の概要を説明し、定期預金を担保に二一〇万円を一一月一杯まで借りられるよう手配し、河合に右金銭を取りに行ってもらった。

以上のようにして、原告は同月二五日被告会社に対し二一〇万円を預託した。

(三) その後三日くらいして上坂から富久美に電話があり、「相場も上がっていて大丈夫だから今までの分も売って、その利益金と新たに預け入れた二一〇万円を合わせて証拠金としてさらに多く買ってやった方がいい。」と言ってきた。これに対し、富久美は分らないからと答えたが、仮受けの形にさせられてしまった。

同日夕方、上坂から原告に対し電話があり、強く右のような取引を勧められた。同人が、「絶対損はさせないから大丈夫だ。証拠金をそのまま置いておくのはもったいない。」としきりに勧めるので原告は押し切られてついに前記二一〇万円を委託証拠金としてさらに三〇枚分を買い増すこととした。そして、同月二二日上坂によって右三〇枚が買増しされた。

(四) 一一月初め、原告が新聞を見たところ当初の買い値に比して既に五円ほど値上がりしていたので、原告は小山に電話し、売ってくれたのかと尋ねた。しかし、「売買の方は河合課長がやっているので分らない。」との返事であった。

そこで次の週、原告が河合に電話したところ、「値が少し下がっているため少し待ってくれ。」と言われた。その後さらに値が上がってきたため、さらに一一月一〇日ごろ原告が再度河合に電話し、「長くても一か月間という約束で銀行から借り入れをしたので、全部を売ってほしい。」と頼んだ。ところが同人はこれに応じないので、さらに富久美が売ってくれるよう頼んだが、それでも応じてくれなかった。

ところが、二日くらい後に上坂から電話があり「今から売っても六日間くらいたたないとお金がもらえないから、結局一か月以内にはお金にならない。一週間だけでいいから売ったお金で綿糸をやった方がいい。絶対固くて安全だ。綿糸は今まで安い原料でやっていてこれを使い果たし、今後は高い原料でやるから値上がりする。絶対大丈夫だから解約して全部やったらどうか。スフ糸とは違って円単位の動きはしない。」等と述べて、原告が断っても全く取り合ってくれなかった。

結局原告もその有無を言わせない執拗な勧誘に押し切られ、そこまで言われるなら大丈夫だろうと考えざるをえず、綿糸の取引を断り切れなかった。

そして、同月一六日スフ糸を全部手仕舞してもらい、差益金及び従来の委託証拠金合計八五九万二〇〇〇円全額がそのまま新たに委託証拠金に振り替えられ、綿糸の三月限一〇〇枚、四月限七九枚が買建された。

(五) ところが、その後買った綿糸の値が下がってきたので、富久美が上坂に電話すると、同人は「綿糸は固くて安心だから心配しないで下さい。」と述べていた。次の週、河合から電話があり「値が下がったから両建してほしい。両建すれば年内に持ち直すことが出来る。」と言ってきた。原告は、「値が下がっても今売ればまだ利益が残るではないか。」と返答したが、同人が「両建すれば年内にはどうにかなりそうだ。今度はよくアドバイスするから三〇〇万円用意してほしい。絶対戻ってくるお金だから。」と強く勧めるので、これを信用するしかなかった。

そこで、富久美は、実家の人々に「絶対に戻るお金だから。」と頼んで、なんとか三〇〇万円を貸してもらう旨の約束を取り付け、河合に対し、再度確実に戻ってくる金銭であることを確認した。そして同月二五日、三〇〇万円を被告会社へ預託し、同日一〇〇枚の買建玉が手仕舞され、新たに七九枚の売建がなされた。

一二月三日、上坂から委託証拠金が不足しているから売建玉、買建玉各一一枚ずつを処分してこれに当てるとの電話があった。

一二月一三日、河合から「相場が安定したから売りに出したのを処分して、買いに出る方がよい。」との電話があった。そこで一二月一四日、残六八枚の売建玉が手仕舞され、新たに六二枚の買建がなされた。ところが翌一五日、河合から原告の勤務先に電話があり「相場が暴落した。もう値段を維持できないから処分するように。」と言ってきた。そして、その日残買建玉合計一三〇枚が手仕舞された。

3(一)  前記の経過に鑑みると、被告の前記従業員らは原告の利益をはかることを全く顧慮しておらず、その目的は要するに原告らを言葉巧みにだまして取引額をつり上げ、取引期間を延ばすことにより被告に対し多額の委託証拠金を預託させ、かつ手数料をかせぐことにあるというべきである。

右の被告会社各従業員らの行為は、不当な勧誘の禁止(商品取引所法九四条一・二号、名古屋繊維取引所受託契約準則一七条一・二号)及び一任売買の禁止(同法九四条三号、同準則一八条一・二号)にそれぞれ該当するほか、商品取引員の禁止事項である過当な売買取引の要求(利益が生じた場合にそれを証拠金の増積みとして新たな取引をするよう執拗に勧めてはいけない。)及び両建玉(同一商品、同一限月について売りまたは買いの新規建玉をしたあと―または同時―に対応する売買玉を手仕舞せずに両建するよう勧めてはいけない。)等に該当する。

さらに、被告の行為は右にとどまらず、違法な詐欺的行為に該当すると言っても過言ではない。

(二) また、被告は、本件以外にも浜松支店において全くの未経験者に対し積極的に取引を勧め、いったん取引を始めると、従業員によって異なったアドバイスをして客を混乱させ、取引の終了を申し出てもこれに応じず、借財までさせて取引を継続させ、結局多額の損害を生じさせている事案が数件ある。

(三) 原告の各取引日における被告の名古屋繊維取引所での原告取引の商品と同一商品の売買数量の総量を検討すると、奇妙なことに売・買の各数量がほとんど同数である。これは、前記の他の被害者の場合もすべて同様である。

本来、被告は依頼者の利益を図るため、相場についての情報に基づき統一的な判断、見通しの下にこれに取引を勧めるべきものである。そうであるならば、ある時期をとってみるならば、被告としては、原則として売・買のいずれか有利と考える方を主に取引することになるはずである。依頼者独自の相場観により取引する場合があるとしても、右のように結果として売・買ほぼ同一数量というのは極端に過ぎる。

これは、被告が依頼者の利益を無視して、もっぱら自己の利益のために取引をしていることを示すものである。

すなわち、被告は顧客の注文を商品取引所に取り次ぐ際に同時に常にこれと相対する建玉(いわゆる向い玉)をしているのである。こうしておけば顧客の損失は反面常に被告の利益となる。

被告は、原告を操縦し、原告に利益が出ている間はこれを現金で渡すことなく委託証拠金として預託させ、また取引を打ち切らせず、原告に損が出始めると両建を勧めてさらに委託証拠金を出させ身動きができないようにしたうえで取引を継続させ、原告の損失(反面被告の利益)が決定的になった時点でやっと原告に手仕舞を勧めたのである。

向い玉はいわゆる客殺しの取引として無意味な反復売買(コロガシと呼ばれる。)と共に典型的なものであり、被告の違法性は大きい。

また、右のように売・買同一数量の場合被告としては値洗制度による差金決済が不要となるが、被告はこれを利用して、原告を含む顧客の委託証拠金をもって被告会社の経費に充当していたものである。

(四) 以上のとおり右被告従業員らは、被告の事業の執行につき、右のような違法な行為を行い、よって故意に原告に損害を被らせたものであるから、被告はその使用者として、右行為の結果原告が被った手数料及び差損金合計七六七万八〇〇〇円の損害を原告に対し賠償すべき義務がある。

(五) また、原告は本訴の提起、追行を原告訴訟代理人に委任し、その報酬として八〇万円の支払いを約したが、これは被告の右不法行為と相当因果関係にたつ損害である。

よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、右損害金合計八四七万八〇〇〇円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和五八年五月一二日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)については、以下のとおり認否する。

被告従業員らが原告らに先物取引を強く勧め、「私達を信用してくれれば絶対損はさせない。五円の値幅が出たら売る。期間も一週間か二週間だろうけれど、長くとも一か月みておけば大丈夫。」等と述べたこと、一か月以内の短期間に確実に利益が生ずることを請け合ったこと、上坂が、最初大きくやっておいて、次回からは元本に手をつけずに利益金のみでやれば良いと強く勧めたこと、同人が富久美に対し、残っている二〇枚分があるのでこれもまとめて買った方がよいと告げたこと、原告らに対し、何月限の玉を買建するか事前に説明がなかったことはいずれも否認する。

原告らに先物取引の経験が皆無であったこと、確実に利益があがるとの被告従業員らの言を信じてこれをやってみようという気持ちになったこと、富久美が二〇枚分の買増しを承諾するについて原告に相談することができなかったこと及び原告が定期預金の解約等をしたことはいずれも不知。

その余は認める。

3  同2(二)については、河合が富久美に対し両建についての説明をしたこと及び原告が被告に対し二一〇万円を委託証拠金として預託したことはいずれも認め、その余は否認する。

4  同2(三)については、原告が三〇枚分の買増しをしたことは認め、その余は否認する。

5  同2(四)については、原告がスフ糸の取引を手仕舞し、新たに綿糸の買建をしたことは認め、その余は否認する。

6  同2(五)については、原告から三〇〇万円の入金がなされたこと及び原告主張の各取引が原告の指示によりなされたことはいずれも認め、その余は否認する。

7  同3(一)の原告の主張はいずれも争う。

原告は被告の取引方法が違法であると主張するが、被告の取引方法に違法性のないことを以下のとおり、請求原因2及び3の(一)に即して主張する。

(一) 未経験者の原告を取引の相手方としたことが違法であるとの点について

被告は、原告から取引の委託を受ける際に、商品先物取引の仕組み等について十分説明を行っており、原告はこれらの説明を受けたうえで、自己の判断に基づいて取引を開始したものである。原告はあたかも商品先物取引をすることによって損をすることはないと考えたかのように主張するが、被告は取引開始に際し、口頭の説明に加えパンフレットを提示し説明のうえ交付している。このパンフレット(商品取引委託のしおり)の見開き第一頁には、「商品取引は投機です。」と大きく記載されており、また同箇所で証券取引との差異が図解によって説明されている。また同しおり二頁一四行目には見込み違いの売買により欠損となることも明記されており、同三頁五行目には「投機家の一人として商品取引の場にのぞむ意味を十分にお考えいただきたいのです。それは危険負担を承知の上で利益を追求する立場である、ということです。」と記載されているのである。このように初めて取引を開始する者のために、わかりやすく商品取引の仕組みを説明するための資料を提供し、原告自身も十分にこれを読んでおり、その危険も承知していたものであり、被告従業員らが、原告らに対し取引を行うことによる利点を説明したことのみを取りあげて、違法であるということはできない。

(二) 断定的判断の提供をいう点について

(一)で述べたとおり、被告従業員らは取引の開始に際し前記パンフレットを交付しているのであり、同人らが取引の利点を説明したとしても、確実に利益があがるとの断定的判断を提供したことにはならない。

(三) 無断取引をいう点について

原告は、別紙取引一覧表スフ糸1の一〇月一四日の五〇枚の買建玉中二〇枚は無断売買であると主張するが、右一〇月一四日の五〇枚の買建については、上坂が富久美から注文を受けたものであり、無断売買ではない。その後原告からも了承を得てその分の委託証拠金を受け取っているのであり、その際にも無断売買であるとの苦情は全くなかった。

右の取引を含め、原、被告間の全取引について、原告からはその都度送付される報告書及び残高照合通知書について被告管理部等に対し何等の異議も申立てられたことはないのである。また、取引途中の昭和五七年一二月七日には、その時点での建玉の状況等を確認する文書が原告本人から提出されており、これによってそれまでの取引の有効なことが確認されている。

(四) 原告が手仕舞の指示をしても被告がこれに応じず、むりやり取引を継続させたとの点について

原告は、スフ糸の取引で値が上がったところで手仕舞の指示をしたのに被告がこれに応じなかったというが、原告は被告に手仕舞の指示を行ったものではなく、値が上がった時点で今後の相場の成り行きについて相談をもちかけたものである。原告は取引開始以来値動きを新聞等で追っており、そのうえで被告に示唆を求めたのであり、かつ、その結果、原告は自らの判断で取引を継続したものである。

(五) 綿糸取引への移行について

原告は被告の勧誘によりむりやり綿糸取引に移行させられた旨主張するが、原告はスフ糸取引で三三八万三〇〇〇円の利益を得たことから、さらに利益を追及しようとして建玉枚数も多くして自らの判断で綿糸取引を行ったものにほかならない。この綿糸の取引については不幸にも価格が暴落したが、値動きは当然のことながら相場全体の要因があってのことであり、被告に責任はない。

また、この際後記のとおり両建を行っているが、これも原告が被告の示唆に応じ、自らの意思で損を回復しようとして行ったものである。

(六) 両建の方法を取引の継続、拡大のため欺罔的に利用したとの点について

両建そのものは、相場の様子をみるために有効なものであり、その時点の状況により、両建の方法があることを説明することも違法とは言えない。本件で原告が綿糸の取引の際両建を行ったのは、被告従業員が両建の方法を示唆したのに対し自らの意思でこれを行ったものであり、利益を確保したいという原告自らの判断によるものにほかならない。

また原告は、スフ糸取引の際両建をするとの趣旨で被告が原告らから二一〇万円を預かったことを詐欺的行為と主張するが、河合は原告らに対し取引方法の技術について種々説明し、臨機応変な対応ができるために、原告も了承のうえで右金員を預かったものである。

右金員受領後も、相場は当初の見込みどおり推移したため、結局両建はされていないが、原告主張のように被告が手数料かせぎだけを目的としているならば、右金員受領後直ちに両建をしたはずである。

なお、右金員はその後新規の建玉の委託証拠金として用いられたが、右建玉については原告の注文を取って行ったものである。

8  同3(二)の事実は否認する。

9  同3(三)については、原告の各取引日における被告の名古屋繊維取引所での原告取引の商品と同一商品の売・買数量の各総量がほぼ同数になっている場合があることは認めるが、その余は否認する。

売・買の各判断は異なった相場感を有する各顧客が自らの判断で決定するものであり、また、取引員である会社は業界の規制の範囲内(当該限月ごとの総建玉の一〇パーセントまたは一〇〇枚を越えない範囲内)で自己の玉を建てることも許されており、会社と取引所間の帳尻差金の決済の煩雑を避けるため自己玉をもって売・買の玉数を一致させることがあるから、右の被告の認めた事実のような事態の起こることはなんら不自然ではなく、この事実から被告が向い玉をしていることを推認することはできない。

また、向い玉自体これを一般的に違法なものであるということはできないことについて以下のとおり主張する。

取引員は、各取引所の会員のうち、商品市場における売買取引の委託を受けるについて、主務大臣の許可を得たものであるから、当然、商品市場において自己売買をする権利を有する。

したがって、取引員は、自ら商品市場において売買取引を行うこともでき、顧客から委託を受けて売買することもできる。一般に、前者を自己売買・自己玉、後者を委託売買・委託玉と称している。

右の自己玉のうち、委託玉とポジションが対応しているもの、たとえば委託玉が買建玉である場合、同日、同場節の自己玉が売建玉であれば、その自己玉のことを俗に「向い玉」と呼んでいるのである。この場合委託玉の買注文と取引員の売注文とは、取引所内で相互に相手方となって成立するものではない。委託玉(仮に原告分)の買注文は、他の取引員の委託玉、他の取引員の自己玉の各買注文とともに、商品市場における不特定多数の「買集団」に入り、取引員(仮に被告分)の売注文は、他の取引員の委託玉、他の取引員の自己玉の各売注文とともに、商品市場における不特定多数の「売集団」に入り、その結果、両集団の売買数量が一致したときに、各節の約定値段が取引所において成立するのである。

したがって、「向い玉」について、取引員が委託者の相手方となって売買を成立させるものであるから、実質的には市場外において売買を成立させる呑み行為と同様に両者の間に利益相反を生じさせるものであると理解することは根本的に誤っている。

それゆえ、仮に将来の相場の変動により、取引員(仮に被告)がいわゆる向い玉から利益を得ることがあったとしても、それは商品市場において成立した不特定の相手方から利益をえたものであって、当該委託者(仮に原告)から利益をえたものではない。

すなわち、向い玉の利益と、顧客の損害との間には因果関係はないのである。顧客は自己の判断でいつでも自己の建玉を手仕舞うことができ、その場合、取引員は向い玉を同時に手仕舞う必要は全くない。取引員は取引員独自の判断で、適宜これを手仕舞いすればよいのであり、その結果生じる損益と顧客の損益との間には、何らの因果関係も利益相反関係もない。向い玉を建てることは、呑み行為と異なり、両者間に利益相反関係を生じさせるものではないのである。

10  同3(四)、(五)の原告の主張は争う。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1の事実(原告が被告に委託して本件先物取引をなし、委託証拠金八六〇万円を預託して手数料及び差損金合計七六七万八〇〇〇円を差引かれて残額九二万二〇〇〇円の返還を受けたこと)は当事者間に争いがない。

二  《証拠省略》に前記の争いのない事実を総合すると、本件先物取引の経過について以下のとおりの事実が認められる(理解の便宜のため争いのない事実も認定事実の中に記載した。)。

1  原告は先物取引あるいはこれに類する取引の経験を全く有しない者であったところ、昭和五七年一〇月一二日に被告会社から原告方に電話で先物取引の勧誘があり、次いで同月一三日の午後七時三〇分ころ小山が原告方を訪れ、同じく午後八時ころには上坂がこれに加わり、原告らに対しスフ糸の先物取引を勧めた。

その際右従業員らは原告らに対し、「被告は全社をあげてスフ糸の取引をやっていて、名古屋の取引所の取引に占める割合が大きく、業績があるから安心してよい。スフ糸は今確実に値上がりしてきているから一、二週間で、長くても一か月以内には利益があがる。」「時期を見誤ると損をすることがあるが、今なら被告が全社をあげてやっているから大丈夫だ。」、「五円値上がりしたら、原告が指示しなくても被告の方で売ってやる。」「最初大きくやっておいて次からは利益金だけでやればよい。」等とあたかも被告の示唆に従って取引すれば利益が生ずることは確実であるかのように述べた。

その結果、原告は、被告に委託証拠金二一〇万円を預託して翌一〇月一四日にスフ糸につき三〇枚の買建をすることに決めた。ただし、被告は原告に対し限月についての説明をせず、これについての指示も求めなかった。

2  同日(昭和五七年一〇月一三日)、原告は右従業員らから「商品取引委託のしおり」及び「商品取引ガイド」なる先物取引の仕組みについての説明書を受け取った。これらの説明書には、商品取引の投機性や危険性が明示されているが、右従業員らからはこれらの内容に即した説明はなく、むしろ前記のように利益が確実であるかのような説明がなされていた。原告は後にこれらを読み、先物取引が投機の一種であることについて一応の理解は持ったものの、被告従業員らの前記の言動により、被告の示唆に従っていれば損をすることはないとの認識を抱いていた。

3  翌一〇月一四日の原告の留守中に上坂は富久美に電話し、「手もとに二〇枚残っているからまとめて買った方がよい。買うのが朝の分で急いでいる。」等と告げ、原告の同意を得ることなく同女に対し買建枚数の増加を承諾させた。

原告はこれについて河合に対し無断で買増しされたから買増分の証拠金は払いたくないと告げたが、既に買増してしまってあるので払ってくれないと困るとの返答で押し切られた。

4  その結果原告は委託証拠金として当初の予定を越えた三五〇万円を預託する必要が生じ、うち二七〇万円は預金を解約等して準備したが、八〇万円については東海銀行から預金を担保に借り入れた。

右借入にあたっては河合(当時被告浜松支店の営業課長であり、上坂、小山の上司であった。)が自ら右銀行に赴き八〇万円を受け取っている。

5  その数日後河合らが原告方を訪れ、値が下がってきたときに売建と買建を同じ単位で持つとよいと両建を勧めたが、原告は、値上がりするから大丈夫だとの最初の説明と相違しているし、金もないということでこれを断った。

しかし、さらにその二、三日後の昭和五七年一〇月二〇日ころ、やはり原告の留守中に、河合が富久美に電話し、「使う必要はないが万一相場が下がったときのために河合の手もとに金を置いておきたい。」と使う心配のない金であることを強調し、「奥さんが心配してやったのだから御主人が怒るはずはないから用立てて下さい。」等と告げて、当初の証拠金と同額の三五〇万円の金銭を用意するよう促し、結局原告の同意を得ることなく同女に対し二一〇万円を預託することを承諾させた。

そこで富久美は榛原町農業協同組合に勤務している妹の松浦和子に電話し、早急に返済する旨告げて融資を依頼した。

右借入についても河合が右農協に赴き金銭を受け取っている。

6  その直後に上坂が再び原告の留守中に富久美に電話し、「先に取引した分は順調に値上がりしているから一旦それを売って両建のための二一〇万円を加えて買い直してはどうか。」と勧めたが、原告はこの話を聞き一旦売却させて新たに買わせるのは手数料稼ぎではないかと考え、単に三〇枚を買増しすることに応じた(昭和五七年一〇月二二日買建)。この時も原告は限月についての指示は求められなかった。

7  同年一一月初めころに至り、原告はスフ糸が値上がりしており、また農協への返済の必要もあって、被告会社に電話し、小山に対し建玉を手仕舞してくれるよう求めたが同人は「売りの方は河合が担当で、私ではわからない。」としてこれに応じなかった。

その後も原告らは数回にわたり被告会社に電話し、河合に対し強く手仕舞を求めたが、河合は「様子をみる。」等と言を左右にしてこれに応じなかった。

8  一方、その直後に上坂が原告に電話し、「売りたいという話を聞いたが、今手仕舞してもすぐにはお金がおりないから一週間だけ綿糸をやってみないか。綿糸は取引が広くスフ糸のように円単位の変動がないから安全だ。綿糸は今後高い原料でやるから値上りする。」等と強く綿糸の取引を勧め、原告が「もし取引するなら元本を引きあげて利益金だけで取引したい。」と答えたのに対し、「スフ糸で利益があがっているのに信用できないのか。」と強引に押し切って結局その段階での委託証拠金及び利益金をすべて綿糸の建玉にあてることを承諾させた。

その結果、昭和五七年一一月一六日にスフ糸取引の利益約三四〇万円弱を加えた八九八万三〇〇〇円が新たに委託証拠金として預託され綿糸一七九枚が買建された。

9  ところが、その後一週間ほどして綿糸の相場が下がったところ、河合は原告に対し、「両建すれば年内には取り戻せると思うから三〇〇万円用意してほしい。これからは上坂に代わり自分が全面的に面倒をみる。三〇〇万円は絶対になくならない。金融機関を紹介してもよい。」等と告げ、結局原告らはそれぞれの実家から合計三〇〇万円の借財をしてこれに応じることになった。

その際河合は原告らに対し「実家に対しなくならない金であることを説明してもよい。」と告げていた。

結局右の三〇〇万円が新たに預託され、同月二五日に前記の一〇〇枚が手仕舞されて七九枚が売建され、七九枚ずつの両建となり、三〇〇万円はその際の差損金の填補にあてられた。しかし、河合は右取引の詳細や三〇〇万円の具体的な使用方法については、原告らに事前に説明をしなかった。

また、その後の値下がりに伴い、一二月三日には売建、買建とも一一枚ずつが処分されて差損金の決済にあてられた。

10  このころから原告は被告会社に対し不信感を抱き、河合に対し、「上坂が綿糸を勧めた際のやり方はおかしいから責任をとってほしい。」と告げる等していた。

そこで同年一二月七日に被告浜松支店の鈴木支店長(以下「鈴木」という。)と河合が原告方を訪れ、原告の言い分を管理部に伝え、管理部で結論を出す旨告げた(なお、河合は同日原告に対し「綿糸先物取引のご案内」なる説明書を交付し、また、原告に対しその時点での取引の現状を確認する意味で確認書に署名捺印させている。)。

この時点で鈴木は原告に対し、手仕舞して話合をしたい旨告げているが、原告は被告に対する不信感からこれを断り建玉したまま話し合うことを求めた。

11  その後の昭和五七年一二月一四日に原告は河合の示唆に従い六八枚の売建を手仕舞して六二枚を買建したが、翌一五日には暴落のため全取引を手仕舞することとなり、結局九二万二〇〇〇円のみの返還を受けた。

河合はさらに原告に対し取引を勧めたが原告はこれに応じなかった。原告の苦情については被告本社に対する問い合わせの結果全く管理部に報告されていないことが判明した。

右取引経過により被告は合計三〇〇万円余の手数料を原告から収取した。

なお、前記の個々の売買については売買報告書及び月ごとの残高照合通知書により事後的には原告に対し通知がなされていた。

《証拠省略》は、単純に応答すれば足りるところを多言を費して述べたり、趣旨が不明確であったり、反対尋問に対し正面から答えずあいまいな答弁をくり返したり沈黙したりしている部分がかなり多く、また《証拠省略》に照らし、信用できない。

三  右二に認定した事実を検討すると、被告従業員らの行為には以下のような問題(違法不当な点)がある。

1  取締法規違反

(一)  原告らに対し、利益を生じることが確実であると誤解させるようなかなり断定的な説明をして取引を勧めている(前記二1)(商品取引所法九四条一号、九六条、受託契約準則一七条一号)。

(二)  原告自身の事前の承諾を受けず、富久美のみの承諾による取引を行い(同二3)、あるいは売買の詳細についての説明をしないで売買を行い(同9)、また一般に限月の説明をしていない(同法九四条三号、九六条、同準則一八条一号)。

2  その他取引所の内部的規制(弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第二号証参照)の違反及び不相当行為

(一)  原告の再三の手仕舞指示に対しこれに応じることなく、またこれと引換に他商品(綿糸)に新たに建玉することを強く勧め、かつその際既に生じている利益金をも新たに委託証拠金として増積することを強要している(同7、8)。

(二)  趣旨不明のままで金銭を預託させ、これを後に委託証拠金にあてたり(同5)、金銭の具体的な使途を明示しないでこれを提供させている(同9)。

(三)  原告に対し融資のあっせんを行ってもよい旨告げ(同9)、また、被告従業員自ら金融機関に出向いて原告に代わって金銭を受領している(同4、5)。

(四)  取引未経験者であった原告に対し短期間に大量の取引を行うよう勧めており、ことに綿糸の取引についてはこれが著しい(別紙取引一覧表)。また、その意味、効果等について説明しないまま、新たに金銭を提供させてまで、同一商品、同一限月について両建をさせている(同9)。

(五)  故意に多数の従業員が勧誘、応待を行い、また、「売りの方は私ではわからない。」(同7)とか、「今後は私が面倒をみる。」(同9)等時によって各従業員により自分には権限がないと言って原告の指示に応じなかったり、自分は他の者とは違うと言って原告の信頼を得ようとしたりして原告を意図的に混乱させている。

3  なお、原告は、請求原因3(三)でいわゆる向い玉について主張しているので以下これについて判断する。

被告の主張するとおり、一定の限度において取引員たる会社がいわゆる向い玉を業界の規制の範囲内(請求原因に対する認否9)で建てることは、そのことのみでは違法となるものではない。しかし、もし原告主張のように、被告が顧客の注文を取り次ぐと同時に常にこれと対応する向い玉を自己玉として建て、かつ顧客を操縦し、これに利益が生じても現金を渡さずに新たに委託証拠金として預託させ、最終的に顧客の損失が決定的となるまで取引を継続させるならば被告は向い玉によって確実に利益を得ることができるのであって、このような一連の事実が認められる場合は、これは被告の故意に基づく原告に対する不法行為となるであろう。

本件においては、この点に関する証拠として《証拠省略》があり、これらは被告が前記のような意図をもって原告の取引に対応した向い玉を行っていたことを疑わせるものではあるが、《証拠省略》はいずれも被告全体の取引量を示したもので被告浜松支店のみの取引量は不明であり、また、《証拠省略》に照らしても、右のような原告の立証はなお一般的にすぎ、原告の本件先物取引に関して被告が原告主張のような違法行為(向い玉)を行ったことについて立証責任を尽くしたものということはできない。

四  《証拠省略》によると、被告浜松支店従業員らは本件以外にも顧客との間に少なくとも数件の紛争を発生させており、また、そこにおいて主張されている同従業員らの行為の態様は、右二において認定し、右三の1、2において問題点を指摘した行為の態様と酷似していることが認められる。

右はごく一般的な立証にすぎないが、少なくとも本件先物取引前後の被告浜松支店従業員らの行為には相当性の範囲を越えるものが多かった可能性が高いことは右に認定した事実から推認されるところである。

五  前記二、三の1、2及び四によると、原告はスフ糸の取引のみに限定してみれば利益を得ているものの、その経過には被告従業員らの種々の違法行為があり、また、原告が数度にわたって取引の終了を求めた時点で右従業員らはこれに従わず強引に原告に綿糸取引を勧め、その結果原告にその主張する損失を被らせたものということができる。

すなわち、本件においては被告従業員らには取引の当初から原告に対し損害を被らせることについての故意ないし重大な過失があったというべきであり、同人らの行為を中途で分断してある時点以降(たとえば綿糸取引に入った時点以降)の行為のみを不法行為としてとらえねばならぬような特段の事情はなく、同人らの一連の行為を全体として原告に対する不法行為ととらえ、これにより原告にその主張する手数料及び差損金の合計七六七万八〇〇〇円の損害を生じさせたと考えるのが相当である。

右従業員らの行為が被告の事業の執行につきなされたものであることは明らかであるから、被告はその使用者として、原告の被った右の損害を賠償すべき義務があるというべきである。

六1  一方、前記二によると原告には、右損害の発生、増大について以下のような過失があったものというべきである。

(一)  原告は取引を始めるにあたり、被告従業員らから先物取引の投機性を明示した書面を交付されており、また、これを理解する能力も有していたのに、右従業員らの確実に利益が生ずるとの言葉を安易に信じている。

(二)  スフ糸の取引を打切るに際してこれと同時に綿糸について新たな取引をすることを拒絶することは、原告にとっていささか困難であったとはいえ、不可能とはいえない。にもかかわらず、原告は断固としてこれを拒絶することはしていない。

(三)  綿糸の急速な値下がりをみて早期にこれを手仕舞することも可能であったのに漫然と被告従業員らの言葉に引きずられて取引を継続、拡大し損害の増大を招いている。

(四)  より一般的には、原告は、被告従業員らが信用を置けないような言動、行動をしていることに早くから気づいていたのであるから、同人らを警戒し、自己の判断に従って行動すべきであったのにこれを怠った面がある。

2  右のような原告の過失に鑑みると、本件賠償額の算定にあたっては、前記の原告の損害に四割の過失相殺をするのが相当である。

よって被告によって賠償されるべき原告の損害額は四六〇万六八〇〇円となる。

七  原告がその訴訟代理人弁護士に本訴の追行を委任し、報酬の支払を約したことは弁論の全趣旨により明らかであり、本件事案の性質、審理経過等に鑑みると、原告の負担する弁護士費用のうち、前記損害額の約一〇パーセントにあたる四六万円は、これを被告に負担させるのが相当である。

八  以上によると、原告の本訴請求は不法行為に基づき被告に対し金五〇六万六八〇〇円及びこれに対する不法行為の後であり本訴状送達の日の翌日である昭和五八年五月一二日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅香恒久 裁判官 安倍晴彦 瀬木比呂志)

<以下省略>

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