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静岡家庭裁判所沼津支部 昭和36年(家)682号 審判 1962年7月02日

申立人 大月保(仮名)

右法定代理人親権者母 大月幸子(仮名)

相手方 谷実(仮名)

主文

相手方は申立人に対し、申立人が満十八歳に達するまで扶養料として昭和三十七年七月から毎月金四千円を毎月末日かぎり支払え。

理由

本件申立の要旨は

申立人は、相手方と申立人親権者大月幸子との三男として昭和二十三年九月五日出生したものであるが、相手方と大月幸子との間には申立人の他に長男堅一(昭和十五年六月三日生)、二男文彦(昭和十六年十二月一日生)が存したが、両者は昭和二十六年五月四日協議離婚し、右二男の親権者は相手方と定め、三男の親権者は大月幸子と定めたのである。

申立人はそれ以来大月幸子の監護養育を受けているのであるが、大月幸子は行商をしてその生活を維持しているので行商に出る関係から申立人の養育を大月幸子の姉に依頼し、月額金五千六百円の養育料の仕送りをしているが、行商による収入では右養育料の負担は困難の状態である。ところで相手方には一定の収入があつてその生活は安定しているので、申立人が満十八歳に達するまで毎月金五千六百円の扶養料の支払を求める、というのである。よつて按ずるに

一、申立人が相手方と申立人の親権者である母大月幸子との間の三男として出生し、右両親が昭和二十六年五月四日協議離婚し、申立人の母右大月幸子が親権者となり、それ以来母により養育されていることは本件記録添付の戸籍謄本及び当裁判所調査官の調査の結果によつて明らかである。

故に相手方及び申立人の母幸子はいずれも申立人に対し扶養の義務を負い、而して申立人の母幸子は親権者であるから普通申立人と生活を共にしてこれを扶養すべきであり、相手方は普通金銭の支払をもつてその義務を果すべきものである。而してその扶養料負担の割合は、その資産、収入等によつてこれを決すべきものである。

二、よつてこの点について考えるのに、申立人の母大月幸子の当裁判所における各審問の結果、調査官平間武弌の各調査報告書、藤倉電線株式会社沼津工場総務課の各回答書、裾野町長小林秀也の報告書によれば、申立人の母大月幸子は相手方と離婚後真綿の掛蒲団の行商をして申立人を養育してきたが、その行商は鎌倉市大船町に二ヵ月位滞在して、東京、横浜方面を廻り、ついで東海道を岡崎、岐阜と神戸まで下り、神戸に滞在してその附近を行商して、また東京方面に帰るという状態であるため、現在申立人を姉稲田ゆき夫婦に預けていること、大月幸子の行商は最近品物が出廻つて了つたことと新織維製品が出てきたため、これに圧倒されてその収入は漸減の状態であつて、一、二年前は売上高から仕入高を差引いた額が一ヶ月金二五,〇〇〇円位であつたのが金二〇,〇〇〇円位に減つてきていること、従つて右金額から交通費等の金五,〇〇〇円、宿泊料金一二,〇〇〇円を差引くと申立人の養育料として金五,六〇〇円の仕送りをすることは困難であつて、その生活には余裕がないこと、申立人は現在中学二年生で食費の他に学用品、衣料品も相当必要となつていること、申立人の母大月幸子としては、長男堅一、二男文彦も高等学校まで進学しているから申立人も高等学校だけは卒業させ度いと希望していること、これに対し相手方は現在は妻良子とその長女和子(相手方養子)の三名の家族で、相手方及び妻良子は共に藤倉電線株式会社に勤務し、相手方の昭和三十六年四月から同三十七年三月までの一年間の給与の手取額は金四一〇,〇〇〇円(月額約金三四,〇〇〇円)、年二回の賞与(昭和三十五年十二月分(税込)金五七,二五〇円、昭和三十六年六月分(税込)金五九,二九〇円)を受けていること、相手方の居住している町営住宅はその手続上未だ相手方の所有名義とはなつていないが、昭和三十三年八月二十八日すでに裾野町からその譲渡を受けて所有権を取得しているものであつて、右は土地四〇坪、建物木造平屋建セメント瓦葺一棟延建坪一一坪、附属物件、水道施設、竹垣根、物干であること、なお相手方の妻良子の給与は一年間の手取額は金二四四,〇〇〇円(月額金二〇,〇〇〇円)でありその他に年二回の賞与も受けており、相手方の生活は安定していることが認められる。

右事実によれば、申立人の母大月幸子の収入に比すると、相手方の生活は余裕があるものと認められる。

そこで相手方は前掲調査官報告書によると自ら申立人を引とり養育したいと云つているようであるが、申立人の母が申立人の監護養育することが不適当であるという事情も認められないし、また現在申立人の母が養育している以上、相手方は申立人に対する扶養料を分担すべき義務があるので、前記認定の申立人の母、相手方の経済的状況を比較し、かつ申立人の母のみが従来扶養して来た事情を考慮し、相手方は申立人に対し、申立人が満十八才に達するまで月額金四,〇〇〇円を支払うのが相当であると判断される。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 石渡満子)

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