静岡家庭裁判所浜松支部 昭和42年(少ハ)2号 決定 1967年12月12日
少年 I・A子(昭二六・六・一七生)
主文
少年を満二〇年に達するまで中等少年院に戻して収容する。
理由
少年は、昭和四二年一一月一四日、上田清修寮(初等少年院)を仮退院し、静岡県熱海市○○××××番地○伏○夫(雇主)方に帰住して以来、仮退院期間を昭和四六年六月一六日までとして静岡保護観察所の保護観察下にあるものであるが、
一 仮退院後、暫時上記○伏方において、座布団の縫製作業や家事手伝などに従事していたものの、同月二三日朝、同僚○野み○代(当一九年)所有の財布から現金一万一、五〇〇円および同人所有の化粧品三点を窃取して、雇主に無断で家出をし、
二 同日、浜松市内で右金員をもつてスーツ、靴を購入し、頭髪をセットして身形を整えたうえ、長野県上田市に向い、翌二四日朝上田清修寮に赴いたところ、同寮職員の説得により、同日夜上記静岡保護観察所に引渡され、その後同観察所の措置として更生保護会「少年の家」に委託保護され、同観察所主任官らの指導を受けたが、同月二七日再び同会に宿泊中の○吉○子(三七年)の財布(約八〇〇円在中)を窃取して逃走し、
三 右逃走中、上野駅に至り長野県上田市に赴くための旅費に窮し、その旅費を得る目的で、同駅構内において、通行中の老人に「長野に行くのだが友達に金を貸したら返してくれない」と虚偽の事実を申向けて、同人から現金一、〇〇〇円の交付を受けたところ、鉄道公安官に保護されたものである。
上記は、犯罪者予防更生法三四条二項一、二、四号に規定する遵守事項に違反するのみならず、関東地方更生保護委員会が定めた特別遵守事項(家出や無断外泊をやめ、辛抱づよく働くこと、必ず担当保護司を訪ね、何事でも打ちあけて相談し、その指示に従うこと)に違反している。また、少年の実父は酒飲みでだらしがなく、実母は身体障害者であつて、双方共少年には手をやいており、少年も実父母を嫌つているため、実父母の保護を期待しえず、在宅保護には適しない。これに少年の年齢並びにその非行性の進行を併せ考え、犯罪者予防更生法四三条一項により主文のとおり決定する。
(裁判官 桑原慎司)